鳥篭の夢

Story/素朴な疑問



“出来れば私も一緒に行きたいんだけど”
言葉に出さず、ただ困ったように笑うアイツの顔に“まぁ、仕方ない”と思った。


「それでねレイさん、その時のリュウって───」

楽しそうに笑いながら、ちびん時のリュウとの話をする王女さんを見る。
ウインディアのガキ共とかくれんぼをしただの、スグに泣くリュウを慰めながら俺達を探し回っただの。
よくもまぁさっきからくるくると舌が回るもんだと感心した。
飛翼族ってのは頭の回転が速いのかね?基本的に。
そういやも放っておくと良く喋ってたな。
シーダの森にいた頃はちび達と色んな話をしてたし。
俺はアイツよか得意って訳じゃねぇし、狩りや仕事に行って来るだの眠いから昼寝するだの、結構自分勝手してたっけか。
ま。それでも2人に懐かれるのがズルイってには散々言われてたが・・・。

さんが見つかったのは闘都だったけど、その時もリュウったら泣きそうな顔してて───」
「そういや・・・」
「はい?」

不意に今まで感じていた違和感を思い出して、そのまま口にする。

「何でにだけ敬語なんだ?」
「え?」

ピタリ、今までのお喋りが嘘のように止まった。
それから悩むように腕を組む。
王女という立場からか、年上の俺やガーランドのおっさん、学者さんにも“さん”付けはしてもタメ口だしな。
だけってのは流石の俺でも気になる。

「・・・・えっと・・そうね。
“お姉さん”みたいだからかしら?」

言葉に一瞬だけ心臓が大きく鳴った。
まさかとの関係を知ってんのか?そう勘繰る。

「・・・へぇ。王女さん、姉貴がいるのかい?」
「いえ、そうじゃなくて。何だかさんってお姉さんみたいじゃない?
同じ飛翼族だし、小さい時にもしあんな人が“お姉さん”だったらって思っちゃって、それで・・・」
「?・・で、何で敬語が?」

それこそタメ口になるもんだろ?

「んー、そうねぇ。
わたしの場合は王族だからお父様にもお母様にも敬語を使うのが普通だし。
それにもしお姉さんがいたら、きっと敬語を使ってると思う・・・・・かな」
「なるほどね」

面倒なんだな、王族ってのも。
そう言えば困ったような苦笑で返された。

「それと・・・さんって、お母様に少しだけ似てる気がして・・・」
「へぇ?」

そりゃあ親子だし似るだろうな。
ま、そんな事うっかり口には出来ねぇけど。

「それでさんが笑ってくれると、何だかお母様が笑ってくれてるような気がして・・・。
わたしがまだ小さい時も褒めて貰ったりすると凄く嬉しくて・・・あ、今のは絶対に言わないでね、レイさん!!
流石にさんに失礼だもの!」
「へいへい、まぁアイツはそんな気にするような奴じゃねぇけどな」
「そうかしら?」
「ああ、多分な」

しかしまぁの事だから、内心ビビってそうだが。
なんて考えながら不意に視線を向けて息を飲む。
安心したみてぇに嬉しそうに笑う姿が、一瞬だけとダブった。
あぁ、流石は姉妹・・・ってヤツか?
瞳の色や顔の造りは結構違うと思ってたが、案外、笑っている時の顔や雰囲気は似ている気がした。


「レイさん、早くっ!
此処がウインディア城よ!!」

急に機嫌が良くなったのか一気に階段を上りきり振り返って俺に手を振る姿。
まるで子供と変わらない仕草に、ガシガシと乱暴に頭を掻いてから急ぐでもなく追いかけた。



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