鳥篭の夢

アルバム



「あら、このかわいい~っ」
「だろー?ホント、うちの子もこの時は天使みたいに可愛かったよなぁ・・・」
「レンレン。遠い目をするねー」
は今でも可愛いわよ、バカモメン」
「でも本当に可愛いね・・ちゃん」

などなどと各々に盛り上がってる訳だけど・・・。
アタシとしては盛り上がってる“物”が良くない。

「もー。レン君、何でアルバムなんて持ってきたかなぁ・・・」

写ってるのは今より若いレン君と小さなアタシばっかり。
多分、実家から送って来た奴だと思う。レン君とツーショットばかりだから。

「野ばらに言われて部屋を片付けてたら出てきたんだよ。
ほら、。これとか懐かしいだろ?」
「懐かしいけど、そうじゃなくて!」
「えー。何、反抗期?お父さん寂しいなぁー」
「お父さん違うでしょ!!」

一応、アタシには血縁的な父親いるってば!健在ですってば!!
確かに仕事が忙しいからレン君の方が一緒にいてくれてるし、お父さんみたいな事も一杯してくれてるけどさ。
体育祭の父兄参加競技とか、父兄参観とか、イベント毎にビデオカメラとかも回してたし。

「でもレンレンとたん、すっごい写真量だね~。
たんの赤ちゃんの頃から写真があるし、まるでホントの親子みたいだ」
「そりゃミルクやったりオムツ替えたりもした事もあるからなぁ」
のオムツ替えですって!?」

ガタン。思わず椅子から立ち上がって“ズルイわよ”って、野ばらちゃん、それ何かポイント違う。
それにしても何でもあるよね。
赤ちゃんの頃にお世話されてる所から、お花見、夏祭りの浴衣姿に、新年の着物姿に、ハロウィンとクリスマス。
季節イベントだけじゃなくて学校行事と日常のちょっとした写真まで。あり過ぎだよ。

「これ、可愛い」
「ん?あー、これ・・・」

カルタちゃんが指差した写真は、布に包まった鼬・・改め一反木綿と鎌鼬のお昼寝写真。
母さんがニヤニヤしながら撮ってたんだろうなぁって簡単に想像つく。

「ん?」

じぃっとアタシを見る視線。

「蜻蛉?どうかした??」

問えば、途端ににんまりと笑顔。

「いや?──幼い頃の写真を晒されるとは、まさに羞恥プレイ!!悦いぞ悦いぞー」
「そんな事考えてたの?」
「無論、それ以外あるまい」
「ふんぞり返るな!」

バカゲロウめ。

「えー。俺、そんなつもり無いんだけど」

の可愛さを見せようと思って”って、何その親ばか思考。
レン君この23年で脳内が老けてるよ。しかも間違った方向に。

「だが良い笑顔ではないか。円満なようだな?」

“今度の家庭は”なんて続きそうな言葉。えぇと?何、ちょっと心配してたとか?
いやでもあれは前が酷かったってだけだよ。多分。その前の記憶はアタシにはないけど。
それはちょっと嬉しいから思わず笑みが零れる。

「ありがと、心配してくれて」
「何、愛する者を案じるのは至極当然の行為だろう?」

って、えー・・・・。

「否定しないんだ」
「否定する要素がないからな」

てゆか、そんなハッキリ真正面から言われると恥ずかしい。
写真に夢中になってる野ばらちゃん達を眺めながら顔を両手で隠す。
それに何を言うでもなく蜻蛉はにんまりと笑って見せた。



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