とい
ぱちぱち。焚き火から火の粉が舞うのを眺める。
リュウもニーナもクレイも今は寝てる。此処にいるのはアタシとマスターだけ。
交代で火の番をして、本当はアタシはしなくて良いって言われたけど、でも何だか不公平じゃない?
アタシはニーナよりも頑丈だから大丈夫!そう言ってさせてもらったんだけど・・・うーん、案外暇だなぁ。
退屈で欠伸がひとつ。ちらりってマスターを見る。ふらふら足を動かして遊んでる?みたいな感じ。
でも別にマスターは番をする時間じゃない。
「ねぇ、マスター」
「はい。何でしょう?」
「如何して一緒にいるの?今はアタシが見張ってる時間だよ?」
「ふふー。別にマスターは見張りをしていませんよ」
「そうなの?」
楽しそうに笑う。でも、じゃあ如何して起きてるんだろう?
「マスターはまだオネムじゃないので此処にいますね。うふふうふふー」
「そっか。んー・・でも、寝ないと明日がつらくない?」
マスターはマスターで見張りの時間だってあるのに・・・。
そこまで言わなかったけど伝わったのかな?それでもマスターは何度か首を横に振った。
「どうやら大丈夫なようです」
「凄いねぇ、マスターって。
アタシなんて休める時に休まないとつらくなっちゃうよ」
「ふふふー。はちゃんと休んだ方が良いそうですよ」
「うん。ありがとう」
お礼を言って、そこで会話が途切れる。また静かな空間・・・・・・・うーん、暇になっちゃった。
目の前にいるマスターを眺めてみる。やっぱり不思議だなぁってしみじみ。
何て言うか、喋ってるのを聞いてると“自分じゃない誰か”の言葉を伝えてるみたいな感じだし。
それに──
「うーん・・・」
「どうかしましたか?」
「うん、ずっと気になってた事があるんだけどね?」
「??」
「マスターって何?」
じぃっとマスターを見てそう訊ねる。何度見ても不思議。
初めて会った時から引っ掛かってたんだよね。
違和感。ヒトには無い力・・・って言えば良いのかな?そんな力を感じる。
でもそれはリュウや主とは違うような気がするし、だからってアタシともちょっと違う。
「ふふふー。マスターはマスターですよ。
は不思議な事を訊きますね」
「そうかな?」
マスターはマスター・・・かぁ。まぁ確かにその通りだとは思うけど。
でも何だかアタシの訊きたかった事の答えになってないような気もする。
「アタシからしたらマスターも充分不思議だよ」
「そうですかね?」
「うん。面白いからアタシは好きだけど」
そう言って笑ったらマスターも笑う。その後でお決まりの“笑うところ合ってますか?”の言葉もついて。
今回は・・・んー、まぁ間違ってないんじゃないかな。うん。きっと大丈夫大丈夫!!
「ふぁ・・」
しまった。アタシが先に眠くなってきたみたいで、勝手に欠伸が1つ。
「眠たいのなら寝た方が良いですね」
「ん?でも見張りがあるから大丈夫」
「マスターがいるから平気のようですよ」
「あはは、ありがとう!
でもそのまま休むのはちょっと悔しいからギリギリまで頑張る!」
「悔しい、ですか?」
不思議そうな顔。・・・顔って言っても表情は変わらないけどね。
でもそれにアタシは大きく1つ頷いた。
「うん!でもありがとう」
「ふふふふー。お礼はマスターに言いましょう」
「「ありがとう、マスター」」
前にも聞いた事のあるフレーズ。だから調子に合わせて一緒に言ったらピッタリ重なった。
何だかちょっと楽しいかも。それでまた笑ったらマスターは今度は不思議そうにする。
結局マスターが何なのかは良く分からなかったけど・・・でもまぁ良いか。
マスターはマスターなんだし。マスターを知ったからって何か変わっちゃう訳じゃないし。
ましてやアタシの記憶に関する事なんかある訳ないんだし。ね。