鳥篭の夢

Story/妖精の町



「もぉ──どうして遊びに来てくれないのよぅ!」


「え?」


それは、こんな唐突な一言から始まった。
レイとティーポを探しながら、神様へと会いに行く旅を終えて暫く経って。
シーダの森の家も建て直して・・・してくれたのはレイ達で私は全然役に立ってなかったけども。
それから足りない物を作ったり買ったりして生活の基盤を作って漸く一息つけたのかな。
今度は泥棒もなしって約束。
もう私達も子供じゃないしね。シーダの森の悪ガキはもう終わり。

村の皆は今度こそ受け入れてくれた・・の、かな?
森に帰ってきた事を喜んでくれた人達もいたから。
ポジティブに、そうだって思いたい。

それで生活もなんとか安定してきて、そんなある日の早朝に現れたのはいつかの妖精達の姿。
うーん、懐かしい。
とか言ってる場合じゃないのかな?見るからに怒ってるし。

「遊びに来てって言ったじゃないのよぅ!」
「あたし達、頑張ってたのに・・・・頑張ってたのに・・・・っ!!」

ふわりと私の両隣に妖精が移動してきて、耳元まで近寄って・・・・あ、何かデジャヴ?

「「酷いのよぅ!ばかっ」」

くわんって頭に響くような声。
前にもされたよね?これ。


「うっせーな・・・・朝っぱらからどうした?
「あ、レイ。おはよう」

流石に起こしちゃったよね?今の声じゃ。
大あくびしながら寝室から降りてくる姿に思わず苦笑。
それから機嫌悪そうに元凶へと目線を向けて・・・・あ、気づいた?何度か目を瞬いてる姿。
流石に妖精は初めて見るよね。私もあの時が初めてだったし。

「あ?何だ・・こいつら?」
「ふぁ・・・・おはよう、姉ちゃん。
・・・・・・・・って、あれ?妖精??」
「ようせい?」

続いて降りてきたリュウもこの子達の存在に目を瞬かせる。
それでレイも訝しげな表情で妖精達から私とリュウへと交互に視線を向けた。

「またお前らの知り合いか?
ペコロスん時もそうだったが、お前らヘンなツレが多いよな」
「これでもリュウと一緒にレイやティーポを探してたから」

とは言え私もペコロスには驚いたし、妖精の時は色々な事が立て続けに起こってたから大変だった記憶しかないけどね。

「なるほどな。・・・愉快だねぇ。
こんな朝っぱらから起こしてくれるとか、ニワトリじゃねえんだから」
「ニワトリと一緒にされたくないのよぅ!
あたし達、あんなにうるさくないんだから!」
「そうよぅ!でもニワトリは美味しいから好きなのよう!」

ぷんぷん起こる姿は可愛いんだけどね。
・・・・・・・・て。え、妖精って肉食なの?
リュウと顔を見合わせる。思いもよらない新情報。

「って!そうじゃないのよぅ!」

妖精が私の服の裾をつかむ。
それから妖精の体が一気に光って──っ。

「きゃっ!」

っ!」
「姉ちゃん!?」

私の体はそのまま光に包まれた。


「──で、俺なんて全然事情が分からないんだけど」

だよね。目の前に広がる、森を開拓して出来上がった町並みに私も正直驚いたし。
だから目が覚めたら此処にいたティーポが取り乱して無いのは凄いと思うし。

「うん、ごめんね。ティーポ」
「姉ちゃんが謝ることじゃないよ」
「だからってあたしの羽を引っ張ることでもないのよぅ!
乱暴者は嫌われちゃうんだからね、ばかっ」

涙目の妖精に、ティーポの羽を掴む手にやや力が篭ったように思う。
あー・・・・。

「・・・・姉ちゃん、妖精って美味しいと思う?」
「っ!?」
「流石に美味しくないと思うな?」

だからそれは止めておこうね。
口にはしなかったけど、理解したようにティーポは妖精の羽を離した。
そもそも言い方が嫌だからちょっと意地悪しただけみたいだしね。
さすがの食欲魔人ティーポも妖精は食べないでしょ。

「それで、どうして俺達はこんな場所にいるのさ」
「そうそう!それなのよぅ!」

気を取り直したように妖精はふわりと私達の眼前へと移動する。
その姿はとても幻想的だしキレイなんだよね。

「ずっとずーっと前に、あなた達があのばかイルカを倒してくれたでしょう?
あれからあたし達も頑張ってあたし達の町を作ってみたのよぅ!
仲間もたくさん増えて、最初は生きることに精一杯だったけど、色んな子が生まれて、出来る事もたくさん増えて・・・・。
今はこんなに立派な町になったのよぅ?」

町を見渡す。確かにすごく立派な町並みだと思う。
妖精も自慢みたいで自信満々に腰に手を当てて、にんまりと笑みを見せた。
隣でもう1人の妖精がクスクスと笑う。

「だからね!あたし達、あなた達にお礼がしたかったの!
だってあなた達があのばかイルカモンスターを倒さなかったら、ここまで出来なかったんだもの!
本当はあなた達が遊びに来てくれるのをずっと待ってたのよぅ?でも、来ないから」
「連れてきた・・・って事?」
「そうなのよう!」

笑顔に悪気が全くなくて・・・まぁ、善意だもんね。妖精からしたら。
一度だけリュウと顔を見合わせて苦笑して、それからリュウは気付いたみたいに手を叩く。

「それならニーナも呼んであげたいんだけど、ダメかな?」
「ニーナなら大喜びしそうね」

ただ此処がどこら辺かも分からないんだけど・・・。
まぁ妖精達にお願いすればきっと何とかなるのかな?多分。

「それなら全員呼んだら良いんじゃないかな?姉ちゃん」
「っても、ガーランドのおっさんなんか何処いるか分かんねえだろ」
「あたし達なら分かるのよぅ!
だからあなた達を呼べたんだから!」
「はー。便利なもんだな」

レイも感心したような声をあげて。
じゃあ、決まりかな?

「皆で迎えに行きましょうか!」

きっと皆もこの町をみたらビックリすると思うしね。



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