鳥篭の夢

If/01



不意に目が覚めた。
砂の感触とジリジリと降り注ぐ陽光がツライ。

「・・・・ぃっ・・」

身体を打ち付けたのか身体に鈍い痛み。
見渡せば何だか荒廃した村・・・?あぁ、雰囲気は少し最果ての地に似てるのかもしれない。
でも如何して私はこんな所にいるんだっけ?
えっと・・確かシーダの森に珍しくモモが遊びに来て、新しい機械を開発したって言ってて。
そうそう。それでその機械を見せて貰って、それが怪しい煙を出して、そしたらリュウが“危ない”って──

「って、モモが原因じゃない!──モモ!?」

辺りを見渡すけどモモの姿は無い。
ていうか・・・もしかして私しかいないんじゃない?
レイとリュウは?ティーポは??

「いない・・・ん、だよね?はぁー・・・」

深くため息。折角皆で帰って来れたのにそれはあんまりだよ・・・。
此処にいるのは私だけかな?3人は一緒にいるのかな?
これから如何しよう?
いや、まぁモモを見つけなきゃいけないんだけど。
何処にいるかも分からないし、まず此処が何処かも分からない。


「ねえちゃーん!!」

遠くで聞き覚えのある声が響いたと思えば直後にドンって思いっきりぶつかってくる感覚。
・・・・いったぁーぃっ!!?
誰?って思って視線を向ければ・・・・・・あれ、ティーポ?何だかちっちゃくなってない?

「ど、どうしよう、姉ちゃん!!
オレ、縮んじゃった!!」
「・・・・えーっと・・・とりあえず落ち着いて?ティーポ」
「う、うんっ!!」

何度も頷くけど、落ち着いたようには見えない。
見えないけど・・私も落ち着けてない。だってティーポが小さくなってるんだよ?
一体何があったらこんな事になるのか・・・モモの機械の所為?
でも私は別段何も変わって無いように思えるんだけど・・・。

「ティーポ、私は何時も通りだよね?」
「え?うん」
「じゃあティーポだけに何かあったって事・・・か」

悩む・・って言っても悩んだって何も分からないし解決方法だって見つからないんだけど。

「あ、でもティーポがいるって事はリュウ達もいるのかな?」
「どうだろ・・・オレはまだ見て無いよ?」
「私も起きたら1人だったし、もしかしたらいるかも。
探してみましょう?」
「そうだよな!リュウも兄ちゃんも1人にしたら心配だし」
「あはは、そうだね!」

まるで子供の頃に戻ったような口調。
まぁティーポもリュウも元々あんまり口調は変わってなかったけど、少しだけ幼い気もする言動。
それに笑って、服の埃を払って歩き出した。
荒廃した村って感じで、人の気配も無いし人影も見つからない。


「あ!兄ちゃん、姉ちゃんとティーポだよ!!」

また遠くから響く声・・言葉から多分リュウだと思うけど、何だか声が高い。
もしかして・・・って思って、ティーポと一度顔を見合わせる。
駆け寄ってくる青い髪の男の子は、予想通り小さい頃のリュウの姿。
足元にかけよってきて涙目で私の顔を見上げてきた。

「リュウも小さくなっちゃったの?」
「え?“も”って事は・・・・」

リュウは不思議そうにティーポへと視線を向けて、2人で顔を見合わせて・・・

「ティーポも!?」
「リュウもかよ!!」

「・・・愉快だねぇ」

重なる声。それから困ったような呆れたような声と共にレイが頭を掻きながらこっちに来た。
レイは変わって無い・・・か。
リュウとティーポだけ小さくなってる事に何か意味があるのかな?
でも何にせよ無事に合流出来てよかった。

「ティーポ、。ケガとかしてねぇな?」
「うん、そっちも無事みたいで良かった。
レイはリュウと一緒にいたの?」
「つってもちょっと前に見つけたんだけどな。
リュウがビービー泣いてっから・・」
「に、兄ちゃん!!」

恥かしそうに顔を真っ赤にしてリュウがレイを呼んだ。
それにレイもティーポも笑う。

「へへー、やっぱりリュウは泣き虫だな!」
「う~・・・」

恥かしそうだけど、それでも泣いた事は本当だからか反論できないって顔。
それに私も笑ったら真っ赤なままの顔を俯かせてしまった。

「──で、学者さんはどうしたんだ?」
「うーん・・それがいないんだよね。
ティーポと見て回ったんだけど私達以外は誰も見つからないし・・」
「って事はオレ達帰れないのかな?」
「えー!!そんなのヤだよ!
モモさんどこ行っちゃったんだろう?」

言葉からも原因がモモの機械にあるって皆理解してるみたいだった。
いや、多分間違い無いんだろうけど・・。
とにかく、それから皆でもう一度探したけどモモの姿は見つからない。
モモの事だから“面白そう”っていう理由だけであっちこっち歩いていなくなってそうな気がするから怖い。
それならまだマシだけど、もしもこっちに来たのが私達4人だけだったら・・・?
あぁ、どんどん思考が泥沼化していく気がする。

「──もう日が暮れるな。
今日は一旦休んで如何するかは明日考えるとするか」
「うん、そうだね。それが良さそう」

レイの提案に頷いて、キャンプをする事にして・・・それでもずっと頭の中はぐちゃぐちゃだった。
まず、此処が何処かが分からない。
あの時・・神様に会う旅をしていた時に世界中を回ってた気になってたけど、それが自分の慢心だったんだって気付かされた。
そうでもなきゃここら辺の土地にだって少なからず見覚えくらいはある筈だし。
・・それが無いって事は、つまりそういう事なんだと思う。

差し当たりするべき事は、此処が何処かの把握とモモが近くにいるかどうかっていう情報収集かな?
早く見つかれば良いんだけど・・・変な好奇心とかで事件に巻き込まれて無いと良いなぁ。
それにリュウとティーポが如何して小さくなっちゃったのか、此処にいる事と関係があるのかも考えておいた方が良いかも。
まぁ考えるにしてもまだまだ情報が足りなさ過ぎてどうにもならないんだけどね。
・・あーぁ、どうなるんだろう?これから。



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