鳥篭の夢

Story/続・幸福の時間



シーダの森に戻ってきて暫くが経った。
私達が幼い頃に暮らしてたあの時から何も変わらないこの森。
屋根の上で眺める、この夜空に広がる星も・・・。

「何だ、。こんなトコにいたのか」
「あ、レイ」

不意に声をかけられて、それから笑って頷いた。
レイも隣に来てどっかりと腰掛ける。
あ、何だかこれも昔みたいだね。昔は私が後で来る事の方が多かったけど。

「懐かしいね。こんな風に過ごすの」
「そうだな」

あまり言葉は交わさない。交わすような言葉も無い・・と言うとおかしいけど。
だけど今、私達に言葉は必要ない。唯のんびりと過ぎていく時間もあの頃と同じ。
さっきから昔の事を思い出してばかりで何だか小さく笑みが零れた。

「ん、如何した?」
「ううん、何でもないの。
ただちょっと・・私達も成長しないなぁって思ったかな」
「は?」

“何が”と問う瞳。それに私はただくすくす笑って夜空を見上げる。

「だって・・元通りに家を直して、してる事はあの頃と何も変わらないもの。
あれからずっと時間も経ったんだからもっと違う事をしても良いのに・・・」
「ま。そりゃそうだ」

そう言ってレイも肩を竦めてみせる。それから“だが”と言葉を加えた。
・・・なんだろう?続きが気になって顔をレイの方に向ける。
と、唐突に身体を引き寄せられて、そのまま口付けられた。
一瞬何をされたのか分からなくて思考停止。

「これはこれで、良いんじゃねーの?」
「・・・・そうだね」

ちょっと恥ずかしいけど。でもキスなんて最近してなかったかも。
最近はバタバタしててゆっくりする時間もなかったから。2人きりにもなれなかったし。
そう思うとちょっと嬉しい・・って、これは絶対に本人には言えないけどね。

「レイ」
「あん?」
「今度こそ守ろうね、この場所とこの時を・・リュウとティーポを。
もうあんな“よっぽど”の事が起こるのは嫌だから」
「ああ、当たり前だろ。
俺が守るさ。この家も、あいつらも・・・もな」

私の名前も言ってくれると思わなくてちょっとビックリ。見たら真剣な表情。
でもやっぱり少しだけ恥ずかしかったみたいで尻尾が忙しなく動いてる。
それが可愛くて堪え切れなくて小さく笑うと、今度は不遜な顔をされてしまった。
あはは、ごめんねレイ。悪気は無いんだけど、つい。

「ね、綺麗だね。空」
「あぁ、そうだな」

誤魔化すように何時かの台詞を繰り返す。
笑えばレイも何時かと同じ台詞を返してくれた。
それが覚えててくれてたのか偶然なのかは分からない。良くある問答だしね。
でもそれがちょっとだけ嬉しいって思う。同時に、結局私達は変わらないんだとも・・・。

今度こそは手放さない。もう離れ離れにはならない。
絶対に護ってみせる。
この場所を、この時間を、そして大切な家族を───。



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