鳥篭の夢

Story/意外な効果:後



「・・・ま、最低今日1日はこのままって事か」
「多分そうだと思う」

レイの言葉にぐったりと頷く。
ベッドに腰掛けていても足が床に着かずにふらふらした。

「全く、愉快だねぇ。学者さんが余計な事するから・・」
「わっ・・私は悪気があった訳じゃないものー!
知らなかったんだから仕方ないでしょーう?」
「それで終わんねぇから言ってんだろっ!?」

珍しく声を荒げて、ビクリと怯えるモモにふと我に返ったレイは、バツが悪そうに頭を掻いて部屋から出ていった。
ソレを見送って1つため息。うーん、心配してくれてるのは分かるんだけどなぁ。

「私だって・・・・悪いと思ってるものー・・・」

消えた扉に向かってモモが所在無さ気に言葉を漏らす。それも分かってる。
だけど如何言って良いのか分からなくて、ついあんな風に言ってしまっただけ。
レイが喧嘩腰なのも悪いしね。
よしよしって頭を撫で・・・れなくて、一生懸命腕を伸ばして頬の辺りを撫でる。
・・モモって意外と大きい。

「大丈夫だよ、モモ。
レイはあんな風にしか言えないだけだから・・ね?」
「ありがとうー・・・ごめんなさい、
「うん。元に戻らない訳じゃ無さそうだし・・大丈夫よ」

ニッコリと笑みを見せれば、モモも漸く笑みを見せた。
うんうん、そっちのモモの方が良いよね。
あんまりしょ気てばかりのモモなんて、らしくない。
あ、反省して無いのはちょっと困るけど・・・・。

「でも姉ちゃん、如何するの?」
「そうだなぁ・・身体にダルさも残ってるし、今日は大人しく宿屋にいようかな?」
「あ!じゃあ、調べさせてー!」
「ごめん、それは嫌」
「えー!!」

“折角の機会なのにー!”なんて残念がるモモに苦笑。
流石モモというか・・・でもこれ以上変になっても困るし。
お断りさせていただきマス。

「あの・・さん」
「ん?」
「翼に触ってみても良いですか?」
「・・・?うん」

まじまじと見つめる瞳は私の背に注がれてる。
そんなに面白いものかな?そりゃあ子供に戻ったから翼も小さくなったけど・・。
ニーナはそっと私の翼に触れてその感触を確かめて笑みを浮かべた。

さんって小さい頃でも翼大きかったんですねぇ。
比率的には今の私と同じ位・・・?」
「うんー・・まぁ、それ位だろうね?」
「あーでも、ふわふわっ!柔らかくて気持ち良いー」

そりゃあまだ和毛だから。
ちゃんと飛べる翼じゃない分、羽はふわふわとしている。

「・・・姉ちゃん、俺も触ってみて良い?」
「い、良いけど・・・」

大人気だなぁ、私の羽。触られる感触が1つ増える。
“わぁ”って感動するようなため息に、何が良かったのか逆に疑問が・・・。
でも・・あんまり触られてるとそれはそれでちょっとくすぐったいって言うか変な感じ。

「ほら!そんなに羽で遊んでないで、外にでも行ってらっしゃい!」
「「えー・・」」
「えーじゃないってば!!」

仲良く一緒に声を上げた二人にそう言って、ささっと離れてガーランドさんの影に隠れる。
うーん・・普段から大きいって思ってたけど今はもっとそう感じるかも。凄いなぁ・・。
その私の仕草が変だったのかニーナとリュウは小さく笑って“じゃあ行ってくるね”って・・・うん、行ってらっしゃい。
見送った後、扉の向こうで“翼がパタパタって動いてた、可愛い!”って声が・・・あぁ、なるほど。それで笑ってたのね。
でも勝手に動くんだから仕方が無い・・小さい頃の翼って本当にただの飾りだもんなぁ。

「大変そうだな、
「いえいえ。暫くの我慢だと思えば如何って事無いです」
「うーん・・早ければ今日中には戻ると思うんだけどー・・」
「ありがとう。そうである事を祈ってるね」

それにモモも一度頷いて、それから私は部屋を出た。

さて・・レイは何処かな?さっきあんな風に出て行っちゃったし、やっぱり気になる。
でも子供の歩幅って狭いんだなぁってしみじみ思う。
歩いても歩いても進まない・・・・と、ベランダにレイがいるのを発見した。

「レイ?」
「・・・・・か」

チラリと私を見てまた外に視線を戻す。
その隣に並んでレイを見上げ・・・うわぁ、大きいなぁ。

「ねぇ、まだ怒ってる?」
「そういう訳じゃねぇけど・・」

乱暴に頭を掻くレイ。何となく気まずいだけ・・って所かな。

「別にモモには悪気があった訳じゃないし・・私も最初に詳しく訊かなかったのも悪いんだから」
「んな事言うと、また学者さんが付け上がるぜ?」
「あっはは、じゃあ本人には黙っておこうかな」
「そうしとけ」

思わずお互いに笑った。確かにモモは立ち直り早いもんね。

「しっかし・・・初めて会った時が、そん位だったか?」
「うーん、多分。もう流石にどんな背丈だったかなんて覚えてないよ」
「・・・だな」
「でも、そうだったかも・・ね?」

くすくすって笑えば、レイの瞳が緩く細まる。

「何か調子狂うな。その姿だと・・」
「そう?でも大丈夫、きっとスグに戻るよ」
「・・んな自信、どっから来るんだか」

苦笑しながら私と目線を合わせるようにしゃがんで、そっと頬に手を触れた。
綺麗な青い瞳が私を捕らえて、それで・・・・・・うん、でもこれだけ見た人は幼女趣味だって間違えると思うんだ?
雰囲気ぶち壊しは嫌だからあえて何も言わないけど、唇が離れてから思わず笑ってしまった。

その翌日、目が覚めると何事も無かったかのように私の身体は元に戻っていた。
・・・・多分精油の成分が切れたんだよね。
ニーナには残念がられたけど正直ホッとした。
だってほら私は姉ちゃんだし、小さいのはちょっと・・・ね?



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