鳥篭の夢

ひかり



「ねぇねぇ、長老さん」
「どうしたんですか?ガーディアン様」

む。その呼び方はあんまり好きじゃない。
アタシは確かにガーディアンだけど・・。
何でかすぐに忘れかけちゃうんだけど、とにかくアタシはヒトじゃない。
主の為にヒトから外れた存在。でもアタシはその呼び方は嫌い。

だよ、アタシの名前。それと敬語も要らないよ。
アタシはうつろわざるものじゃないんだから」
「あ。すみませんさん」
「うん」

ちゃんと名前を呼んでくれるならそれで良いかな。
それから“どうしたの?”って訊ねられて自分から話しかけた事を思い出した。そうそう気になってたこと。

「あのね。長老さんって目、見えてないよね?
なのにどうして見えてるみたいに動けるの?物の位置もヒトの位置も全部分かってるでしょ?」
「あぁ、その事か・・・いや、一応良くはないけど見えてるんだよ」
「そうなの?」

ずーっと目を瞑ってるのに?

「うん。ただ、どんな姿をしているのか分からないんだ」
「分からない?如何して??」
「そうだなぁ、さんには何となくでも分かるんじゃないかな。
私には皆が如何見えるかというとね・・・・光の柱に見えるんだよ」

光の柱?

「んー・・良く分かんない。アタシはちゃんと皆は皆に見えるし。
光の柱で見えたことなんて全然ないよ」
「そうだろうね。でも感じたことはあるんじゃないかな?
光の柱は人それぞれ色も大きさも光り方も違っている。これは言ってみればその人の生命の流れ。
生きていく道。関わりを持った人の流れは混じりあって・・・大きな流れになっていく」
「ヒトの命と流れ・・・」

それは、ちょっと分かるかもしれない。ただアタシは全員感じられる訳じゃないけど。
主とリュウと・・・・・あと、何だろう?良く分からないけどもうひとつ。最も自分に近い感じ。

「ただ、うつろわざるものの流れは世界の流れに力を及ぼすほど強大だ。
その大きな流れは近くにある流れを簡単に飲み込んで押し流してしまう・・・。
そうやって流れが最も大きくなったもの。それが神と呼ばれる存在なんだ」
「押し流す・・・」

それが神様?

「たださんはうつろわざるものとも普通のガーディアンとも違うね。
まるで光を分け与えられたみたいに2つの光が完全に交じり合わずに柱になっている」
「そうなの?」
「うん」

分け与えられた?誰に?主に?思い出せない。
そうだったのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。
そういえばアタシは最初からガーディアンだったんだっけ?何だか違和感。
でも、もし違うんだったらガーディアンである前アタシはなんだったの?それも分からない。
鮮烈な赤。痛み。内側から爆ぜる様な・・・・そのもっともっと昔。昔?
アタシは何を考えてるの?何を?全部分からない。思い出せない。
思い出す?その必要性は?あぁ、でも主に繋がる記憶であるのなら必須だ。

唯、頭が・・・痛い・・・・・・。

さん?大丈夫!?」
「え?」

長老さんの声。顔を上げたら心配そうな表情。
あ。もしかしてアタシまたボーっと考え事してたのかな?そうかもしれない。
とりあえず、これ以上心配させないように大丈夫だからって笑って見せた。

「平気。記憶ないからすぐに思い出そうって考え込んじゃうの」
「何か大切な事は思い出せた?」

問いに首を横に振る。
長老さんの少しだけ申し訳なさそうな顔。そんな顔する必要ないのに。

さん、心配ないよ。諦めない限り、きっと思い出せるから」
「うん、ありがとう!!」

何だか励まされちゃった。でもくすぐったいような嬉しい感覚。
それにしても・・・・そっかぁ、アタシは2つの光で構成されてたのかぁ。ちょっとビックリ。
長老さんの不思議解明だった筈なのに、逆に新発見かも!
これが少しでも主を思い出すきっかけになったら良いのになぁ・・・・。



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