鳥篭の夢

Story/再会の夜



リュウと再会した夜。
見張りはガーランドさんがしてくれていて、私は・・まだ眠くなくて起きていた。
頭が痛いからと先に寝ていたリュウはさっきから酷く魘されている。
多分、悪い夢を見てるんだろう。そっと手を伸ばそうとして・・・

「っはっ!・・・はぁ・・は・・・」

飛び起きたから思わず私も腕を引っ込めた。・・・ちょっとだけ驚いたかも。
全身汗だくで顔面蒼白状態。

「大丈夫?リュウ・・・」
「あ・・姉ちゃん・・・」

私の姿を見て、安心したように深く深く息を吐く。
それからじぃっと自分の手の平を見つめる。

「・・・・人を、殺したんだ。沢山」

「リュウ?」
「・・・ドラゴンだった時、ただ暴れて・・人を人として見てなくて・・・殺してた」
「記憶にあるの?」
「何となく・・おぼろげにだけど・・・」

それがリュウを苦しめているんだろう。
ただ怖くて、何も信じられなくて、暴れてしまっていた時の記憶。
1人で抱えて苦しんでいる姿。
それを助けられない自分が不甲斐なくて悔しい。
だからリュウを強く抱き締めた。
子供の頃から変わらない、少しでも安心させてあげようと思う方法なんだけど・・。

「ね・・姉ちゃん!?」

慌てるような姿に、やっぱり子供の頃とは違うんだなぁ・・なんて実感。
それでもやっぱり離さない。
何だか悪い事した時に私に捕獲されたみたいな顔。

「ねぇ。1つ良い事教えてあげようか?」
「・・・え、何?」
「んーまぁ、本当に良い事かどうかは分からないけど・・・・。
リュウはドラゴンだった時も私をちゃんと覚えててくれたよ。
怖くて攻撃してきたけど、殺そうとはしなかった」

それにリュウが驚いた様に目を瞠ったのが分かる。
残っている記憶からは信じられないというような顔。

「良い事じゃなかった?」
「ううん、そんな事無い」

何度も首を横に振って、それから私からそっと離れた。
もう抱きしめなくても平気かな?
ただ決意を秘めた瞳で真っ直ぐ私を見る。

「ぼく・・・・・・俺、強くなるよ」
「リュウ?」
「姉ちゃんだけじゃなくて、もっと・・誰も無闇に傷付けないように」
「・・・そっか、うん・・大丈夫。
リュウならきっとそうなれるよ」

そう言って笑って見せれば、リュウも同じ笑顔で返す。
私からすれば力を怖がらないでそう考えられるだけでも充分強い。
・・・・・・で、1つ気になったんだけど。

「リュウ、1つ聞いても良い?」
「え、何?」

「“俺”ってやっぱりレイの真似っこ?」

一瞬だけ沈黙。

「・・・・ち、違うよっ!!」

あらあら、そんなに顔を真っ赤にして否定しちゃって・・・図星なんだろうなぁ。
やっぱり兄は偉大・・か。ティーポもそうだけどリュウも兄ちゃんかー。
どれだけ可愛がっても、弟は兄に憧れるものなのかな?

「何だか結局兄ちゃんばっかりで、姉ちゃん淋しいんだけどー」
「・・・・姉ちゃんって本当に変わって無いよね」

ちょっと呆れたようなリュウの顔。
あ、そんな顔するの初めて見た。

「そうかな?」
「うん。最初は凄く大人っぽくて綺麗になったって思ったけど・・・・・あ」
「うーん・・そう?
自分だとあんまり造型の変化って分からないんだけど・・リュウ?」

何だか顔が赤いのは気のせい?

「ううん。何でもない」
「そっか。でもありがとう“綺麗”って言ってくれて」
「う・・・・うん」

何だか照れてる・・・?うーん・・やっぱり可愛いなぁ、我が家のちびさんは。
なんて、もうちびさんって程小さくはないけどね。

「・・・さて!じゃあまだ見張りの交代まで時間があるし、久しぶりに一緒に寝る?」
「え!?ね、姉ちゃ・・それは流石に・・・・」

慌てる姿。まぁ確かに一緒に寝るなんてシーダの森の隠れ家以来だけど・・・。

「・・・きっと怖い夢も見なくなるよ?」
「俺、もう子供じゃないよ?」
「・・・姉ちゃんからすれば可愛い弟に変わり無いかな」

「・・・・・」

リュウの絶句。結局“大丈夫”って押し切られちゃったんだけど・・んー、ちょっと残念。
・・でもリュウがこれで少しでも元気になってくれたんなら嬉しいかなぁ・・・なんて。



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