淋しさも不安も
「今回は蜻たん長いねー。
たん、放っとかれて淋しくない~?」
ラウンジでゲームをしてたら隣に座っていた残夏君が唐突に尋ねてきた。
んー、淋しい・・・かぁ。どうだろう?
学校だ、勉強だ、ゲームだって何かしらやる事あるし。
稀に無い時があっても、皆が構ってくれてるからなぁ。
「別に大丈夫」
「えー、本当に?だってあんまり連絡来てないんでしょ~?」
「うん。でも野ばらちゃんや皆もいるし、蜻蛉がいないのは何時もの事だし」
「たん強ーい☆」
「あはは、違うよ。
まぁ理由はよくわかんないんだけどさ」
傍にいないと嫌、連絡がないと不安、なんて程の淋しさはアタシにはまだ分からない。
確かに野ばらちゃんがSSで会えなくなった時は穴が空いたような淋しさはあったけどね。
でも今は正直そこまででもないしなぁ。
野ばらちゃんもそうだけど、傍にいたいとは思うんだ。一緒にいるのは幸せな事。
でも、いて欲しいとは思わない。求める事は難しい。とても・・・。
「大丈夫だよ~。
そんな顔しなくても、たんは色んな想いを知る事が出来てるからさ☆」
「残夏君・・・」
「それに~、淋しくないならそっちの方が良いしね。
まぁ代わりにはならないけどボクとでも遊──」
「何あたしのを誘い出そうとしてるのかしら?夏目」
突如と現れた野ばらちゃんの冷ややかな言葉。
更に酷く冷たい目線を向ければ残夏君は口を三日月のように形作って笑った。
「いやいや、そんなつもりはあったけどそういう意味じゃないってば~☆」
「そんなつもりだったんじゃないっ!
、それよりもあたしと遊びましょう?」
「それは嬉しいけど・・・そろそろレン君がバイト終わるんじゃないの?」
珍しく“今日は迎えに来てくれ”って言われてなかった?
そう続ければ野ばらちゃんは思い出したと言わんばかりに一瞬フリーズした。
「あのモメン・・後でレッドカーペットに染めてやろうかしら?」
「野ばらちゃん、護衛対象を血染めにしちゃダメだよ」
「わぉ、野ばらちゃんおっかな~い☆」
「あんたもそのウサミミ引き裂いてあげるわよ。今すぐに」
「ん~。いやぁ、それはちょっと勘弁かな~」
あははと渇いた笑い。それに私も思わず苦笑した。
「ふはははは!!久しぶりだな、我が家畜共よ!
私は今戻ったぞー!!」
──バタン...ッ
唐突にラウンジの扉が開いて、もう随分と聞き慣れた声が響く。
じわりと温かい何かが広がっていく感覚。何でだろう?不思議と笑みが零れた。
対照的に野ばらちゃんの眉根には皺。あぁ、美人が勿体ない。
なんて眺めていれば、野ばらちゃんの視線がアタシに向いた。さっきとは全然違う優しい笑顔。
「じゃあ残念だけど、あたしはモメンを迎えに行ってくるわ」
「ぁ・・うん、いってらっしゃい」
「何かあったらすぐにあたしに連絡するのよ、絶対に」
「ありがとう」
抱きしめられて、頭を撫でて貰って、そうして名残惜しげに野ばらちゃんは行ってしまった。
後ろ姿を見送ってから、残夏君と仲良く挨拶を交わす蜻蛉へと視線を向ける。
「おかえりなさい、蜻蛉」
「ああ、少々遅くなったな。。
しかし土産は買ってきたぞ!後で楽しみにしていろ!!」
「うん、ありがと」
律儀に皆にお土産を買ってくる辺りはマメだよね。チョイスはともかく。
まぁアタシやカルタちゃんはお菓子とかが多いけどさ。
でも何時もと何ら変わりない姿に何だかホッとする。帰ってきてくれたのは嬉しい。
あぁ、分かった。淋しくならない理由。
蜻蛉は絶対帰ってきてくれる。
その確信があるから淋しいと思わないし不安にもならない。
ずっと平気で蜻蛉を待っていられるんだ。