鳥篭の夢

If/03



「ただいまっ!兄ちゃん、ティーポ」

リュウが元気良く言えばレイはお客さんの相手を止めて私達へと視線を向けた。
本当だお客さんがいる・・って私達の目的の人だけど。

「お。リュウ、
狩りはどうだった?」
「全然ダメ。やっぱりここら辺は獲物いないみたいよ?」
「・・・みたいだな。やっぱ少し外したトコで探した方が早そうだ」
「そうだね」

「ん、あれ?貴女、さっきの・・・」
「ん?」

少女の驚いたような声。商品を吟味していた視線が私へと向いていた。
それと一緒に周りの仲間を私を見る。

「何だ、知り合いか?」
「んー、さっきちょっとね。
気になる事もあったけど・・」

ごにょ、と最後の方の声が小さくなる。
仲間の人を見ていけば、青い髪の青年に薄いピンクの私と同じ位の大きさの翼を持った少女。
虎人族の人・・に、全身鎧の人?それに野馳族の更に派生だと思う狐みたいな耳と尻尾の女性に、さっきの2人。
ニーナの姿は無いからやっぱり名前が同じだけの誰かがいるって事だよね。
それにしても王女と同じ名前付けるなんて珍しいかも。

「さっきこの人に助けてもらったんだよ。
大きな鳥みたいになって、モクジン達を一発で倒したの!」
「あのモクジンを・・・?」

ピクリと狐の女性が肩眉を跳ねさせた。
商品から顔を上げて私を凝視・・・つり目だから少し怖いかも。

「それに“リュウ”とか言ってたな。
コイツに用でもあるのか?」
「はぁ?」
「あの・・・リュウっておれの名前・・」

怪訝そうな表情を向けるレイとおずおずと名乗り出るリュウにお客さん達全員の目が丸くなる。
あ、全身鎧の人は分からないけど・・・。
それからリュウとそのリュウさん・・?
ややこしいけど、2人が顔を合わせて、途端にリュウが私の後ろに隠れてしまった。
代わりにティーポがリュウを隠すように前に出てくる。

「リュウ?どうしたの?」
「姉ちゃん、あの人・・おれと同じ竜族だと思う」
「え?」
「少し力の“質”が違うけど間違いないよ、姉ちゃん。オレも同じ感じがした」
「えーっと・・つまり、他にも力を持ったままの竜族がいるって事?」
「た、多分・・・」

私の問いにリュウが何度も頷いて、レイはがりがりと乱暴に頭を掻いた。

「・・・・愉快だねぇ。案外、竜族ってのはゴロゴロいるって事かい?」
「でもミリア様はオレとリュウだけって言ってたよ?兄ちゃん」
「うーん・・何だかこんがらがって来たなあ・・・」

「あ・・あのー・・・」

身内だけで話を進めてると、不意に飛翼族の少女が小さく手を上げる。
・・・と、うっかり放置しちゃってた。

「あ、すみません。何でしょうか?」
「あ・・あの、リュウくん?が竜って事は、この子も神様なんですか?」

「「「「神様!?」」」」

飛翼族の少女の言葉に、全員の声が重なった。
いや、でも普通そう返すよね?だってイキナリ神様って・・何?

「うふふー。ディース様が“この子達は違う世界から来た”んだと言ってますよ」
「それはつまり、この人達も神として召喚されたという事か?」
「どうやらそれは違うようです。
何かの事故に巻き込まれたみたいですねー」

事故・・・ってモモの機械の事、だよね?
いやそれにしても“違う世界”?それにディースって・・・

「もしかして、ディースさんがいるんですか?」
「ディース様は“知らない”そうですよ。
皆さんと自分はまた違う次元の存在だと言っています」
「えっと・・・」

何だかややこしい。
ディースさんは違うディースさんで、此処は私達の元々いた世界じゃない?何それ・・・。

「まぁ難しく考えても分からん事は分からんだろう。
それより、お前達が此処に来た理由は何だ?」
「・・・何だって言われても、俺達だって好きで来た訳じゃねぇんだけどな」
「どういう事だ?」
「そのまんまの意味だよ!
そこのヨロイが言ってたように、オレ達事故に巻き込まれたんだ」
「事故・・ですか」

飛翼族の少女が眉根を下げた。
おっとりした雰囲気の彼女は“大変だったんだぁ”みたいな瞳を私達に向けている。
こっちの世界だと黒い翼も種族の退化もみられないのかな?
誰も私の翼について言わないし、あの子の翼も私と同じ位大きいし。

「・・・そうだ、皆さんは“モモ”っていう人を知りませんか?
野馳族の女学者で、機械と実験が大好きで、ちょっとおっとりしてると言うかノンビリしてるというか・・そんな人なんですけど」
「モモ?って・・もしかして、あのモモさんかな?」
「んー、そうじゃないかな。
ノンビリしてて実験好きで学者で“モモ”なんて、あの人しか知らないし」
「知ってんのか!?」

ごにょごにょとリュウさんと野馳族の少女が言葉を交わして、それを聞きつけたレイが声を上げた。
私だって縋りたい気持ち。
少しでもモモに関する情報があるなら教えて欲しいって切実に思う。
それを感じ取ったのか虎人の人が腕を組んだ。

「ウインディアで、同じ名前の野馳族の女性と会った事がある」
「ウインディア!?」

こっちにもウインディアがあったの?っていう驚きと、どうしてそんな所にいるのかという疑問と、まぁ色んな感情がごちゃ混ぜ。
モモ・・・そんな所で一体何をしてるの?



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