鳥篭の夢

Story/甘えたな弟



「リュウー!待てってばっ!!」
「ヤダよー!!」

走り回る2人の姿。止めなきゃなぁって思うのに、まるで本当の兄弟みたいな姿は何だか微笑ましい。
それにしても・・ティーポは本当に強くなったと思う。昔はもっとリュウみたいだったのに・・・。



「・・っ!」
「わっ!?」

ティーポが家族になって数日。
震える声と同時に腰の辺りに強い衝撃があって、見れば頭から毛布を被ったままのティーポの姿。
少しだけ驚きながらティーポに目線を落とした。
・・・そうそう、昔は私の事“”って名前で呼んでたんだよね。

「如何したの?ティーポ」
「起きたら、いなくなってて・・ビックリした」

ぎゅうっと抱きつく腕に力を入れてくる。
少しだけ痛いけど、そのまま私はティーポの頭を撫でた。

もレイも、どこかに行っちゃったのかと思った」
「私が?ティーポを置いて??」

問いに、何度も頷く。震える体が何だか酷く愛しくてしゃがんで目線の高さを合わせる。

「まぁ確かにレイは今ご飯を調達中でいないけど。
でも、ティーポを置いて何処かに行くなんて・・・そんな事絶対にしないよ。
言ったでしょう?」
「・・・え?」

「私達は家族なんだよ」

「家族・・・・?」
「そう、家族なの」


「ただいま───って、どうした?」

一体何があったんだって不思議がるレイの瞳。
確かに扉を開けたら毛布を頭から被るティーポとそれをあやす私の姿なんだから、その反応は間違っては無い。

「あ。おかえり、レイ」
「レイ・・おかえり」

「ああ・・・で、何かあったのか?
「ん?別に、ティーポがちょっと甘えたさんなだけかな」
「は?」
「・・・・ぇと・・」

やっぱり不思議そうにするレイに、ティーポが恥ずかしそうに下を向く。
それに少しだけ悪い事をしたかなぁ・・なんて。
でもその仕草が何だか可愛くて、ついつい笑いが零れた。

「良いじゃない、ティーポ。甘えられるのは家族の特権だよ?
ほら、姉ちゃんに思い切り抱きついておいで」
「・・・姉ちゃん?」
「ん?なぁに?」

「あ・・・ううんっ!」

少しだけ恥かしそうにしてから、思い切りぎゅうって抱きついてくる。
子供特有の高い体温が心地良いなんて感じながら、よしよしと頭を撫でた。
チラリと目線を横に向ければ何だか不機嫌そうにも見えなくないレイの姿。

「ティーポ、兄ちゃんにも抱きついてあげると良いよ。私だけだと淋しいって」
「そ、そうなの?」
「んあ?」

勿論それが違うのは分かってるけど・・・こっそり嘘情報を耳打ち。
ティーポが困ったような顔で訊ねてくるから一度頷いて応えた。
それからティーポがレイの腕の中に思い切り飛び込んで、それを抱き抱えようとして先程とってきた獲物が床に落ちる。・・・まぁ、いっか。

「───っと、何だ?急に」
「え?姉ちゃんが、兄ちゃんが淋しいって言うから・・・」

違うの?って問う瞳。それに“違う”なんて言えないみたいで・・・

「・・・・あー・・・ありがとな」

特に否定するでもなく、レイは少しだけ困ったように笑った。
乱暴にティーポの頭を撫でれば漸く笑顔を見せる。

そう・・それからだっけ、ティーポが私を“姉ちゃん”って呼んで、レイを“兄ちゃん”って呼ぶようになったの。
あれ、すっごく嬉しかったんだよね。あの時から本当に家族になれたような気がして・・・。
少しずつ今みたいに元気になっていったし、やっぱりちょっと甘えただったけど・・後、レイの後をついて行こうともしたけど。
ドロボーになるって言われた時は流石にちょっと眩暈が・・・・・・うん、いやそれは今は置いとこうかな。



「・・・うわぁぁんっ!姉ちゃん、たすけてぇー・・・!」
「あ!姉ちゃん呼ぶなんてズルイぞっ!」

リュウの叫ぶ声に我に返る。どうやら漸くティーポに捕まったらしい。
さて、そろそろ本日の喧嘩の仲裁に行かなくちゃね。
またお菓子の最後の1個を食べただの、薪割りで薪じゃなくてティーポを切っただの、他にもまだ色々思いつくけど・・・。
まぁ、大体そんな理由なんだろうなぁ。それでも結局、気付いたら一緒にいるんだから、本当に仲良し兄弟だよね。
いえいえ仲良しで姉ちゃんは嬉しいですよ?だって私達は大切な家族なんだから・・・。



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