鳥篭の夢

Story/その強さの先へ



『大丈夫!リュウは姉ちゃんが絶対に守るからね!』

俺が小さい頃から姉ちゃんはそう言って笑っていた。
昔はそれが凄く安心できて、守ってもらうのが当たり前だった。
だけど・・・。

「きゃっ!?」
「姉ちゃんっ!!」

魔物の鋭い爪が姉ちゃんを切り裂いて、鮮血が飛び散る。
倒れてきた姉ちゃんを抱きとめて・・・ぞわり。背筋に寒いものが走った。
俺を狙ってた魔物。
確かに背後からの攻撃で、俺はそのまま受けたかもしれない。
それを姉ちゃんは迷いもせずに盾になったんだと思うと酷く怖くなった。

「リュウ、何ボサッとしてんだ!」
「あ・・・・兄ちゃん、ごめん。ありがと・・・」
「いや。大丈夫か?」

気づけば魔物はもう倒れていて・・心配そうな兄ちゃんの声に、ただ頷く。

もあんま無茶すんじゃねぇぞ!」
「あは。心配してくれたの?
レイったら優しいんだから」
「あのなぁ・・・・・愉快だねぇ、全く」

呆れたような声。
それで姉ちゃんの傷が浅いんだって漸く分かった。

「怪我・・大丈夫?姉ちゃん」
「うん。リリフで治せちゃう程度かな」
「そっか・・・」

安堵。だけどそれでも傷を負った事には変わらない。
俺の代わりに傷ついた。
俺が・・・背後の魔物に気付かなかったから。

「ごめん、姉ちゃん」
「ん?大丈夫だよ。
リュウが怪我しなかったならそれで良いの」
「・・・・・ん」
「リュウ?」

心配なのは、何時だって俺の前に立つから。
不安なのは、自分を省みないから。
怖いのは・・・・・そう、何時消えてしまうか分からないから。

「リュウ、大丈夫?」

こんなに華奢で、俺より力とかも全然無くて・・・それなのに俺よりずっと強い。

「・・・・・ごめん、姉ちゃん」
「ん?」

俺は姉ちゃんみたいに強くなれるのかな?
分からないけど、でも少しでも傷ついて欲しくないから・・・。

「もう、俺の所為で怪我なんてさせないから」

絶対に怪我なんてさせたくないから・・・。

「気にしなくても大丈夫なのに」
「俺がヤダ」

はっきり言った言葉に姉ちゃんは驚いたような顔をして、それから笑う。
子ども扱いするんじゃない。凄く綺麗な笑顔。

「うん、ありがとう。リュウ」

俺はまだ姉ちゃんみたいに強くない。
だけど・・・だけど絶対に強くなってみせる。
そして何時かはその強さの先へ。



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