鳥篭の夢

あらたなめざめ



全ての竜を還し終わった後、アタシは夢を見ていた。夢だって認識は無かったんだけどさ。
遠い遠い記憶。欠片のように散らばった、思い出すことも無い筈だったモノ。

全部が一気に目の前を駆け抜けるように過ぎ去っていって・・・・残ったのは暗闇と“何か”。

「誰?」

問うたアタシに、何かはそっと笑う。儚い笑顔。そのまま何かはずっと其処にいる。
見覚えのある色。髪の毛の色も。瞳の色も──ううん、瞳はヒトだった頃か。でも、アタシそっくりの色。


──良いんだよ、忘れてて...

「・・・・誰?」

──このまま無かった事にして。いなかった事にして...

「・・・ねぇ、誰なの?」

──アタシは笑っていたい。今のアタシのままでいたい。だから...

「ねぇ・・・っ!」

──思い出さないで...


ぷつん。全部なくなっちゃう感覚。全部諦めたみたいな何かの声が聞こえなくなった。
忘れてて?思い出さないで?何が?何を?だってアタシは思い出したよ。フォウルの事を。
何も忘れてない。“忘れてる事なんて何も無い”のに・・・っ!!


。大丈夫?」

呼ばれて、目覚めたアタシが見たのは懐かしい顔。青い髪と同じ色の瞳・・・・リュウ。

「あれ?」

何があったんだっけ?なんて首を捻って、思い出す。全部の竜を世界に還した事。
あれ?でもそうしたら色が元通りなのは?それにさっきまでの主みたいな雰囲気じゃないし。
って考えて、それから・・・視界に入ったもう1人。

「フォウルっ!!」

銀色の髪と金色の瞳と・・あ、でも角が無くなってるよ!?

「わ、わ、リュウとひとつになったんじゃ無かったの!?あれ?如何して??」
「うつろうもの達を還した時にまたふたつに分かれたようだ。
それも、どちらもヒトとして・・・。全く、おかしな事をする半身だ」

理解できないって眉を顰めて・・・でも、アタシは嬉しいな。

「僕達は元々ひとつだったんだから、どっちかだけ帰るって不公平だろ?
それに・・言ったじゃないか、一緒に世界を見に行こうって!!」

にっこり。リュウが笑って、アタシも一緒に笑う。

「アタシも、フォウルとリュウにまた会えて嬉しいよ!
ひとつに戻りたいならそれで良いかなって思ってたけど・・やっぱり2人なのも嬉しい」
「ありがとう、

お礼なんて言わなくても良いのにな。何だか照れちゃう。

「・・・・本当に、お前達は理解できん」

フォウルはひとつ溜息。でも・・嫌じゃないんだよね?だったら別に良いの。
それにほら!これならマミにも会いにいけるでしょ?えへへ、約束守れそうで良かったぁ。

「それにしても・・、その瞳は?」
「瞳?」

何か変?

「色が・・金色じゃなくて茶色になってる」
「・・・・あれ?」

無意識に胸元に手がいって・・・・・あれ?石みたいな、そういえばアレって結局なんだったっけ?
考えても分かんないけど、とにかくアレが無い。ガーディアンになってからずっとあったのに。え?何で??

「如何やら神の力を世界に還した事によって、ヒトに戻ったようだな」
「・・・ガーディアンじゃ、無くなっちゃった?」

って事?

「そういう事だ」

フォウルが頷く。アタシも・・・ヒトに?元のヒトに戻った?

の瞳の色は元々力の源である私の影響を受けたもの。
お前がヒトに戻ったのであれば、それも戻るのはおかしな事ではないだろうしな」
「そういえばは元々ヒトだったんだよね」
「う、うん・・」

でもまさか戻るなんて思わなかった。そっかぁ、ヒトに戻ったんだ。ちょっとビックリ。
一瞬、夢を思い出す。ヒトのアタシと同じ色をして同じ顔をした“何か”の事。
でもアタシはあんな顔した事なかった。何も感じていないような取り繕うみたいな貼り付けた笑顔。
何だか怖いな。・・・怖い?ううん、大丈夫!!
だってあんなのただの夢なんだから、気にする事なんて無いし。

よし、じゃあ気を取り直して!

「まぁ、アタシの瞳の事も分かった所で・・・・とにかく行ってみようよ!!」
「・・・何がだ?」
「世界を見に!」

何処に行くとか、そんな目的とかいらないからさ!
もしも誰かがいる近くに来たなら、ちょっと寄ってみるとかそんなんで良いと思わない?
ねぇ、きっと楽しいよ。アタシもちゃんと見た事なんて無いから楽しみ!!



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