鳥篭の夢

Story/喧嘩の理由



「うわぁぁぁんっ!ねえちゃーんっ!!」
「ちょっと待てよ!ばかリュウっ!!」

───ドダダダダッ
って走ってくる激しい音とリュウの泣き声とティーポの怒鳴る声。今日は何・・・?
振り向く前に、思い切り私の腰に突撃してくる。
・・・・うぐ・・私よりずっと小さいけど、体当たりは地味に痛い。

「・・・ど、どうしたの?2人共」
「ティーポが叩いたぁー!」
「リュウがちゃんとオレの事支えないから悪いんだってば!」
「だって!犬が近くにいたから・・・!!」
「だったら先に言えって言っただろ!?」

そう言いながら、ティーポがもう一度リュウを叩く。

「うあぁぁんっ!!!」
「あーもう、ばかっ!リュウの泣き虫っ!!」

一際大きな声で泣き出したリュウに、ティーポが耳を塞ぎながら言葉を重ねた。
・・・あぁ、もうちょっと落ち着きなさい、君達は。

「姉ちゃんも何か言ってやっ・・・て・・・」

勢い良く私へ振り向いて、ティーポが固まったのが分かった。
ご理解頂けて光栄です、ティーポは本当に賢い子だね。
・・・・で、今現在私はとっっても怒ってる訳ですが?

「ねぇ、ティーポ。確かにティーポが悪い訳じゃないけど、どうしてすぐに叩いちゃうのかな?」
「え・・えっと・・・だって、リュウが悪いじゃん!!」
「ぼく悪くないもんー!犬が悪いんだもんー!!うあぁぁぁんっ!」

泣きながら必死に反論する姿。
うーん、まぁ犬が悪いのも良く分かったけど・・・。

「リュウは一度落ち着きなさい。ティーポも」
「・・・・はーい」
「・・・っく、ぇぐ・・・・う、うん」

リュウが泣き止むのをゆっくり待つ。
今の2人のやり取りだけ聞いても、何とも“誰が悪い”とは言えない状況。

「その前に1つ聞いても良い?」
「うん?」
「2人共、何してたの?」
「「林檎を採ろうと思って」」

綺麗に2人の言葉が重なった。・・・詳しく聞くと、こういう事らしい。
低い位置に生った林檎を採ろうとしたけど、手を伸ばしても後少し届かなかったみたい。
それでリュウに肩車してもらってティーポが採ろうとしたら犬が来て、それが怖くてリュウが転んでティーポも巻き添え・・と。
2人の話を総合すると、つまりはそんな感じ。

「まぁ・・犬が、悪いかな?多分」
「ほらー!!」
「えー!!」

2人の声が重なる。変なところで息ぴったり過ぎじゃないかな?君達。

「でもね、リュウ。出来たらすぐにティーポに教えてあげようね。
そしたらティーポが犬を追い払ってくれるでしょ?」
「・・・・う、うん」
「へへ~。リュウ怒られてやんの」
「ティーポはすぐにリュウを叩かないでね?」
「・・・・はぁーい」

それぞれに注意点を言って終了。
それから2人の頭を優しく撫でれば、少しは機嫌が直ったみたいに見える。
・・・・それにしても。毎日、毎日、よくもまぁ飽きずに喧嘩できるなぁ・・2人共。
私なんてレイと喧嘩する事なんて・・・無くはなかったけど、それでも殆どしなかったもんなぁ。

「さて、2人共。今日のオヤツは何が良い?」
「あ!林檎のお菓子が良い!!」
「えー、昨日も食べただろ?それ!」
「だって林檎美味しいもんっ!」
「美味しいけど、オレ毎日はヤダよ!!」

・・・・・・・しまった、うっかり喧嘩の種を撒いてしまった気がする。
まぁ、今の内に焼き菓子でも作ろうかな?昨日がリュウのリクエストだったから、今日は林檎無しにして。
リュウには別に林檎を剥いといて、その代わりにティーポにはお菓子を1~2個多めに作ろう。



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