Story/復讐の頃
「お前さん、そんな顔をしていたら探しものも見つからぬぞ?」
「ぇ?」
その言葉に、私は不意に歩みを止めた。視線の先には1人の老人。
今のは私に向けた言葉で良いのだろうか、ぼんやりした頭で考える。
「ずっと寝ていないのではないのか?」
そういえば何日ちゃんと寝ていないんだっけ。覚えていない。
ずっと3人を探していて、少しでも寝る時間が惜しくて情報を探してた。
ううん。本当はそれだけじゃない。単に夢を見るのが怖かったのもある。
まぁどちらにせよ、残念ながら僅かな手懸かり1つ見つかってないんだけど・・・。
「でも、やらなければならない事がありますから・・・」
「探し物。或いは“人”かのう?」
ドキリ。心臓が鳴った。
「ど、う・・して・・・・?」
分かるんですか?とは、出なかった。
急激に咽喉が渇く感覚がヒリヒリとした痛みを帯びる。
「なに、これでもお前さんの何倍も長く生きておる。
それだけ思いつめた顔をしておるのじゃ。その程度は容易い事じゃよ」
そんなに、思いつめた顔をしてたんだ。私・・・。
「ワシに話してみては如何じゃ?少しは気も楽になろうぞ」
そう言って、後に“メイガス”と名乗った老人は皺だらけの顔に更に笑みを刻み付けた。
私はそれに“探し人がいる”という事と“1人で生き抜く力が必要”だという事だけを打ち明けた。
詳しい経緯を話すつもりは最初から無かった。これは、私達・・家族だけの問題なんだから。
レイとティーポの足取りは掴めなかったけど、メイガスさんが高名な魔法使いだと知って師事する事が決まった。
少しでも生き抜く為には力が必要だったから。本当にありがたい申し出だったと思う。
「もう行くのか?」
「はい」
「“漢羅狂烈大武会”と言えば、野蛮な輩が集まり戦う場所じゃ。
ワシ等のような魔法を主とする者が単独で挑み勝てる程容易くは無いぞ」
「・・・それでも。探している人に少しでも繋がるなら」
ううん。絶対に繋げてみせる。探し出して見せる・・・!
説得するように言葉を続けてくれたメイガスさんも、これ以上は無駄かと1つ溜息。
すみません。私の事、心配して言ってくれてるのに。
「無理して命を落とすような真似だけはするなよ。
。お前さんはワシにとって最高の弟子なのだからな」
「はい。ありがとうございます、メイガスさん」
1つ笑顔。そうして頭を下げてから私は歩き出す。
それがまさか、あんな事になるなんて夢にも思わなかったけど・・・ね。