ただいまとおかえりと/3
ひとつ、ひとつ、世界を見て回った。
ひとつ、ひとつ、人と触れ合いながら・・・そうして、ようやっと辿り着いた旅の終着点。
最初から決めてた。皆、何も言わなかったけど・・でも、最後に来るのはやっぱり此処だよね。
だからずっと待たせちゃってたけど。それは本当に申し訳ないんだけど・・・・。
「久しいな」
ぽつり。フォウルが言葉を落とす。
アタシもそう思う。懐かしい空気。長閑な雰囲気。
「でも長居出来なさそうだよね。地主が五月蝿そうだし」
「仕方あるまい。所詮、我等は余所者だからな」
でも歩くのは止めない。目的の場所まで、迷い無く進んでいく。真っ直ぐに。
それが何だか嬉しくて・・リュウも多分同じなんだと思う。一緒に顔を見合わせて笑った。
「やっぱり、アタシ此処好きだなぁ」
しみじみ思う。思わず大きく伸びをして・・・本当に、何も変わらないなぁ。
途中に転々と並んでる田畑も、ゆったりと流れる時間も、人達の他愛ない会話が耳に入るのも、全部。
マミを連れ出しに来た時のあの変な緊張とか殺伐とした空気とかは全部無くなってて一安心。
あんなのはこの村には必要ないんだよね。ううん、この村だけじゃなくて・・本当は世界の何処にもイラナイ。
「が此処が好きだって言うの、僕も分かるな」
「でしょ?」
「うん。何だか凄く居心地が良いよね・・雰囲気、なのかな」
他愛ない話をしながら坂を上がっていく。って、言ってもフォウルは割と黙々とだけど。
村の中でも割と端っこの方、辺鄙な場所。初めて来た人は絶対に来ないような道。
だけど当たり前の様に・・まるで我が家にでも帰ってるんじゃないかって思うような足取りで進む。
「この時間だったら畑仕事してるとかないかな?」
「ん?んー・・大丈夫だと思うよ。
この時間帯は家の中で掃除とかしてる時間だから」
「そうなんだ」
「うん。よっぽどの事が無い限りは家だと思うんだけどな」
よっぽど・・例えば急な雨とか。逆に日照りが続いてとかも・・ありそうだよね、きっと。
今まで見てきた限りだと、急に“何しよう!”みたいな思いつきで行動って無かったもんね。
あ、リハビリ兼ねてのお散歩とかはあったけど・・・・でも、あれはリハビリだったし。
「きっといるよ」
待っててくれてる。坂を上がりきって、目に入ったのは一軒の家屋。
もうボロボロで、だけどそれが懐かしくて仕方ない。不思議な感覚だなぁ。
「フォウル。開けないの?」
扉。前でじーっとしてるけど、待ってても開かないと思うよ?
でもフォウルはそのまま動かない。悩んでる?でも悩む必要なんて無いって思うな。
いいや、アタシが叩いちゃえ。コンコンっていうよりはドンドンって鈍い音が響く。
「・・・・はぁーい!どちら様だ?」
家から懐かしい声。ガラガラって扉が開いて・・あったのは懐かしい姿。
やっぱり変わってない。それが嬉しくて笑う。向こうも、凄く嬉しそうに笑って。
「──おかえり、兄ちゃんっ!!」
ただいま、マミ!