鳥篭の夢

魔導薬師の故郷の秘密



巻き毛の可愛らしい女の子、リルムちゃんがとインターセプターを連れていって・・・。
ストラゴスと呼ばれていたお爺さんは1つ咳払いをすると私達を見た。

「全く・・・・・・孫が迷惑をかけた。すまんゾイ」
「いや、構わん。人にはなつかない犬なのだが・・・」

扉の向こうへと視線を向けるシャドウは何を考えているのかしら?
驚いてる?とは、また違うような気がする。
でもそれが何なのかは私には分からないのだけれど。

「あー・・・何の話をしとったんじゃったか。
ああ、お主らが幻獣に力を託された者達だという事じゃったゾイ。
それから魔導士についてじゃな。
この村はそもそも・・・・・・魔導士達の村なのじゃ」

魔導士の・・・村!?

が魔法を使える事は知っていました。
でも魔導士の村があるなんて・・・」

私は教えてもらってない。

「魔法が使える事は秘匿されるべき事実じゃからな。
村を出るには、この村の存在と魔導の力に関して秘匿する事が条件となる。
・・・あまり気を悪くせんでやって欲しいゾイ」
「だからさっきティナに謝ってたんだな」

ロックの言葉に私は俯いた。
“色々伏せててごめんなさい”って・・そう言ってた姿を思い出す。
リルムちゃんに手を引かれながら、申し訳なさそうに。

「魔導士はもうこの世にいないと思ってました。
魔大戦の後に幻獣が消えて、その時に魔導士もいなくなった。
だから魔法の力は全て世界から消え去ったと・・・」

ロックの言葉にストラゴスさんは1つ頷いて返した。とても真剣な表情。

「遥か昔、人間は魔石から魔導の力を取り出した。
そして魔法が使えるようになった人間が魔導士と呼ばれる人じゃ。
魔大戦の後、幻獣達は封魔壁の向こうに結界を張りそこに隠れ住んだ。
再び自分達の魔導の力を利用される事を恐れたのじゃ」

それはお父さんも教えてくれた。
そうして静かに暮らしていた幻獣界にあの日、人間の軍隊が押し寄せてきたって。

「そして、残ったのは人間だけ。
普通の人間達が最も恐れたのが魔導士達の力。皆、魔大戦の悲惨さが身に沁みておるからの。
そこで行われたのが魔導士狩り。不当な裁判により魔導士は次々と殺されたのじゃ」
「魔法が使える事以外、何も変わらない人間なのに・・・」

ただ魔法が使えるというだけで・・・?

「その時に逃げ出し、この土地に隠れ住んだ魔導士達が我々の先祖じゃ。
年月が経ち血は薄まり、この身に流れる魔導の力はだいぶ衰えた。
せいぜい弱い魔法か、使う事は出来なくとも何らかの形で残っておる者もいる」
「でも・・・は魔法を使うでしょう?
ケアルラやサンダラみたいな強い魔法だって・・・」

魔導の力が衰えたというのなら、そんな強い魔法は使えない筈。
レビテトで飛空艇を浮かせようなんて無茶も。

の家系は元より強い魔力を持つからの。
その中でもあやつは尋常ではない資質と潜在的な魔力量、そして特異な性質を備えておる。
それが・・・が本来長くは生きられないとされる理由じゃ」
「外からの魔力の干渉を受けやすい・・・」
「・・・知っておったか。魔導の力は、本来精神に作用する。
強い力を使う、或いは与えらた際に虚脱感、倦怠感、或いは感情のブレ、精神不安などが起こる事があるのはその為じゃ。
だがどういった訳か、あの家系の人間は使うにせよ得るにせよ一定の力を越えると肉体にその負荷が及ぶのじゃ。
とはいえ本来であれば肉体に納まる以上の力を得る事はないのじゃが・・・」
はそれ以上の力を得やすいって事か」

ロックの言葉にストラゴスさんが頷いて・・・。
だからあの時・・・幻獣の姿になった私の魔導の力に影響を受けて、は・・・。

「・・・もしかしてのコントロールが下手なのも?」
「まだコントロール出来とらんのかゾイ?外に出れば落ち着くかと思ったのじゃが・・。
まぁ予想通り、あやつの体内に過剰に溜まった魔力が感情によって溢れている・・という現象じゃ」
「それは、とてもツラいんじゃないかしら?」

強い力・・幻獣としての力が目覚めた時、私は上手く扱えなくて暴走させてしまったもの。
それを少しだけ溢れさせるだけで済ませているって事でしょう?
扱えない程の力を持っている。それは身体にどれだけ負担になっているのかしら?

「ある程度は薬で抑えられると聞いておるゾイ。
逆に言えばそれが無ければは10になる前にこの世にはおらんかったろうが。
あやつの婆さんが発見し、本人に受け継がれた唯一身を助ける薬じゃ」
「何時も飲んでるアレの事か?」
「うむ。必要なくなる・・という日はないじゃろうな。
あれには魔導の力の影響を抑え、溜まりすぎた余剰分を体外に出す作用があるからの。
───ただ力に関してツラい・・という弱音は、わしは一度も聞いた事は無かったゾイ。
何時もニコニコ笑って、やんちゃな事をしているお転婆娘じゃったからのう」

お転婆・・・?
ロックと顔を見合わせて首を捻るけど・・イメージに無いわよね?そうよね??
無茶をする事は多々あるけれど、お転婆・・・・・・?

「・・・・・・とと、余計な事を言ってしまったの。
に知られたら怒られそうゾイ。
後は・・・そうそう、幻獣の居場所じゃったか」
「何処か知ってるのか?」
「いや、確定ではないが・・・。
この島に幻獣が逃げ込んだのなら村の西にある山かもしれんゾイ」
「山?」
「強い魔力を帯びた山ゾイ。
伝説では、幻獣の聖地と言われとる」
「暴走した幻獣達は、その魔力に引き寄せられた・・?」
「とにかく、行ってみるか・・・!」
「インターセプター、行くぞ」

ロックとシャドウがそれぞれを呼べば、リルムちゃんの不満の声の後に暫くして2人と1匹が姿を見せる。
何時もと変わらないに笑みを見せれば、常の笑顔を返してくれた。

「ティナ、ロック。幻獣のいそうな場所は聞けました?」
「西にある山が怪しいって話だぜ」
「あー・・・あそこならよく知ってますから案内できますよ」
「そりゃ助かるな」
「・・・・・・、あの山は子供の立ち入りを禁止にしておった筈ゾイ?」

背後から、ストラゴスさんの低い声。
心なしかシャドウの視線も鋭い気がするけれど・・?これは気の所為かしら。

「・・・・・・いや、ちょっとしたお散歩コースですよ。
何時も良い子に夕方には帰ってたでしょう?
それにもう10年以上前ですし、時効ですよね?」
「時効で済むかっ、このお転婆娘がっ!!!」

私の知らなかった“お転婆”の片鱗が見えて、思わず吹き出して笑ってしまって。
それを見てが少しだけ困ったように笑ったのが可愛いと思ったのは、きっと変じゃ無いわよね?



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