鳥篭の夢

Story/fragment01



その1.その理由・ティーポとリュウ(ヒロイン不在・ティーポ視点)


「なぁ、リュウ」
「え?」

不思議そうなリュウの顔。

「ひとつ。確認したいんだけどさ・・・」
「うん」
「お前がニーナを好きな理由、姉ちゃんに似てるからじゃないよな?」

俺の言葉にリュウは目を丸くする。ずっと考えてた事。
だってニーナと姉ちゃんは凄く似てる。雰囲気とか。
確かに俺はあんまりニーナ達の事は知らない。
でもリュウはチビの時に姉ちゃんベッタリだったし。
だから、もしかして・・って少しだけ不安になった。
ひ代わりなんかじゃないよな?

「んー・・考えた事なかったな。
でも確かに少しは関係あるかもしれない。
似てるっていうのとは違うんだけど、初めて会った時から俺が守らないととは思ってた。
ほら、ニーナってあの性格だし」

少しだけ困った顔。
だけど、はにかむように笑う。

「放って置けないんだ、ニーナは。
それに姉ちゃんには兄ちゃんがいたから、尚更ニーナは俺がって思ってたのはあるかも」
「リュウ」
「でも姉ちゃんが好きなのとは違う好きだって言うのは分かるよ。
だからこそ俺はニーナの傍にいる事を選んだんだから」

嬉しそうな顔。いつもより饒舌な姿。
確かに姉ちゃんの代わりじゃ無いって事は分かった。でもさ・・・

「惚気過ぎだって、それ・・・」
「え!?そ、そうかな??」

急に慌てる姿。それがなんだかおかしくて、俺は思わず吹き出した。

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作者コメ
リュウ×ニーナではあるのですが・・・短編“その気持ち”を書いている時に浮かんだもの。
姉を慕っているからこその不安。当の本人がいない間にこっそり、みたいな感じです。

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その2.別れの夜・リュウ(リュウ視点)


「俺、姉ちゃんは俺がウインディアに婿入りするのは反対するんじゃないかって思ってた」
「・・・どうして?」

心から不思議そうな声。微塵にもそんな事考えてなかったって分かる顔。
それに少しだけ安心した。

「だって姉ちゃんは黒い翼だからウインディアには行けないし。
それに・・・そうしたら姉ちゃんの言ってた“家族で暮らす”のが壊れちゃうから」
「そんな、リュウが気に病む事じゃないよ」

姉ちゃんは綺麗に笑う。普段通りの笑顔。

「俺がいなくても平気?」
「そんな事ないよ。けどね、離れていてもリュウが元気ならそれで良いの。
それにこれは自分で選んだ道でしょう?自分で決めたんだから反対はしない。
ニーナが妹になるのもとても嬉しいしね。でも・・・・」

そこで一度言葉を切る。
少しだけその表情を曇らせて・・姉ちゃん?

「でも、たまには帰ってきてね。難しいとは思うけど。
私は行けないから、ずっと会えないのは寂しいし・・ね?」
「うん!勿論だよ」

力強く頷けば、途端に安心した笑顔。
それから“ありがとう”って俺を抱きしめる。
本当に姉ちゃんは変わらないって思う。何時でも心から安心出来る人。

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作者コメ↓
リュウの姉ちゃん大好き話。結婚前夜?みたいな感じになるんでしょうかね。
このやりとりがあった為に彼は婿入りしてもちょくちょく家に帰っている気がします。

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その3.その翼・ティーポ(ティーポ視点)


「あのさ、姉ちゃん」
「ん?」
「羽、触っても良いかな?」

唐突な俺の申し出。それに姉ちゃんはキョトンとした顔を向けた。

「うん、良いよ。でもどうしたの?急に」
「あ、いや。他意は無いんだけどさ」
「そう?じゃあ、まぁどうぞ・・って言うのも変かな?」
「え?さ、さぁ・・・」

どうなんだろう?腕を組んで考えてると姉ちゃんが小さく笑う。
子供扱いしてるんだろうな。それは容易に想像できるのに、でも言い返す気にはならない。
それから広げられた翼に触れる。しっかりしているのに羽の一枚一枚は凄く柔らかい。

「ティーポ、楽しい?」
「え、うん」

思ってたよりも、もっと。
そう言葉を続けると照れたような笑みが返ってきた。

「そっか。満足してくれたなら嬉しいかな」

そう言って笑う姉ちゃんは本当に綺麗で・・・。
その黒に近い色さえもまるで輝いて見えたなんて口が裂けても言えない。
触ってみたいと思ったのだって、天使のようだったからだなんて絶対に。

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作者コメ↓
勿論、ティーポも姉ちゃん大好きです。
割と誰からも好かれているのはヒロインゆえか。
案外可愛いモノとか好きだけど、恥ずかしくて表立って可愛いって騒げない・・ティーポはそんなイメージ。
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その4.日常に1つの変化・レイ


「ぇぷ・・・」

胃がムカムカする。気持ち悪さに机に突っ伏した。
苦しい。嗅覚が鋭敏に働いて、それが更に吐き気を増長。

───トン

不意に近くで音がした。ボンヤリと顔を上げればレイの姿。
机の上にはコップ。中には並々と水が注がれている。

「飲んどけ」
「ん。ありがと・・・」

少しだけ水を口に含む。と、鼻から抜けるような水の匂い。
普段なら気にも留めないそれが妙に強く感じられて───

「っ!?」
「ぅ、ぇ・・・ゴメ・・・・」

上手く言葉にもならない。ただ、苦しい。

「大丈夫か?最近、ずっとこんなんだろ!?
いい加減何とかしねぇと、タチの悪い病とかだったら洒落になんねぇぜ?」

焦る声音。それ程に心配してくれてるんだって思うと本当に嬉しい。
でも・・・・そうだね、もう言わないとダメだよね。
もし否定されたらって・・そんな事は絶対に無いと思ってるけど、でも少し言い出しにくかった事。
それを伝えたら貴方はどんな顔をするのかな?

「大丈夫だよ、病気じゃないから」
「は?だったら───」
「うん。あのね、レイ・・・」


私達に家族が増えるの。

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作者コメ
妊娠発覚・・というか、相手に伝えるお話。ツワリってキツイらしいですね!
その後のレイの反応は皆様で考えて頂けると嬉しいです(思い浮かばなくて・・・←ぁ

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