鳥篭の夢

気が付けば



アタシはこれでも3年生な訳だけど、気付けば1年の皆と一緒にいる気がする。


「あ、卍里君。やっほー」
「おー。渡狸ー」
「あ。反ノ塚、

例えば、移動教室途中。
卍里君を見かけたから軽い挨拶をしたら一気に周囲が騒がしくなる。
はて?何か変な事でもしただろうか?
レン君と顔を合わせたけど分からなかったからお互いに首を捻った。

「てめぇら!俺は不良だってのに!!」

なんて叫び声が後ろに響いたけど、はてさて、何の事やらサッパリ。


他にもお昼の時間。
アタシは割と学校の給水タンク傍辺りでゲームしつつお昼ご飯する事が多い。
あそこなら屋上より更に一段上に上がってるから人目につかないし。
そこで1人ぼんやりするのが楽だし、この3年間の日常だった訳だけど・・・。

ちゃんの玉子焼き・・美味しい・・・」
「あ、そう?良かった」
「代わりに・・これ・・」
「ん、むぐ。あひはほー」

差し出された唐揚げを口に押し込まれる。
美味しいけど、流石に唐揚げは口に押し込む物じゃない気がするよ?

「ちよちゃんはお口に合う?」
「ああ、そうだな。決して悪くはない、とでも言っておこうか」

ふん、と毎度の上から目線で答えてから、そのまま地面に手を突いて落ち込む。
あははは。最初はビックリしたけど慣れたなぁ、それ。見てて可愛いよね。
卍里君はもぐもぐと食べ進めてくれて嬉しいです。代わりにその豪華な重箱弁当からオカズを貰う。

「皆でご飯・・美味しい、ね・・」
「そうだね。1人で食べるよりずっと美味しい」

カルタちゃんの言葉に自然と言葉が落ちる。
それだけでカルタちゃんが嬉しそうに笑ってくれて、何だか嬉しいなんて思ったりして。
レン君とも一緒にご飯食べる機会って行事の時位だったのに。
不思議。1年の皆と一緒にお昼ご飯してるって・・・なんだかとても不思議だ。


ちなみにそれだけじゃない。
放課後。ザッと妖怪の類が出ないかだけ怪しい場所チェックしてから帰る事が多いけど・・。

「まだ学校に残っているとは暇人だな。
もうじき御狐神君が迎えに来る時間なんだが一緒に如何かな?」
「ありがとう。でもミケ君とちよちゃんの邪魔しちゃ悪いから」

“大丈夫だよ”なんて丁重にお断りする。
ほら、2人のラブラブの邪魔しちゃうと怖いから。誰がって、勿論ミケ君が。
だけど意図を理解しきれてないからかちよちゃんは顔を真っ赤にしちゃう。

「じゃ、邪魔なんて・・!別にそんな事は・・・」
「あ、でも来るまでは一緒にいようかな。
今日は少し天気が悪いから万が一妖怪が出てきたら困るし」
「ふん。僕は別に戦えるから、いらないお世話だな」
「こらこら、ちよちゃん身体弱いんでしょ?無理しないの。
折角だからお姉さんの言う事聞いてくださいな」
「む・・・君は世話焼きだな。どうもありがとうございます」

最後のお礼はとても小さな声。本当に可愛いなぁ、ちよちゃんは。


思い返せば本当に一緒にいるなぁ、なんて思う。何でか遭遇率が高いんだよね。
勿論、レン君とはクラスが一緒だからいる事は多いけど。
そういう訳じゃないのに気付けば傍にいる。
不思議な縁、なのかな?これも。なんてそんな事はアタシには分からないけど。
そうだとしたら嬉しい。だって、今までにない位に日常が彩っているんだから。



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