鳥篭の夢

充実した休日を



「む。今日は誰もいないのか?」

ラウンジに着いて早々に蜻蛉が怪訝そうな声。
あ、そっか。

「ちよちゃん達は林間学校中だから。
後はミケ君が心配だからって残夏君とレン君が連れ出してる頃だと思うよ」

何時位から遊びに行くかは訊いてなかったけど。
野ばらちゃんは副業行くって言ってたし。
だから妖館は誰もいない。ラウンジに河住さん達がいたりする位かな。
言葉に“ほぅ”って意味有りげな返事。えぇと?

「ならば奴等が帰ってくるまで我が愛すべき家畜を可愛がるとしよう!!」
「へ?」

家畜・・・って、アタシ?

「ふははははは!よし、今から準備して行くぞ!!」
「今から?準備?え?え??」

何を?何が?唐突な展開過ぎて流れが良く分からない。
思いっきり手を掴まれるとそのまま半分引き摺られる勢いで連れてかれる。
というか車に拉致られる。

えぇっと・・・・えぇーっっと??



「・・・つ、疲れたぁ」
「この程度で根を上げるとは、まだまだだな!!」
「まだまだ・・?」

いやいや、だってもう夜だし。休憩は何だかんだあったけど慌しかったし。
蜻蛉って何処からそのモチベーションと体力が来るんだろう?テンション一定に高いし。不思議。
あぁ、でも1人であちこち旅行に行ってるんだし案外あるのかもしれない。

「あら、じゃない!遅かったのね。
・・・・・この男がを今まで散々連れ出してたのかしら?」
「野ばらちゃん・・・」

先にラウンジにいた野ばらちゃんが駆け寄ってきたかと思えば抱きしめてくれる。
温かいなぁ。ちょっと苦しいけど。後、蜻蛉を睨むのもちょっと・・。

「その通りだ、雌豚よ!
朝から今まで!その時間全てを私が蹂躙してやったぞ!ふははは!!」

蜻蛉もどうしてそんなにノリノリなんだろう・・・。
というか野ばらちゃんからかうの好きだよね。
と、また玄関が開いてミケ君達が帰ってくるのが見えた。

「あ。レン君達、今帰ってきたんだ?」
「おう。って、もしかしては今まで蜻蛉と2人だったのか?」
「・・・・うん、いっぱい遊んだ」
「ははは。遊んだって顔じゃないけどなー」
「もぅっ。カゲたんったらハードなんだから~☆」

いやもう、沢山遊んだ。
適当かつ高級そうなお店で服とか小物見繕わされて(ついでに店員さんにオモチャにされて)
そのままヘアメイクまで完璧にされて(服の時もそうだったけど何か店員さんが凄い喜んでた)
遊園地行ったり(即絶叫系乗ったからヘアメイク崩れたけど)
ドライブと称して温泉まで行ったり(日帰りだからお昼ご飯と温泉入るだけで)
カラオケ行ったり(此処は普通のチェーン店だった)
ちょっと・・いや、かなり高そうなレストランまで行った(特別そうな席だった)
一応割と近場ばっかり選んでくれてたみたいだったけど・・・ハードだったなぁ。

「楽しかっただろう?!」
「ん・・?うん、初体験ばっかりだったし。ありがとう蜻蛉」
「そこでお礼が出るんだからたんって良い子だよね~」
「ほんと、は良い子なんだから!」
「そうかな?」

そんなハンカチ片手に泣いたフリしなくて良いと思うよ、残夏君。
後、そこまで涙ぐましい話じゃないよ?野ばらちゃん。

「んじゃまー、俺は明日学校だからこの辺で」
「よし!ならば私がバトンタッチだ──」
「では僕も帰りますね。今日はお気遣いを」
「待て家畜よ!この私から逃げるのか!?」

ホント、めげないよね。蜻蛉って。
ああああ。首絞められてる。やばい音してる。大丈夫かな?これ。
何だか2人共変化してるし止めた方が良いとか?

も明日は学校でしょう?早く寝た方が良いんじゃない?」
「あ。そうだね、アタシもそろそろ部屋に戻ろうかなぁ」
「その方が良いわ。五月蝿いし、あたしも部屋に行こうかしら?」

あー、うん。五月蝿いのは五月蝿いかもね。

「えー?2人共戻っちゃうの~?
折角だから一緒にお酒飲もうよ~☆」
「お酒っ!!」
「いや」

思わず過剰反応してしまったアタシとは反対に野ばらちゃんは一刀両断。
そこで残夏君は“飲めないの~?意外~可愛い~”なんて言うもんだから・・・ありゃ、ラッパ飲み。大丈夫かな?
残夏君はニコニコ笑顔のままで今度はアタシを見る。

たんは勿論飲むんでしょ~☆
大丈夫、大丈夫!そんな変なの持ってきてないからさ~」
「うん!じゃあ少しだけ飲みたいな」
たんってお酒が絡むと良い顔するね~」
「へ?」

そう?あ、でもお酒は好きだから、それでかも。

あれから絡み酒な野ばらちゃんを見れたり。美味しいお酒を飲めたり。
ハードだったけど充実した1日だったのは確かかも。
部屋で引きこもってゲームする時間なんて全然無かったしね。
不思議な感じ。でもそれは決して嫌じゃなくて。

た~ん、此処で寝たら風邪引くよ~」

とても、ふわふわ心地良い。

「まぁ、起こしてやるな。残夏。
これでもあちこち連れ回したからな。疲れも溜まっているだろう」
「わぉ☆カゲたんったらそんなに連れ回してたの~?
たん女の子なんだから手加減してあげなっくちゃ~」
「ってぇー。それってつまりアンタの所為なんじゃないのー?」

優しい、空間で。

た~ん?ホントに寝ちゃったね~」
「ふふ、ったら・・寝顔も可愛いわー。めにあっく!」
「野ばらちゃんは完全に酔ってるね~☆」


それはとても幸せな日。



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