鳥篭の夢

If/04



それからリュウさん達に“ヒュール”という方法でウインディアまで連れて行ってもらった。
一瞬で別の街へ行く術。
多分、私達の世界にあるポートと同じような物だと思う。
ウインディア城下町をザッと見渡せば、私達の世界とは街並みが違っていて・・。
信じ難いけど此処が別の世界だって認めざるを得なかった。

ちらり。モモのいる場所へ先導してくれる、ピンク色の翼の少女へと視線を向ける。
同じニーナという名前、同じ第二王女。
流石にお姉さんは黒い翼じゃないけど・・・でも余りの偶然に驚いた。
変な縁・・だよね、これも。

「でも、無事に帰れそうで良かったね!
兄ちゃん、姉ちゃん!!」
「そうだな。ったく、あの学者さんは毎度毎度・・・」
「あはは、モモには別段悪気がある訳じゃないんけどね」

“無いから性質が悪いんだ”ってレイが視線だけを向けた。それは間違いないけどね。
でもモモのお陰で何とかなった事もあるし、あのマイペースと前向きさに助けられた事もあるから文句は言えない。


「えっと、モモさんのおうちは此処です」

ニーナさんが家の扉を開けて、その先にはいかにもモモが好きそうな機械が散らばっていて・・。

「あらー、皆どうしたの?何かあったー??」
「あ、モモさん!
いえ、そうじゃなくってですね。この人達が・・・」

聞き覚えのある間延びした声。
顔を上げて見てみれば変わらないモモの不思議そうな顔。
それからその視線が私達を捉えて、驚いたように目を瞠った。

にレイじゃない!久しぶりねぇー!!」
「ひさ・・・う、うん。モモも元気そうで良かった」

久しぶりなんて、そんな言葉が飛び出すのはモモならではだよね・・本当に。

「もぉ、急にいなくなるからビックリしたのよー?」
「ビックリしたのはオレ達もだよ!」
「そうだよ。気付いたら変なトコにいるし、モモさんだけいないし・・」

ノンビリとした様子のモモにティーポとリュウが声を上げる。
レイは呆れて何も言えなくなってる状態。
だけどモモは不思議そうにリュウとティーポに視線を向けて首を傾げた。

「あらー?リュウ、どうして小さいの?
それにこの紫の髪の子って・・えーっと・・・」
「ティーポっ!!」
「あぁ、そうそう!ティーポも久しぶりねぇ。
それで、2人ともどうしちゃったのー?」
「そりゃあこっちが聞きたい話だな。
こっちに来た途端にこうなってたんだ」
「レイとは変わらないのにー?」
「モモも変わってるようには見えないし、もしかしたら竜族に何かがあるのかも?」

私達と2人との差って言うのは強大な力を持った竜族か否かって事位だしね?
性別だってレイがいるから関係ない。
と、全身鎧の人が楽しそうに笑い声を上げる。

「“不完全な召喚みたいなもので力を封印させる1つの方法じゃないか”ってディース様が言ってますねー。
ディース様が言うのですからきっとそうなのですよ。うふふー」
「封印した結果・・かぁ。
まぁ、これはこれで可愛いから良いんだけど」
「「姉ちゃんっ!!」」
「あはは、冗談だってば」

“冗談に聞こえない”なんてそんな心外ですよ?
一応半分は冗談のつもりだったんだけど、それはともかく・・・。

「此処で封印されてるって事は元の世界に帰れば姿も元通りになるんだよね?きっと・・」
「元の世界ー?何それー??」
「モモ、ずっとウインディアにいたのに気付かなかったの?
何時もの城下町とは違ってたでしょう?」
「あー・・そういえばそうねぇ。
良く考えれば翼を持った人も多かったようなー・・・?」
「・・・・愉快だねぇ、アレだけ違うってのに全く気付かなかったってのか?」
「う、うるさいわねーっ!!
私だって少しは変だなーとは思ってたのよ!?」

顔を真っ赤にして反論するけど・・多分、本当に“少し変だなー”程度にしか気にしてなかったんだろうな。
まぁ研究対象以外には興味が薄いのは何時もの事だけど・・・・でも元気そうで良かった。
変な事にも巻き込まれて無いみたいだし。
さて・・後は帰る方法なんだけど・・・・

「モモ、戻る方法って分からないかな?」
「うーん・・そうねぇ。
此処が違う世界だっていうならー、多分この機械を使えば帰れると思うんだけどー・・」

言って取り出したのは、私達のトコに持ってきたのと同じ機械。
あぁモモと一緒にあったんだ・・・ソレ。
ポムリとニーナさんが手を叩いて柔らかく微笑んだ。

「でも帰れそうで良かったですね、さん!」
「えぇ。ありがとうございます、ニーナさん」

「じゃあ早速~・・・」
「「え?」」

大丈夫なの?ソレ・・って言う前にカチリと機械のスイッチが入って、眩い光が部屋中に溢れる。
それが消え去った先は緑に囲まれた空間・・・見慣れたシーダの森。
ティーポもリュウも元の大きさに戻ってて、あぁ帰って来れたんだって思って皆と顔を見合わせて安心したようにため息。
折角ウインディアまで連れてきてもらったのにお礼を言えないままだったなぁ。
それが少しだけ残念。


「頼むから、もう変な機械をこっちに持ってくんじゃねーぞ?」
「あー!別に変じゃないのよ、酷いわー!!
、何とか言ってよぉ~!」
「ごめん、今回ばかりはレイに同意・・かな?」
「だろ?」
「もーぉ!!も酷いーっ!!」

「俺・・今度は巻き込まれないように釣りにでも行って来るよ」
「あ、待ってティーポ。俺も一緒に行く!!」

釣竿とルアーを持ってさっさと2人は消えてしまった。
でもそれは懸命な判断だと思うけどね。
この後モモを宥めるのに結構な時間を費やして・・・あぁ、本当にこんな事は二度とないと良いんだけど・・・。



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