鳥篭の夢

Story/再会の夜



あれから一応ティーポの言う“面倒な場所”を抜けて、着替えついでに皆も一旦休む事になった。
でも多分、私の血が戻って無いだろうから・・・って事なんだろうな。
ほとんど戦闘なんてなかったし。
そう思うと結局足を引っ張ってる自分に少々腹が立つ。
何時も自分が皆の足を引っ張って無いだろうか・・・?なんて。
いやいやっ!そんな事を考える位ならもっと強くなりなさい、私!!・・・全く、不甲斐ない。


「姉ちゃん、何ヒトリ百面相してんの?」

不意に聞こえた声に顔を上げたら、何時の間にいたのか呆れるティーポの姿。

「・・・・今の見てた?ティーポ」
「うん、バッチリ」

・・・それはちょっと恥かしい。
“別に深い意味は無いんだよ”って言えば“へぇー”って意味有り気な返事。
分かっててそんな返事してるでしょう?
もぉ・・ティーポは変な所で賢いというか賢しいというか・・・。

「もっと強くなりたいなーって思ってたの。
何だか足を引っ張ってる気がするから」
「そうかな?俺からすればそんな風には見えないけど・・・姉ちゃん強いし、色んな意味で」
「あっはは!主に言葉ででしょう?でも、ありがとう」

確かにまぁ言葉なら強いとは思うよ?
頑固で意見を変えないからよっぽどの事がない限り負けないし。
代わりに腕力は無いけどね。───あぁ、でもそういえば私も昔は・・・・

「あのね、私・・。
───あ、これはリュウにもレイにも言わなかった事なんだけど・・・」
「うん」

「私も・・最初は復讐するつもりだったの」

驚いたように目を丸くするティーポ。
まさか・・・って顔に思わず苦笑。

「・・今はもう無いけど、前に闘都で“漢羅狂烈大武会”っていう大会があって、それがバリオとサントが主催でね?
優勝者には望む物が手に入るって言うから・・・・本当はあいつ等の目の前で“貴方達の生命”って言いたかったの。
家を燃やされて、きっとティーポ達だって痛い目に遭って、それなのにあいつ等は平然としてるのが許せなくて・・・・」

“酷い考えでしょう?”って言葉を続けて笑う。
勿論、ティーポ達の手懸かりが無いか確認してからのつもりではいたけど。
でも、まさか姉が復讐者なんて・・・ティーポはがっかりするかな?
目線を送れば僅かに淋しそうな表情。

「・・・・それで、如何して止めたの?」

憐れむでもなく言葉を続けてくれたそれが少しだけ嬉しかった。

「その時にリュウと再会したの。
てっきりババデルと一緒にいるんだと思ってて、凄く驚いて・・・。
でもお友達を助けたいから大会に出場するって聞いて、思った。
復讐なんて馬鹿げてるなって」
「リュウのお陰?」
「そう・・ね、きっとリュウのお陰。
・・・あ!でもズルスルにはちゃんとビンタしておいたから安心して。
レイもぼっこぼこにしてたし!」
「本当!?じゃあ俺も今度殴りに行こっかなー」

“アイツ、ムカつくんだよ!”なんて拳をもう片方の手でパシンって叩く。
確かにズルスルって他力本願だもんね。

「そうそう、それ位で良いんだよね。
復讐なんて名目で生命を奪う必要なんて無い。
ティーポもレイも生きてたし。
皆でシーダの森に帰って、お家直して・・・今度はドロボーは止めとこうね?」
「・・・やっぱり駄目?」
「うん。勿論ダメ」

ティーポの言葉に笑顔で返す。
それに“ちぇー”なんて拗ねる姿は幼い頃とまるで変わらない。
それから少しだけ変な静寂・・・真剣な顔のティーポが私を見る。

「・・・ねぇ。姉ちゃんも、苦しかった?」
「そりゃ勿論。だって大切な家族とバラバラになったんだから。
でも・・皆がまた一緒にいてくれるから平気だよ」
「心配した?」
「うん、ずっと心配だった。
ティーポがツライ思いしてないかって・・・ずっと・・・・」

ティーポが少しだけくすぐったそうに笑って・・あぁ、やっぱり可愛いなぁ。なんて言うと今は怒るかな?
でもやっぱりティーポが傍にいるのが嬉しくて、反面すぐに消えてしまうんじゃないかと不安になって───

「無事で───・・良かった」

ぎゅうって抱き締める。少しだけレイの気持ちが分かったかも。
再会した夜に私を抱き締めたレイ。
大切な家族が漸く見つかって、だから酷く安心して。
でも本当に傍にあるのか不安になる気持ち。
抱き締めて、確認する行為。

「ね、姉ちゃん!!俺、もう子供じゃないよ?!」
「うん。でもやっぱり久しぶりだからもうちょっとだけ・・・」
「え、ええぇっっ!!?」

そういえばリュウは大きくなって再会した時抱き締めた。
レイは抱き締めてくれた。・・だからかな?ティーポも確認したい。
私からしないとしてくれないだろうしね。
ふと見れば困ったようなティーポの顔。
それに私は一度満面の笑みだけを向けた。


“おかえりなさい、ティーポ”



inserted by FC2 system