鳥篭の夢

Story/初雪



「姉ちゃん!何だか真っ白いのが空から降ってきたぁーっ!!」


遠くから響くリュウの声。真っ白い・・・?
不思議に思って窓から外を覗き込んだら、そこにあったのはちらちらと降り注ぐ雪。
ここ数日凄く寒いって思ってたけど、雪かぁ。そういえばリュウは雪は初めてだよね。

「バッカだなぁ、リュウは。何にもしらないんだな。
アレは“雪”って言うんだよ」

自信満々なティーポの声が聞こえる。ちょっとだけお兄さんぶるような口調。
ティーポも初めて見た時は目を輝かせてたのに・・・なんて思い出したら自然と笑みが浮かんだ。

「ティーポ。“ゆき”って、何?」
「何って・・・雪は雪だよ!バカリュウ」
「ばっ!バカじゃないもん!」

僅かに震えるリュウの声にもう涙目になっちゃってるんだろうなぁ、なんて。
このまま喧嘩になっても困るし、でも微笑ましい光景に笑んだまま2人の元へと近づいた。


「あのね、リュウ。雪は氷で出来てるの。冬の寒い時になると降るんだけどね。
このままずっと降ったら一面真っ白になって綺麗なんだよ」
「へぇーそうなんだ!ぼく、見てみたいなぁ」

一変して泣きそうだった青い瞳がまるで嬉しそうにキラキラと光る。まるでティーポの時と全く同じ。
本当に2人はそっくりなんだから。なんて口にはしないけど、ただ代わりにくすくすと笑う。
窓の外から降り注ぐ雪は、次第に勢いを増していた。これならすぐ積もるんじゃないかな?

「大丈夫。これならきっと真っ白になったシーダの森が見れるよ」
「本当!?」
「姉ちゃん!そしたら雪合戦とか、かまくら作ったりしようよ!!」
「うん、良いよ」

途端、弾んだティーポの声。やっぱり雪が積もるのが楽しみなのに違いはないみたい。
私もレイも寒いのは苦手だけど・・・でもこうして嬉しそうな顔をされたら断れないよね。

「ゆきがっせん?かまくら?」

言葉にリュウが首を傾げて、またそれに得意げな顔をしたティーポの説明が始まった。
何時もは釣りとかばっかりだからかな。新しい遊びの話に何度も頷きながら、雪に対する憧れを募らせていってるみたい。


「じゃあ雪が積もるまで時間があるから朝ご飯にしようか。
ティーポ、レイを起こしてきてもらっても良いかな?」
「何だ、兄ちゃんまだ寝てるの?」

どこか呆れたような声。それでも表情は緩んでいて“仕方ないな”って言いながら2階へ走って行った。
きっとそのまま雪遊びを強請るつもりなんだろうなぁ。
考えていたら、ふと服の裾を掴まれた。見れば同じように私を見上げているリュウの姿。

「姉ちゃん、ぼくは?」
「んー・・じゃあ、朝ご飯の用意を手伝ってもらおうかな」
「うんっ!!」

にっこりと可愛らしく笑うとリュウはそのままキッチンの方へ走っていった。
大した物は作れないけど、それでも何か身体が温まるものを作らなくちゃね。

「姉ちゃん!早くー!!」
「はーい」

向こうから呼ぶ声に返事。まだ雪が積もるまで時間はあると思うけど・・・それでも楽しみで仕方ない声。
それを聞きながら私もリュウのいるキッチンへと向かった。



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5000HIT記念・少年期編、完。
拙い作品ではありますが、最大の感謝を込めて。
2009.01.21.凍架



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