鳥篭の夢

しんじること



「・・・・・あの」

長い長い沈黙を破る声。私は知らないけれど、確か“マミ”って呼ばれていたように思う。
そういえば説明するって言ってたのには何も言わずに行ってしまったんだっけ。
きっと彼女なら“えへへ、紹介するの忘れてた”なんて笑って言うのだろう。容易に想像出来て、また涙が滲む。
それから如何したのかと思って顔を上げてみて・・・きっと私も同じ顔をしてるんだと思う。泣き腫らした顔。

「おら、何て言ったら良いか分かんねぇけど・・・その・・・。
きっとも兄ちゃんも、そのもう1人の人も帰ってくるから・・・あの・・」

精一杯の慰めの言葉なんですよね?多分。
がいなくなってきっと知ってる人なんて誰もいないのに・・・優しい人なんだろうなぁ。
皇帝さん・・・フォウルさんが、この人にはとても柔らかい雰囲気で接していたのも分かる。

「ありがとうございます」

だから私も自然とお礼の言葉が出て・・・。
ホッと少しだけ安心したような笑みに私も笑顔になって。

「くよくよしてたら、きっとにも怒られちゃいますよね」
「そうかも知んねぇだな」

元気に笑ってた方が良いって、大丈夫だからって・・そんな風に言ってくれるんだろう。
ついさっきまで傍にいて・・・なのに、リュウもも行ってしまった。
私達を置いて、神を還しに行ってしまった。2人はどうなってしまったんだろう?


「・・・・さて!おらは村さ戻って畑仕事でもせんと!」
「畑、ですか?」

急な言葉。畑って作物を育てるんですよね。見た事は無いですけど・・・。

「そうだ!他の人に見てもらっとるんだども、やっぱ自分とこの畑は自分で見んとね」
「・・・・・強いんですね」

笑顔のマミさんに、自然と言葉が零れて・・・だけどマミさんは首を横に振った。

「おらは、ただ信じてるだけだ。も言っとったから。
兄ちゃんもも戻ってくるって・・また、会いに来るって。だから・・・」

“信じてたらまた会える”
そう彼女は笑顔のまま言葉を続けて・・・・そう、ですよね。信じなくちゃ駄目ですよね。

「私も信じます。
リュウもも・・・フォウルさんもきっと帰ってくるって」

信じる。絶対に・・・帰ってくるって。
もう去ってしまった彼等に言葉は届かない。それは知っているけど。
広い空。ぽっかりと輝く月。どうか、2人に伝えて・・・?なんてそっと願う。

私はずっと待ってます。帰ってくるって信じてますから、会いに来て下さいね?
リュウ。・・・。



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