Story/独占欲
パチパチと炎の爆ぜる音。
獣避けにと焚いた炎の煙が空へと昇っていく。
大抵の奴はもうテントで寝ちまってて、後は俺ととおっさん位だ。
「ではすまないが、後は頼むぞ」
「はい・・・・ぁ」
テントに消えようとするガーランドのおっさんを、立ち上がって追いかけようとする姿。
不意に腕を掴んで引き寄せれば、はただ不思議そうに俺を見た。
「如何したの?レイ」
「・・・・いや」
無意識の行動だ。別に俺だって考えてやった訳じゃねぇ。
そのまま腕を離せりゃ良かったんだが・・・何でかそれが出来なかった。
は暫く俺を見ていたが、そのまま俺に向き直る。
「良いのか?」
「だってレイが引き止めたのに」
ただ、くすくすと笑う声。
「ね。こういうの珍しいね?」
「そりゃ・・今まではずっと一緒にいたからな。
お互いの行動に関してどうこう言う事もなかったが・・・」
「そうだね。7年は長かったから」
ぽつり。零れ落ちる言葉。
それで漸く自分でもそうだと気付いた。
これは、この感情は──“嫉妬”だ。
コイツと離れていた時間が。
傍にいる筈だったのに空いてしまった時間が。
そしてコイツのその空白の時間にガーランドのおっさんがいたって事が。
愉快だねぇ。こんなのはただの醜い独占欲でしかないってのに。
「レイ?」
「いや、何でもねぇよ」
「えー、嘘だぁ」
あまりに子供みたいな反応に思わず噴き出す。
反則だろ、その拗ねた顔は。全く・・・。
「あのな。あんまおっさんにばっか懐いてると、噛み付くぜ?」
抱きしめて、咽喉元に口付けてから耳元で囁いてみせれば逆にきょとんとした顔。
「変なの。私がレイ以外の誰かを想う訳ないじゃない。
そもそもそんな場合じゃなかったし。
それに──レイだって私だけを想ってくれたでしょう?」
じっと俺を見る視線に揺らぎは無い。
何もかもお見通しってか?
「・・・なんて。それは私の希望なんだけどね」
と。途端、僅かに顔を赤らめて続ける言葉。
滅多に聞かねぇそれに口元が緩むのが分かる。
ただそれを見られるのは癪だったからそのまま無理やり噛み付くように口付けた。
「全く、愉快だねぇ」
「ぇ?」
「・・・そんなの当たり前だろ?
お前以外誰を見てろってんだ」
言えば、本当に綺麗な笑顔。
それを独り占めしたいなんて感情はどこまでも貪欲だ。単純な独占欲。
だから俺はお前しか見てらんねぇんだ。
何時までも、お前しか・・・。