鳥篭の夢

Story/その先に続く



シーダの森。

私のもうひとつの故郷。
私を受け入れてくれた、大切な人達と出会えた場所。
そして、あの日からずっと戻ってきたいと願い続けてきた───

「どうした?

ぼんやりと空を見上げていた私をレイが不思議そうな顔で見る。
木材を軽々と肩に担いでいる姿。
焼け落ちてしまった家を修復する為の材料なんだけど・・・あんなに重そうな物を楽々担げるんだから本当に凄い。
その後ろで木材を切り出しているティーポとリュウの姿も見えたりして。
種族差があるにしても、力仕事に関するお手伝いが全然出来ないっていうのはちょっと悔しい。

「おい、?」
「あ、ごめん。ちょっとボンヤリしてた」

また名前を呼ばれる。
一度苦笑して再度視線を森に戻した。
ぐるりと視線を巡らせて、修復途中の家で止まる。
懐かしいという感覚。だけど、同時にぞくりと背筋に寒いものが走る。
理由は簡単。
鮮明に思い出せる、燃え盛る炎の記憶。
あの燃え落ちた家の中に私はいたのだから・・・・。

「本当に・・・皆、無事で良かった」

ポツリと心からそう言葉が漏れた。
私はあの時死んでいたかもしれない・・・・それにレイもリュウもティーポも、もしかしたら。
だけど私達は今生きている。
誰一人欠ける事無く、今此処で昔と変わらずに笑いあえている。
それが本当に嬉しいと思った。

「あぁ、そうだな」

レイもそう応えて笑う。木々の間を抜けるように緩く風が吹いて私達の髪を揺らした。
心地良い風。久しぶりに戻ってきた懐かしい緑の濃い匂いが心を落ち着かせてくれる。

「この奇跡を感謝するのなら一体誰にしたら良いのかな?って思うの。
皆が無事で今生きている事実、またこうして4人で暮らせるって事に・・・」
「さてね。自分達に・・で良いんじゃねぇの?
誰かのおかげっていうのもあるだろうが、結局は俺達が生きてたから今の状況があるんだろ?」

木材を担いでいない方の肩を竦めてみせて、私も“そうだね”と笑ってみせた。
そうなのかもしれない。
確かに私達が皆生きていた事が奇跡かもしれない。
でも、そうだとしても此処まで生きようと必死になってきたのは私達自身なのだから。


「レイに会えて本当に良かった。皆に会えて・・・本当に良かった。
これは昔からだったけど、でも今はもっとそう思う」

ただ純粋な気持ち。それをそのまま口にしたら乱暴に頭を撫でられた。
撫でられた・・っていうか、髪をぐしゃぐしゃにされたというかって感じなんだけど。

「俺も・・・」

不意にレイが言葉を零す。
それから照れたように少しだけ視線を逸らして頬を掻いた。

に会えて良かったと思ってるさ。
それにティーポにもリュウにも・・・勿論全員が生きてまた暮らせるって事にもな」
「・・・うん!」


「兄ちゃん!何してるのさー!!」
「もう次の木材の切り出し終わったよー!」

ティーポとリュウの呼ぶ声。
それにレイと2人で小さく笑う。

私は私達に感謝しよう。
今まで無事に生きてきてくれた事。
これから共に生きてくれる事。


そして、その先に続く幸福に・・・・



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