鳥篭の夢

If/02



アレから数日。
結局モモはまだ見つからなくて、私達はあの荒廃した村を拠点にしながら情報収集をして回っていた。
レイとティーポが何処からか持ってきた・・本人達は“仕入れてきた”って言ってたけど、その道具を売りながら情報も探してくれている。
こんなトコ誰も来ないんじゃない?って聞いてみたらそうでも無いみたい。
仕入れの時にも探してくれてるみたいだし。

後、少しだけ困ったのはリュウもティーポも竜族としての力が上手く使えなくなった事・・かな。
全然使えない訳じゃないけど、アンフィニみたいな強い力は制御できないと思うって言ってた。
今出来るのは少し弱い竜変身だけ。

救いなのは私とレイがそのままの状態って事。
力もディースさんに解放して貰ってるからモンスターも何とか倒せるし。
リュウとティーポが不機嫌そうにしてたけど・・・ま、小さい頃がそうだったんだから少しは守られててね?って事で。
今はリュウと一緒に食糧探し中。
でもここら辺ってあんまりソレらしい物って無いんだよね。近くの村に行った方が早いかも・・・。


「──ゃ!!」

不意に遠くで悲鳴が聞こえた気がした。
レイでもティーポでもない女の子の声?
リュウへ視線を落とせば、私と同じ方を向いてたから多分間違い無いと思う。
急いで駆けつけてみれば野馳族の少女と長い犬の人・・?
壁際に追い詰められた2人を囲むように枯木のモンスターが数体。

「とにかく助けなくちゃ!」
「で、でも姉ちゃん。
兄ちゃんはずっと向こうの方だよ?」

リュウの不安そうな声。
恐怖じゃなくて、今の自分じゃあアイツらを倒せないって分かってるからこその言葉。
でもそんな呼びに行ってたら遅くなるかもしれない・・・うーん、仕方ない。“アレ”を使うか。

「リュウ、下がってて?姉ちゃん本気でいくから」
「え!?でもその力って・・・!!」
「大丈夫。少しだけだから、ね?」
「う・・うん・・・」

そっと頭を撫でて言い聞かせれば渋々とリュウは頷いた。
ソレを確認してから意識を集中させる。
私の最大の攻撃方法。
自分の中に内包する魔力を一気に鳥の形へと具現化させる。
力の解放。気分の高揚と恐怖。何時以来かの理性を熔かす感覚。
戻れなくなる可能性の方が高いから、やっぱり怖くて鳥になる事は出来ない。
ある程度鳥の形が出来上がったら大きく飛び上がり、一気にモンスターへと放出する。

『『『『『『──・・・・・・・・っ!?!??!』』』』』』

声にならない悲鳴を上げて、枯木の形状をしたモンスターは消滅していった。
元の姿に戻れば身体に酷い疲労感を感じて・・・うーん、やっぱり負担が大きいみたい。

「姉ちゃん、平気??!」
「うん。大丈夫だよ」

駆け寄るリュウに一度笑ってから眼前の2人へと視線を向ける。
一歩前に出ようとした野馳族の少女を長い犬?の人が制した。
少しだけ警戒するみたいな視線。
殺気はないけど・・だからこそこの人が実力のある人だという事が分かった。

「・・・・・・ひ、1人は・・危ない」
「サイアス、大丈夫だってば!
それにこの人達は助けてくれたでしょ?」
「・・・・」

少女をそっと引き寄せる縦長い犬・・もとい、サイアスと呼ばれたその人もタイプは違うけどたぶん野馳族だと思う。
引き寄せる腕を無理やり引っぺがして、少女は一度拗ねてみせてから私達に視線を向けて微笑んだ。

「ありがとう!おかげで助かっちゃった!」
「いえ。それよりも無事で良かったです」
「それで、あの・・どうも仲間とはぐれちゃって──あっ!!」

不意に少女は視線を外してレイのお店がある方へと視線を向ける。
何人かの人影が見えて・・あぁ、あれが仲間なのかな?

「見つけたっ!サイアス行こう?
・・・あ、えと。ごめんねっ!本当にありがと!!」

一度私に礼をして少女は走り出してしまった。
サイアスさんも同じようにお辞儀をしてその後を追いかける。
リュウと一度顔を見合わせて苦笑。
何だか凄いバタバタした慌しい人だったなぁ・・なんて。


「リュウー、ニーナっ!!
皆、待ってってばー!!」

「え?」
「リュウと・・ニーナ?」

少女の仲間に向けて叫ぶ声に目を丸くする。
リュウにニーナって・・・まさかニーナは今ウインディアにいるだろうし。
でも、同じ名前にしても凄い偶然じゃない?
それからリュウと“とにかく行ってみよう”って事になった。
あっちにはレイとティーポがお店してるし、獲物もいないから一度戻って別の狩場探しをしようと思ったのもある。
勿論あの少女の仲間が気になったって言うのもね・・・?



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