鳥篭の夢

Epilogue/見果てぬ未来へ



あれからディースさんとミリア様は此処に残ると言って、私達は古の都の外までディースさんの力で送ってもらった。
別れる直前に、私を信じてくれた事に礼を言えば“大切な我が子の事だから”と言ってくれて・・。
何て言うのかな?まるで本当にもう1人母様が増えたみたいに心が温かくなるみたいだった。
本当は優しい女神様。
ただ本当に少しだけ過保護になりすぎて間違えてしまった。
犯した事の規模は大きいけど・・・でも───


「・・・しかし長かった。
これで漸く終わり・・いや、始まり・・・か」
「そうですね。ミリア様はただ世界を見守られるだけなので今度は私達で頑張らないと・・!!
あ、ガーランドさんはもうちょっと私達と一緒にいられるんですよね?」
「ふむ、そうだな。
神から新たな命を・・リュウとティーポを任されたし、な」
「良かった」

緩く瞳を細めて笑うような表情。それに私も安心して同じように笑顔になった。
だってガーランドさん、ミリア様に会うまでずっと深く考え込んでるみたいで・・・。
何だかいなくなるような気がして不安だったから。
だから一緒にいてくれるって聞いて少し安心。
やっぱり皆と一緒にいられるのは嬉しい。

「ぷきゅ?」

不思議そうなペコロスに“何でもないよ”って一言。
それにしても・・・

「ペコロス、もう喋らないの?」
「・・・・ぷぃ?」

“え?喋るって?”て言いたそうな顔をされた。でも、それで良いのかもしれない。
あれはペコロスに残っていた賢樹の“知”が力を貸してくれただけなのかも。
まぁそれにしては凄く格好良かったけど。
ペコロスが本当は賢樹なのか、それとも変異体なのかは分からない。
だけどペコロスはペコロスだから・・・ね?
しゃがんで一度頭を撫でれば“ぺふー”なんて気持ち良さそうな声を出す。


「・・・俺、世界が“こう”だって忘れてた」

ポツリとティーポが呟いた。
長い間ミリア様の作ったエデンで暮らしていたから、すっかり忘れていた・・・と。

立ち上がって見渡せば、こっちの世界は相変わらず。どこまでも砂漠が広がる大地。
黄金の砂が照り付ける陽光の熱を吸収し私達に暑さを伝え、その下に埋もれた鈍色の機械は風に吹かれ時折顔を覗かせる。
鳥や獣・・・樹木等の生命を感じる事の出来ない土地。
“淋しい”───と、そう思わずにはいられない世界。

「ずっと守られてきたんだよな、俺は・・」
「うん。だから今度は“守れる”ようになったら良いんじゃない?」
「・・・ぇ?」

驚いたような顔。
あれ?今、私変な事言った?

「だって竜族は力があるんでしょう?
きっとミリア様だって守れるようになるんじゃないかな?」
「・・・そんなの、考えた事も無かった。
ミリア様は俺を守ってくれて・・世界を守るお方で・・・」

だから誰かがミリア様を守るなんて思いもしなかったと、ティーポは言った。

「まぁ、如何するかはティーポ次第だけど。
でも破滅の道を歩まなければ・・それがある意味“ミリア様を守る”って事なのかも」
「そうなるのかな?」
「多分ね。だけど、それだってティーポ達なら大丈夫でしょう?」

破滅の道を歩んだりしない。
世界を破壊しようとなんてしない。
道を、間違えたりしない。
私はずっとそう信じてる。今までも、勿論これからも・・・。

一度ティーポに微笑んで見せて、それから私は大きく伸びをした。
やっぱり外の方が空気が心地良い。
背の翼まで大きく広げて伸ばせばティーポがソレをじっと見る。
・・・ん?どうかしたのかな?


さんっ。この先の建物でポート見つけましたよ!!」
「え、本当?」
「ほら、ティーポも早く!」
「あ・・うん!」

口を開く前にニーナが走り寄ってきて私とティーポの腕を取って走り出す。
その先にレイもモモもリュウ達も待っててくれて、合流すればレイがからかうようにティーポの頭を撫でた。
漸く弟と再会出来て嬉しいのはレイも同じ。勿論、リュウだって最高の笑顔で・・・。

「でも、ポートが此処にあるお陰で移動が楽になるわー」
「モモ・・機械を調べるのに使う気でしょ?」
「勿論よ~!!この機械の山っ!掘り起こしてでも色々調べてやるんだからー!」
「学者さん、程ほどにしとかねぇと倒れんぞ?」
「失礼ね~!やニーナじゃないんだから平気よ~」
「ちょっとモモ・・・」
「今のはモモさんの方が失礼だと思うけど」
「あはは・・・」


これから世界がどうなるのかは分からない。
ただ滅びの道を歩まない事だけしか・・・。
それでも何とかなる気がする。
なんて。楽観視してしまうのは、リュウ達が・・皆がいるから。



「さて───帰ろうか!」



だから私達は、どんな世界だとしてもきっと歩いていける。



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