鳥篭の夢

何気ないひと時



「気になっていたんだが・・・鎌太刀さんは普段、奴と何して過ごしてるんだ?」

ラウンジでぴこぴこゲームしてると唐突にちよちゃんに訊ねられた。それも凄く怪訝な顔で。
目線から察するに“奴”っていうのは久しぶりに戻ってきた蜻蛉の事を指してるんだろうけど・・。

「何?って、そもそも一緒に過ごす事が少ないけど」

放浪癖があるからすぐどっか行っちゃうし。
んー・・でもそうだなぁ。

「大抵は蜻蛉の部屋で好き勝手してるかなぁ。
アタシはよくゲームしてるし。あっちはあっちで本読んだりとか?」

よく膝の上に座らされたりはしてるけど、それ位?

「割とドライなんだな、君達は・・・」
「かなぁ?良く分かんないけど。
それよりもアタシはちよちゃんとミケ君のが如何過ごしてるのか気になる」
「ぼっ・・僕達か!?」
「いえす、あいどぅー」

高校生にしては超絶やる気ない英語で返せば、ちよちゃんは突然動揺し始めた。
あはは、てゆかそこで照れちゃうんだ。同じ事を先に訊いて来たのそっちなのに。
ちよちゃんは可愛いなぁ。よしよしと頭を撫でたら“撫でるな!”だって。残念。

「ぼ、僕と御狐神君は別に・・・。
そうだな、彼の運転でちょっと出かけたり、彼の部屋で過ごしたりしているだけだ」
「へぇー。じゃあアタシと大体同じだね」

面白くて思わず笑いが零れる。だって動揺しすぎだよ。明らかにコーヒー飲みすぎ。
きっとアタシと蜻蛉よりもべったりしてたり仲良しだったりしてるんだろうなぁとは思う。
ミケ君が離れないもんね、きっと。それ位なら想像できる。
ドライ・・・それはそうかもしれない。ただアタシはその空間が好きな訳だけど。

「そもそも付き合ってるからって生活変える必要もないと思うし」
「そうなのか。だけど僕は・・・その・・・・」

もごもごと口の中で言葉を転がす。多分、ちょっと恥ずかしい事を言いたいんだと思う。
出来るだけ傍にいたいとか。2人で何かしたいとか。
アタシにだってその感情が無い訳じゃない。これでも彼の事が好きだし、だから一緒の空間にいたいんだし。

「アタシは人への接し方があんまり分からないからそうなるのかも。
まぁ一緒にいられたら、それだけで楽しいんだけどさ」
「鎌太刀さん・・・」

ん?どうかしたかな?

「君は蜻蛉の事を大切に想ってるんだな。
そんな顔をするのを初めて見た」

ぽつり。まるで零れ落ちるような言葉。
えぇと・・・アタシどんな顔してたんだろう?流石にちょっと恥ずかしいぞ、うん。

「あら、も凛々蝶ちゃんも何してるのかしら~?」

弾んだ声で野ばらちゃんがこっちに来る。
野郎共の・・・それも苦手な蜻蛉の話をしてたなんて言ったら機嫌悪くなりそうだから、ちよちゃんと一度目配せ。

「別に。少々、鎌太刀さんと歓談していただけだが?」
「そう。と仲良しなのね、凛々蝶ちゃんは。
その輪の中にお姉さんも一緒に混ぜてくれると嬉しいわ」
「あははは。野ばらちゃんだって仲良しだよ」
「ふふ。嬉しい事言ってくれるわね、ったら」

よしよしと頭を撫でられて・・・あぁ、そっか。多分野ばらちゃんの影響だ。
誰かの頭を撫でたくなるのは。それは言葉にしない、大好きだと示す一つの動作だろうから。

「よー。何お前等集まってんのー?」

なんてレン君も集まってきて、あっという間にさっきの話題はお終い。
まぁでもコイバナなんてものはお互い苦手だし。
一応疑問は解消されたから良いのかな?ちらりと見ればちよちゃんと目が合った。

「今度はカルタちゃんも一緒に誘おうね」

きっと卍里君と如何過ごしてるのかとか、教えてくれる。
どう思ってるかとか彼女ならもっと素直に伝えてくれるだろうから。
そこまでは言わなかったけど、ちよちゃんは小さく頷いてくれた。



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