鳥篭の夢

Story/獣のヒト



ただ、眼前の人物をじぃっと見つめる。戦闘種族だからか、私とは違って骨格はしっかりとしている。体格も良い。
筋肉も“戦闘”をするには申し分ないと思う。その付き方が、素早くしなやかに動く為の邪魔にならない様に見えるのもまた感心した。
あぁ・・これが種族の差なんだなぁってハッキリ分かる。
特に彼は、先祖返りなのかそれに近いものなのか・・・どちらかというと獣に近い。
今の虎人は虎のような耳や尻尾、そして頬に特有の模様が出るだけでそれ以外は人と何ら変わり無い。あぁ、体格は良いけどね。
でも彼・・レイは違う。もっと獣に近い全身の被毛や、人よりも少し大きな手足。足の形状もやっぱり少し違う。
後は、顔の造型が獣に寄ってると思った。別に全部が獣だとは言わないけども、1つ1つパーツに分解するとやっぱり獣の部分がある。

・・・・・まぁ、先祖返りに関しては私も人の事は言えないんだけど。
数百年前だったら普通に見かける事が出来ただろうこの翼の大きさは、今の飛翼族には無いものだと思う。
最近では翼が生えてたとしても飾り程度だしね。
背に生えたあまりに大きな翼・・・もしこれが皆と同じ飾り程度の大きさだったならば隠す事も出来たのになんて昔は考えてたっけ。

・・何か面白いものでもあったのか?」
「・・・え?」

不意に話しかけられて、漸く私は我に返った。思考する事に没頭してて本当にずっと凝視してたらしい。
多分、視線に耐えられなくなったんだろうなぁ・・なんて思いながら私はニッコリと笑った。

「んー・・別にそういう訳じゃないんだけど・・・」

言いながら、そっとレイに近づいてもっと間近で彼の顔を覗く。やっぱりこの顔の造型は好きだなぁなんてしみじみ納得。

「レイって本当に獣寄りだよね」
「あ?何だ急に・・・」
「いや、何となくちょっと思っただけで深い意味は無いけど・・・」

僅かにレイの瞳が細まる。青い双眸に私が映って何だか捕えられてしまった気分。

「何だ?もっと人間らしい方が良かったか?」

わざと訊ねるような低い声。それに私は小さく首を横に振る。

「ううん。私はこっちの方が好き」

「・・・・そうか」
「うん。私は“レイ”だから好きなんだよ。
私とは少し色合いの違う髪の毛も、その綺麗な青い瞳も、声も、仕草も、レイのその性格も全部ひっくるめて好き」

言えば、急にレイは私を引き剥がすと片手で顔を覆った。あぁ、照れてるんだろうなぁ・・なんて考えるとちょっと可愛く見える不思議。
それから呆れたような表情で私を見てくる。

「良くそんな言葉がぽんぽん出てくるな」
「ふふ、凄い?」
「あー。スゴイスゴイ」

どこか適当な返し方。・・・むぅ、それはちょっと酷いんじゃないだろうか?

「全く・・・。そんな風にごちゃごちゃ言わなくたって良いんだよ」
「へ?」


名前を呼ばれて、急に引き寄せられる。



「          」



囁かれた言葉に今度は私が赤面する番。見れば向こうも恥かしそうにしてるけど、でもやっぱり楽しそうに笑う姿。それが少し悔しい。
やっぱりレイは獣寄りだと思う。そうやってストレートに伝えようとする姿勢は特に・・。でもね・・・・でも、勿論私も同じだよ?
ずっと貴方だけを───



あ い し て る



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