鳥篭の夢




カルタちゃんが病院に運ばれたって連絡を受けて、すぐに卍里君と残夏君と病院へ足を運んだ。
先祖返りが管理していてセキュリティも万全なこの病院は別段先祖返り達に偏見のない者ばかりを集めている。
詳しい事情を聞けば、発見した時点での出血量が多く、このままでは危ないらしい。

「すみません。これ、止血剤です使って下さい」

する事はひとつだった。変化するまでも無く、薬壷だけを出して医者に差し出す。

「先祖返りの持つ薬です。
治癒力も高められますし、このサイズですが決して底を突く事はありません」
「そうか。すまない」

ただ、消費すればする程、アタシの体力を削る事だけは伏せて。
今の言葉だけで全てを察してくれたらしい医者はそれを受け取ると手術室へと入っていく。
カルタちゃん・・・カルタちゃん、どうか無事でいて・・・っ!


「・・・は・・っ」

あれから数時間。どれだけの薬を使ってるんだろう?案外、キツイ。
でもカルタちゃんはそれ以上に痛かったし苦しい思いをしてる。
弱音を吐いてる場合じゃない。椅子に凭れて奥歯を強く噛み締める。
卍里君も残夏君も何も言わない。ううん、心配だからきっと・・。

!」
「あ、野ばらちゃん・・」

慌てて駆け寄ってくる野ばらちゃんに軽く手を振って応える。

「カルタちゃんは──」
「まだ手術室。出血量が多いから油断できないって。
アタシの薬も渡してみたけど・・・どうなるかは・・・・」

止血出来ても、それ以前に失血量が多ければ危ない。
アタシの薬は万能じゃない。ただ血を止めるだけ。血液は戻らないんだから。

「そう・・・。、大丈夫?ツライでしょう?」
「ううん、別に平気だよ」

カルタちゃんがどうにかなる方が怖い。だから大丈夫。
そこで漸く卍里君が不可思議そうな目線をアタシに向ける。

「鎌鼬の薬は鎌鼬の生命力から作られるんだよー、渡狸」
「・・・っ」

残夏君の言葉に、驚いたような顔。
だけど何も言わずに卍里君は俯いた。何だろう?悲しい顔。
ううん。それでも・・・どれだけ自分の生命力を用いても助けられなきゃ意味が無い。
後は医者任せになる。それは少しだけ悔しい。

「今は信じましょう。きっと、大丈夫だって・・・」
「・・・うん」

野ばらちゃんが手を握り締めてくれる。
それだけでもうちょっと頑張れそうな気になるから不思議。
そうだよね、信じなくちゃ・・だよね。
今は、今のアタシ達には信じて待つ事しか出来ないんだから。



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