鳥篭の夢

Story/贈り物を貴女に



「「姉ちゃん姉ちゃんっ!!」」

嬉しそうに私を呼ぶ声。振り返って、我先にと駆け寄ってくるリュウとティーポの姿。変わらない日常。
しゃがんで2人に視線を合わせて“なぁに?”って問えば、2人は嬉しそうな笑顔。
手に持っていた物を私に差し出して・・・お花?色違いの小さな花束───ううん、花束と呼ぶにはあまりにも簡素なソレ。
だけど2人の泥だらけの手を見て、一生懸命に摘んで来てくれたんだって分かった。

「わぁ、綺麗ね。でも如何したの?このお花」
「あ、あのね・・!向こうのお花畑にあってね!それで・・えっと・・・」

リュウはそんなに喋るのが得意じゃない。それはきっと自分の中にある言葉を選んでくれてるから。
でもそんな優しさは少しだけ嬉しくて、私は何時だって言葉をゆっくりと待つ。まぁティーポが待てないんだけど。

「リュウ!良いよ、オレが言う!」
「ぁ・・ティーポ!」

・・・やっぱり。我慢できないティーポが自分が代わりにって前に出る。でも少しだけ緊張した顔。
ほっぺたが朱色に染まってて、まるで林檎みたい・・・なんて言うとティーポは怒るんだろうなぁ。
リュウも“ティーポは林檎なの?!”って少々的外れな事を言うだろうから秘密。それはそれで可愛いんだけどね。

「あのさ、兄ちゃんに聞いたんだ!今日は姉ちゃんの誕生日だって・・だから・・・」

言葉が終わるにつれてどんどんティーポの声が小さくなっていく。あぁ、もう。なんて可愛いんだろう。
でも・・あれ・・・?


「誕生日?」
「え・・違うの?」

えっと・・今日は何日だったっけ?なんてカレンダーを捲って驚いた。確かに自分の誕生日・・・・すっかり忘れてた。
ティーポとリュウに視線を向けたら、私が怪訝な顔をしてたからか凄く不安そうに私を見てる。
あぁ、ごめんね。2人とも全然間違いじゃなくて・・・ちゃんと私の誕生日で、こんなに素敵なプレゼントまで用意してくれて。

「ううん、そんな事無い。大正解だよ。姉ちゃん、自分で忘れちゃってた」
「び・・ビックリしたぁ」
「・・・オレも」
「あはは、ゴメンね」

ホッと息を吐く2人。でもほら、レイが誕生日分からないからお祝いなんてした事無かったし・・・。
リュウとティーポもレイと一緒。分からないから多分このまましないのかなーなんて思ってた。
“姉ちゃん!”なんて言って怒るティーポと、本当にちょっとだけ涙目になっちゃったリュウ。
2人の姿が何だか微笑ましくて、可愛くて仕方が無くて・・・持っているお花を潰さないように抱き締めた。

「わっ!姉ちゃん!!?」
「・・・姉ちゃん?」

不思議そうな顔。それに私の顔が自然と笑みを形作った。


「リュウ、ティーポ・・ありがとう!凄く嬉しい」


心からの言葉。リュウとティーポは一度2人で顔を見合わせて頬を朱色に染めた。
さっきよりももう少しだけ抱き締める腕に力を込める。じきにレイも帰ってくるだろうし、それまでにこの花を綺麗に食卓にでも飾って・・・。
あ、でもすぐ枯れてしまうだろうから少ししたらドライフラワーにでもしようかな。色んな考えが巡って、それからとても幸福な感情。
それをくれた2人に感謝の想いが溢れ出す。

「“ありがとう”」

心の中で。それから言葉で。同時に同じ言葉を呟いて私が笑う。
それにティーポとリュウも嬉しそうな、本当に素敵な笑顔で頷いてくれた。



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1000HIT記念・弟達編、完。
拙い作品ではありますが、最大の感謝を込めて。
2008.07.18.凍架



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