鳥篭の夢

Story/秘密の決意



「よぅ、馬子にも衣装だな」
「ちょっとレイさん!
第一声がそれって流石に酷すぎるわ!!」
「冗談だよ。
似合ってんじゃねぇの?俺はドレスとかわかんねぇけど」

肩を竦めれば“もぉ”と王女さんから不満の言葉が落ちた。
まぁ良く見りゃ似合ってる・・とは思う。
今までドレス姿っつーのを見た事が無かったから変な感じがするが。
真っ白な長いドレス。花嫁衣装のソレ。
が着てるのを一瞬想像して・・いや、無理だな。あいつに似合うイメージが沸かねぇ。
・・・と、そうじゃねぇか。

「ほらよ、からの祝いだ。
“結婚おめでとう”ってよ」
「わぁ。ありがとう!」

あいつから持たされてた菓子やら何やらを詰め合わせた篭を渡せば途端に上機嫌に笑う。

「リュウの事、頼んだぜ。
あらかたはが仕込んでたが当の本人は不安がってたからな」
「大丈夫、わたしに任せて!」

ドンと大きく胸を叩く姿。ったく、本当に大丈夫かねぇ?
考えていれば不意に真剣な視線を俺に送る。

「レイさん。わたしね、リュウと一緒に絶対今のウィンディアを変えてみせるわ!」

意気込んだ王女さんは強く拳を握りしめた。
良いんじゃね?なんて軽く肩を竦めてみせれば逆に不満そうに詰め寄って来る。

「真剣に聞いてっ!これは簡単な事じゃないんだから!!
これから今の・・・黒い翼に対する偏見を無くすのよ!!
確かに飛翼族はもう翼も退化してるし、あっても飾り程度だけど。
でも、だからって黒い翼に対する迷信が消えた訳じゃない。
お伽話程度だとしても残ってるのは事実だし、偏見や差別があるのも確かだわ!
わたしはウィンディアの王女として、そんな事態がまかり通っている事を許す訳にはいかないの!」

それが誰の為か位は俺にだって分かる。
頬が林檎みてぇに赤くなりながら、ポンポンと言葉を並べたくった王女さんは漸くと一息ついた。

「そりゃ俺じゃなくてに言ってやれよ。喜ぶぜ」
「だ、だめっ!!さんは関係ない・・・訳じゃ、無いけど。
でもそれをすべての理由にするつもりは無いもの」

“今いる人達だけじゃなくて、これから生まれて来る子供達の為にも。
それに今まで生まれても生きられなかった子の為にも・・・”
そう続ける王女さんの顔は強い決意が見えて・・何時か本当に出来んだろうと、そう思わせた。

「だからそうなるまでこの事はさんに秘密にしてて!
レイさん、絶対よ?」

ビックリさせたいんだと笑った王女さんの顔に一瞬ドキリとさせられる。
やっぱに雰囲気似てんな。心臓に悪ぃ。

黒い翼は不吉の象徴・・・か。

初めて聞いた時はそんな事言われてたんだな程度にしか考えちゃいなかった。
それからもずっとシーダの森にいたし、マクニール村の奴らだってには普通に接してた。
それが全部当たり前で、正直、俺自身忘れてた。

ウィンディアで通行証貰うのに失敗して、が割って入ったあん時だ。理解したのは。
多くが畏怖の念を抱き、拒絶し、同時に嫌でも目が離せない。そんなふうに見えた。

ま、あんな思いしないで良いならそれに越したこたぁねぇ。
だから“頑張れよ”と何時もの軽いノリで言えば、やっぱ王女さんは不満そうな声をあげた。



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