Story/幸福の時間
「───レイっ!」
屋根の上にいる探し人を見つけて、その横に腰掛ける。
「チビ達は寝たのか?」
「うん、もうぐっすり」
「そうか」
緩く笑うような顔をするから私も思わず笑みが零れる。
リュウとティーポが来てからはあんまり2人の時間って無いから・・。
たまに屋根の上でこんな風に2人でのんびりしたりする。もう春近いけど、やっぱり夜は少し肌寒い。
レイの方を見れば全身毛皮で何だか羨ましい。
そうだよね、毛皮があるから基本軽装だもんね。良いなぁ・・・暖かそう。
ごそごそとレイに引っ付いてみる。・・・やっぱり暖かい。
「・・・、何してんだ?」
「え?だって暖かそうだから、つい」
「“つい”・・・ね」
良いじゃない、暖かいんだから。って言うと笑われた。・・・・むぅ、酷い。
なんて思っていればひょいって抱え上げられて座り直された。
レイの前に座って、後ろから抱きすくめられる。
腕が首元と胸元辺りにあって・・・あ、これはこれで結構暖かいかも。
ただ、少しだけ翼の位置が悪くて広げるようにして下にさげる。うん。これで良し、と。
空を見上げれば、今日は一際空気が澄んでいるからか星が綺麗に見える。漆黒と呼ぶにはずっと明るい紺青の空。
それに月がぽっかりと浮かんで柔らかく地上を照らし、更に星がその空を彩っている。
「綺麗だね・・空」
「あ?」
私の言葉につられる様にレイも空を見上げる。
「あぁ・・そうだな」
静かな空気。私達はいつもこう。
のんびりとただ時が経つのを感じながら───ただ、傍にいるだけ。
でもそれが最も貴重な事なんだって事も知っている。
追放された元ウインディア王女と虎人の盗人。
そんな私達が出会えたのは本当に低い確率で、これを“奇跡”以外なんて言えば良いのか分からない。
「ね。こんなのがずーっと続くと良いね」
「続くんじゃねーの?よっぽどの事がなけりゃな」
軽く肩を竦めてみせるレイの姿に、私はくすくすと笑みを零す。
「それじゃあ、何も無い事を祈りましょうか?」
「ばーか」
言いながらもレイも笑った。体重を預けて、体温を感じる。
それと冷えた空気があまりにも心地良い。
・・・・・幸福の時間。貴方と出逢ってから今までずっと───
そして、どうかこれからも続きますように・・・と私はただ空に祈った。