鳥篭の夢

淋しがり屋な彼



「おはよう、我が愛すべき家畜よ!今日は和食でもご馳走してやろう!!」

突飛な発言

「朝ぶりだな、我が肉便器よ!私自ら出迎えてやったぞ!!
さぁどこへなりと連れ回してくれる!!ふははは!」

神出鬼没で諦めが悪くて

「なんだなんだ~?今更私の恐ろしさにおののいたか??
しかし私のドS心を満足させるにはまだまだ甘いぞ!」

だけど──


「蜻蛉ってさ、諦めないよね。
アタシ今日は学校あるから無理だって言わなかった?」

あっという間に校門で拉致られて車に乗せられたけどさ。
アタシの記憶ではつい朝にでも言ったばかりだと思うんだけど。不思議だなぁ。

「だからわざわざ終業時間まで待ってやったのだ。
私の広く深い優しさに心から感謝するが良い!!」
「あ、うん。ありがとう」

確かに教室に押しかけられたりとかして、急に連れ回されたら困ったしね。
素直にお礼を言えば蜻蛉は楽しそうに笑う。そんな面白いこと言ってないと思うけど。
それから車から見える人達に対して相変わらずのSM判断する姿に苦笑。
何時もと変わらないハイテンション。だけど朝よりも確実に高いそれ。
膝の上にアタシを乗せて確実に固定して、その緩い束縛が心地良い。

「・・・・蜻蛉は本当に寂しがりだね。
まぁ、アタシも一緒にいるのは楽しいから良いけどさ」

ぽつり、呟いて・・・あれ?ノーリアクション??
珍しいそれに視線を向ければ、蜻蛉とバッチリ目が合った。えぇと?

「貴様の口からそのような言葉が出るとは驚きだな」
「そう?」

かな?そうなのかも。蜻蛉が言う位だから。
だけど顔を見る限りでは驚いてるというよりも嬉しそうだけど。

「何だ、気付いていないのか。流石我が愛すべきドMだな」

“まだまだ足らんらしい”と謎の言葉を囁いて、そのまま額にキスを落とす。
というか、そもそもアタシはドMじゃないと思うんだけどなぁ。
呼び名は何時もコロコロ変わる。割と放送禁止用語というか、ギリギリアウトというか。
健全な少年少女には確実に聞かせたくない単語だけども。



不意に名前を呼ばれる。その普段では聞けないような優しい声は反則だって思う。
何時ものハイテンションは何処へ?なんて・・妙にドキドキして変な事ばかり考えちゃうし。

「今日は特別に貴様の行きたい場所へ連れてってやろう。
何か希望はあるか?」

えぇと・・・そんな急に言われても思い浮かばない。
ぱくぱくとエサを待つ金魚のように口を動かしてから閉口すれば、蜻蛉はただ楽しそうに笑った。



inserted by FC2 system