鳥篭の夢

姉妹/02



食事も無事に終わり、自由に城の中を見てもいいって事になったんだけど・・・。
別段何もする事もないし、何だか手持ち無沙汰のまま私は1人で城内を歩いていた。
レイはティーポとリュウと何処かに行っちゃったみたいで、気付いたら私1人でちょっと仲間外れ気分・・・・まぁ、それはともかく。
泥棒さんしてないと良いんだけど、なんて小さな不安が胸中を過ぎる。
んー・・・流石にしないよね?もう。

見渡せば幼い頃と何も変わらない見知ったままの城の姿。
昔は良く走り回って皆を困らせてたっけ。そんな事を考える。
昔を懐かしんだって戻る事は出来ないって分かってるのに、ついつい想いを巡らせてしまうから不思議。


「あら、様」
「ぁ・・セシル」

不意に声をかけられて、見てみればそこにはセシルの姿。
どうやら仕事が一段落ついたみたいで嬉しそうな顔をして傍に駆け寄ってきてくれた。

「さっきセシルが椅子を引いてくれたの・・ビックリしちゃった」
「ふふ。普段は調理のお手伝いをしているので、あまりそういった事はしないんですけどね。
でもニーナ様がお戻りになられたと聞いたのでそれなら様もいらっしゃると思って。
それでちょっと無理を言って代わってもらったんです」
「そうだったの。でも元気そうで本当に良かった」
「私も様のお元気そうなお顔を拝見できて安心しましたわ」

そんな事を喋りながらお互いに微笑んだ。
あの時は少しだけしかいられなかったし、もう会えると思っていなかったからこうしていられるのは純粋に嬉しいと思う。
最近のお城の事とか、面白かった出来事とか、そんなのを聞いていると酷く懐かしい気分になって・・・。
私の記憶のままの部分と全く変わってしまっている部分。
それはそれだけの月日が経ったんだと嫌でも実感させられた。

なんだろう?少しだけ、寂しい・・っていうのかな?
仕方が無い事だって分かるのにどうしようもない感情が胸中を巡っていくのが分かった。

「それで、様」
「ん?何??」

少しだけ真剣な表情になったセシルに首を傾げて見せれば、セシルは少しだけ辺りを見渡してからそっと近づく。
まるで内緒話をするように、だけど少しだけ興味の視線を私に向けて、こそりと耳打ち。

「あれからニーナ様とずっと共にいられたのでしょう?
様とのご関係・・・もしかして打ち明けられたのですか?」

それに私は言葉を返すでもなくゆっくりと首を横に振った。

「最初から言うつもりなんてないよ。混乱させるだけだから」
「でもニーナ様、とてもお喜びになると思いますよ。
先程感じたのですが様に対してとても信頼を寄せているように見えましたし・・。
だからこそもしかして打ち明けられたのでは、と思ったのですけど」
「あはは、残念だけど・・。
それに信頼されているなら尚更打ち明けられないかな。
その信頼すらも失うのは流石にちょっと怖いから」
様・・・」

セシルの表情が翳る。
寂しそうに、少しだけ首を横に振ってくれて・・そんな事無いって示してくれる。
ありがとう。うん、それだけで私は救われるんだよ、セシル。

「それでも、ニーナ様と様は折角2人きりの御姉妹ですのに・・・」
「ありがとう。でも良いんだよ、セシル」


さん・・?」

背後から聞こえた、まるで困惑するような声。旅をしている間中聞いていたその声。
正体は分かってる・・・・ニーナだって。見れば綺麗な青い瞳が私を捉えていて。
あぁ、ダメ。その口をどうか開かないで、とただ願う。
それが無意味だと分かっているのに───


さんが、わたしの・・・お姉様?」


唯、目の前が恐怖で真っ暗になる感覚。
如何しよう?如何したら良いのか思考が巡らない。



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