鳥篭の夢

ひとつのねがい



ばたばた。マスターからリームにディースを乗り移らせる・・?みたいな事をするみたい。
それで一気に慌しくなってアタシ達はとりあえず外に出る事にした。
だってそこにいても如何しようもなさそうだったし。邪魔になるの嫌だし。後、暇だもん。


「何だか凄い事になっちゃったね」

隣にいたリュウの少しだけ困ったような声。んー・・

「そうかな?あ、でも確かにマスターの中にディースがいたのは驚いたかも!
あんなボッテボテの鎧の中にあんなに綺麗なお姉さんがいたんだよ?凄いよねぇ!」
「あはは!うん、確かにそれは僕も驚いたなぁ」

だよね!そう言って、お互いに笑う。
リュウの“凄い事になった”は違う意味だって分かってるんだけどね。
でもそれはそれで本当に驚いたから。


「ん?」

ちょっとだけ真剣な表情。

「ありがとう」

それからお礼。何でだろう?

「僕はに凄く助けられてる気がする。
勿論ニーナや皆にもだけど・・・・でも、僕の探してる人に近いからなのかな?
にも近いものを感じるし、それに言葉が温かいものに思えるんだ」
「うん。アタシも・・リュウとは近いものを感じる。
でもそれは、やっぱり主を間に置いて近いもの・・に、なっちゃうけどね」
「そうなの?」
「そう。でも・・えへへ、嬉しいな」
「え?」

今度はリュウの不思議そうな顔。

「言葉が温かいって言ってもらえて嬉しいな。
そんなつもりで言ってる訳じゃないけど・・でもリュウの嫌な感情を無くせてるんでしょ?」
「う、うん」
「だったら凄く嬉しい」

アタシの心もほわほわ温かくなるの。不思議な感じ。
そう言ったらリュウも“僕も同じだ”って。えへへ、一緒なのも嬉しいね。

「こんな風に優しい気持ちのまま生きていけたら良いのに・・ね」

ぽつり。勝手に落ちる言葉。自分でも意味が良く分からないけど心から出てきた言葉。
リュウは不思議そうな顔をして、でもアタシも上手く説明できない。だからとりあえず笑って見せた。

「ううん、何でもないよ。ねぇ、リュウ。
凄い事になったってさっき言ってたけど。
これからもきっとあると思うけど・・大丈夫だよね」
「え?」
「ヒトを嫌いには・・・ならない、よね?」

純粋なリュウ。ううん、竜という存在が純粋なのかも。感情が綺麗なの。勿論、主も。
だから嫌いになってほしくない。醜いけど、汚いけど、愚かだけど、それでもやっぱり・・・。
ガーディアン。ヒトじゃないアタシ。でも、何でか分かんないけどそう思う。

「うん。僕はニーナもも、皆好きだよ」
「ありがとう、リュウ!」

嬉しい言葉。嬉しい笑顔。
願わくば、この気持ちをずっとずっと持ってくれますように。
そうすれば・・・・そうすれば、主もきっと──。



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