それから
ただ何もかもがあっという間過ぎて・・・。
一瞬、私には何が起こったのか分かりませんでした。
「ぁ・・さんっ!!」
「ウサギっ!!??」
さんの傷が余りにも深いものだという事は遠目にも分かりました。
切り裂かれて、血を出しながらもリュウを守ろうと前に立ち塞がる姿。
“神様を護る為の存在なの”
そう私達に打ち明けてくれたさんの笑顔が一瞬脳裏に過ぎりました。
でもそれって此処までする程の事なんでしょうか?自分の命を投げ出しても・・?それは私には分からないです。
・・・あ、今お話すべき事では無かったですね。
「ッッ!!??」
信じられないとリュウは叫んで、崩れ落ちたさんの身体を支えます。
それから聞き取れなかったのですが何かやり取りとしてさんはそのまま・・・・・
「ウゥ・・ァァア・・アアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!!」
「・・・っ」
それは悲痛な叫びに聞こえました。
「何だ!?」
「ふふ・・知ってるわよ、それ。“あの時”みたいにまた変身するんでしょ?
でも、二度目は無いわっ!!」
アースラさんは驚いてましたが、ラッソさんは前回の事があったからか若干余裕があったように思います。
だけど魔物が剣を振り上げて、それと同時に言葉が止まったのが分かりました。
先程まであった僅かばかりの余裕は消えていました。竜が・・・竜が、魔物を鷲掴みにしていたから。
そうです。とても大きな竜が、リュウの傍らにいました。言葉にすると少し分かりにくいですね。
「──あの時と同じだと?
全然違うよ。あれとは比べものにならない」
ディースさんはそう言っていました。でも私も同じように感じました。
とても大きな力。強い怒り。
怖くて、立ち竦んで、何も出来ずにただ見つめる事しか出来なくて・・。
「何よ、これ・・・まさか、暴走して?
そんな・・・嘘。ちょっ・・待ってよ・・・っ!!いゃ・・・・」
ラッソさんの言葉は言い切る前に・・竜の放った力に飲み込まれて・・・・・。
余りに強い衝撃に私達も吹き飛ばされてしまいました。あ、怪我は無いです。大丈夫ですから、ね。
でもあそこ・・抉られた所を見て頂いたら分かると思いますけど本当に強い力でした。
「ラッソ・・・!くそっ・・動くな!
・・・・な、何をしている。早く捕らえんか!!」
「はっ!」
アースラさんはとにかく態勢を整えようとしていて・・・だけど・・・。
だけど他の兵士さんも勿論、竜には敵いません。それで、そのまま・・・・あ、いえ大丈夫です。
まだ話せますから。そんな顔しないで下さい、さん。
それであっという間に竜が兵士を倒してしまって・・・私、見ていられなくて・・・・。
「リュウさん・・・・やめて・・・・」
「ヒヨコ!危な・・!!」
ディースさんの声も聞こえずに、走り出していました。
あ、これはさんと同じですね。ただ無我夢中だったんです。
「もうやめて、リュウ・・・・お願い・・・・」
吼えるように叫ぶリュウを止めたくて、必死でした。
「・・・・・けど、ニーナ。みんな殺されたんだ・・・・みんな・・・・。
だってこんな・・・・・如何してヒトはこんな事ばかり。教えてよ・・・・ニーナ・・・・」
リュウは泣いていて。私は答える事が出来なくて・・・。
そのままリュウは倒れてしまいました。さんをしっかり抱きしめたまま。
「リュウ!!」
「大丈夫だよ。力を使いすぎて気を失ったんだ。
それよりボサッとしてるんじゃないよ!ヒヨコ。
問題はウサギの方さ。ガーディアンでいくら丈夫とはいえ、早くしないと死ぬよ!!」
「・・・・ぁ・・!!」
あの・・それで、その・・・・ごめんなさい!さん。
私、そのディースさんの言葉でさんの傷の事を思い出して・・・・。
えっと・・あの。それからすぐに治したんですけど。でも、あの、本当にすみません。
・・・・・ぁ。はい。そう言って頂けると本当にありがたいです。
だけど・・・全てを一瞬で消滅してしまえる力。
初めて目の当たりにした、本当に強大すぎる力。
この時、初めて私は竜が怖いと思いました。