鳥篭の夢

はじめての



くらい へや。
うごかない からだ。
てくびが いたい。

めのまえの おんなのひと。
たくさんの ことばを アタシに むける ひと。
たくさんの あくいを アタシに なげる ひと。
アタシを うんだ ひと。

いたい。

こころが ひめいを あげる。

くるしい。

いきが できなく なってきて。

はやく はやく ぜんぶ おわって。
こころの いたみも からだの いたみも ぜんぶ ぜんぶ・・・。

ああ でも。
これが おわっても アタシには なにもない。
まってるのは おしごとだけ。

だれかが いっていた。
アタシは “しょうもうひん” なんだって。
アタシが しんでも また つぎのアタシが うまれる。
だから アタシじゃ なくても べつに いいんだって。

じゃあ アタシは なんなんだろう?
なんで いきているんだろう?

アタシは いきている?
それとも ただの ──


「こんな場所に閉じ込めるなんて!!
あたし達、先祖返りを・・・あの子をなんだと思ってるの!」

ばたばた。

そとが うるさい。
はじめての こえ。
おねえちゃんじゃ ない。
でも おとなとも ちがう。

だぁれ?


── がらり。


ごはんの じかんじゃ ないのに ふすまが ひらく。
おてあらいでも おふろでも ない。
じゃあ なんでだろう?

ひやり。
つめたい くうき。
はじめてみる おんなのこ。
すごく かなしい かお?

「酷い・・・」

ひどい?
それは なぁに?

「こんな・・・縛り付けて、自由を奪うなんて・・・!この子は道具じゃないわ!」

はじめてみる かお。
アタシを だきしめて ── あったかい。
すごく すごく ぬくぬく する。
すごく すごく ほんわり する。
ぎゅって されたの はじめて。
ぎゅって されるの きもちいい。

「あなた、名前は?」
「・・・・

かすれた こえ。
おしごとの ときしか しゃべらないから。
それでも めのまえの おんなのこは にっこり してくれた。

いつも おせわ してくれる ひととは ちがう。
ほんとうに ほんとうの にっこりの かお。

「そう。あたしは野ばらよ。雪小路野ばら。
安心して、あなたを絶対に自由にしてあげるから」

じゆう?
それは なぁに?

「大丈夫。あたしが傍にいるわ」

よく わかんない。
だけど おんなのこは いたかった てくびのぬのを はずしてくれる。

「行きましょう、外へ──!」

アタシの てを ひいてくれる。
ふすまの むこうへ。
いつも めかくしだから しらなかった ばしょへ。

いっきに あかるい ひかり。
ひんやりした くうき。
そらから おちてくる まっしろな なにか。

これが そと。

これが じゆう?

やっぱり よく わかんない。
けど よこを みたら おんなのこは にっこり してて。
そのかおは なんだか もっと みていたくて。
だから わかんないけど いいや。



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