鳥篭の夢

ただいまとおかえりと/2



「へー・・此処がチャンバかぁ」

サイアスはマスターと一緒にチャンバで呪い除去作業のお手伝いをしてる。って、話を聞いて来てみたけど。
・・・うん。ヒトになったアタシにも何だか嫌な雰囲気が伝わってくる。

「そう?僕はそこまでは分からなくなったかなぁ・・」
「頭が回らない分、本能で感じているのだろう」
「あ、フォウル!今、アタシの事バカにしたでしょ!」

バカだって言葉にしないで言った!!“さぁな”って誤魔化・・・せて無いんだからね!フォウル!!
抗議するけどフォウルはあくまで相手にしない。それをリュウが楽しそうに笑って眺めてて・・。

「リュウも何か言ってよ!」
「え?・・・えっと、あはははは」

もぉ!リュウは笑って誤魔化したでしょ!!2人とも酷いっ!!
むーって機嫌悪く睨み付けたらリュウがゴメンって言って・・・仕方ないなぁ。

──...ガタン

「へ?」

何の音だろ?そっちへ視線を向けたら、奥の方にある巨大な扉が開いた。
中から・・マスクを被ってて誰かは分からないけど、小さな人達が出てきた。服ももこもこに着込んでる。

「お疲れ様でした!本日の作業は終了です。
明日も早いから皆しっかり休んでね!」
「「「はーい!」」」

作業って・・・呪いの除去?だよね。多分そうだと思うんだけどな。嫌な感じのするトコから出てきたし。
あ、でも終了って言ってた。そしたらサイアスやマスターもいるのかな?ちょっとドキドキする。


「あれ?君って・・」
「あ。親方さん、お久しぶりです」

不意にリュウに話しかけた人。親方さん?
・・・あ、この人ってアタシと同じ野馳族だ。耳と尻尾がそんな感じだし。
にこやかな表情でリュウに近づいてくる。前も来た事あるのかな?

「如何したの?あ、また此処を通りに来たとか?
確かに前回よりはずっと呪いもマシになってるけど、流石に通るとなるとまだちょっと大変かなぁ」
「あ、いえ。マスターとサイアスが此処にいるって聞いたんですけど」
「ん?・・・あぁ、うん。確かにその2人なら此処で働いてもらってるよ。
魔物の出る地区も多いから用心棒をしてもらってるんだ。そろそろ戻ってくる筈だけど──」

「ふふふー。やっぱりディース様の言う事は当たっていたのですねー」
「・・・・う・・」

親方さんの言葉の途中で懐かしい声。ちょっとドキドキする。
見てみたら・・・ほら、サイアスとマスターの姿だ。
全然変わってないなぁ、2人とも。一緒にいるのを見るのは少し不思議だけど。
身体が自然と走り出してて、思いっきり突撃。だけどちゃんと受け止めてくれて、ふかふかの感触。あー・・気持ち良いな。

「ただいま、サイアス!」

ちゃんと帰ってきたから。まだ世界を全部見て回ったわけじゃないけど。
でも帰ってきたから。だから“ただいま”って言ったら、サイアスも頷いてくれた。

「お・・おかえ、り。

えへへ、やっぱり胸がぽかぽか温かくなる。

「うふふ。感動の再会ってやつだねって言ってますねー、うふふふふー。
・・・・・・リュウもそう思いませんか?」

ぐりんってマスターの顔がリュウの方を向いて、少しだけリュウは驚いた顔。

「神を捨てて、フォウルと共に戻ってくるなんて・・・って驚いてますよ」
「やっぱりディースにはお見通しだよね」
「ふふふー。ディース様に分からない事はないのですね。うふふー」
「・・・・・不完全な神、だったか」

“中に入っているのは”ってフォウルが呟く。リュウとひとつになった時の記憶だよね。
それにマスターは頷いてから笑う。うふふーって何時もと同じ笑い方。

「ディース様、ですよ」

えっと、それは“名前で呼べ”って事だよね。きっと。

「・・・・そうか」

フォウルはひとつだけ頷いて・・・・・頷いた!?
うーん。人になってから何だかちょっと丸くなったよね、フォウルって。
不思議。でもその変化はアタシすごく好きだなって思う。


「そういえば」

親方さんの声。リュウが不思議そうな顔で首を捻った。

「どうかしたんですか?」
「ひとつ気になってたんだけどさ・・」
「・・・?」

アタシとサイアスを見比べて・・・如何したんだろ?

「この子、サイアスの彼女?」

“兄妹には見えないし”って親方さんは続けて・・・えぇと、かのじょ?は、あれだよね。
お付き合いしてる女のヒトって意味の。大丈夫、それ位はアタシも知ってる。
・・・・・・・えっと、でも如何なのかな?サイアス。彼女って言っても良いのかな?
見上げたらサイアスは頭を掻いて・・照れたような仕草。それから頷いてくれた。

「そうなんだ!って事は、今まで彼女放っといてたんじゃないの?」
「う・・いや・・・その・・」

困ったように言葉を濁す。あ、でも放っといてたのはアタシの方なんだけどね。
それにまだまだ先があるから待っててもらわなくちゃいけないし。・・・・・あれ?

「リュウ?如何したの?」

驚いたみたいな顔。

「い、何時の間に恋人同士になってたの?」
「・・・・・・んっと」

こいびとどうし。サイアスと、こいびと。
──・・・っ!何だか改めて訊かれると恥ずかしい気がして。えっと、上手く言葉が出てこない。

「・・・・・ま、また今度言うからっ!」

顔が熱い。何だか凄く恥ずかしくなってフォウルの陰に隠れた。
こういう時に反射的にフォウルの傍に行くのは・・・やっぱり昔からの癖だよね。多分。
だけど・・・・・・あぁ、落ち着け心臓。落ち着けアタシ!何だかサイアスの顔がまともに見れないよぅ。
折角久しぶりに会ったのにな・・・なんて考えながら、真っ赤になってると思う自分の顔を抑えた。



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