鳥篭の夢

第一章/01



「時は満ちた・・・か」

光の柱が昇ってその中を潜ってアタシ達は寝所を出る。う~ん、ようやっと外に出れたー!!
・・・・って伸びをする前に、呟くフォウルの言葉にアタシとオンクーは跪いて頭を垂れるように頷いた。

『・・は、しかしながら神皇様。誰も迎えに上がらぬとは何やら様子がおかしゅうございます』
「ヒトどものする事だ。いちいち気にしても始まらん。それよりも・・・」

ふとフォウルが顔を上げて空へと視線を向けた。

「神皇様の半身様が漸く・・?」
「ああ。この気配だ・・未だ遠く、目覚めていないが間違いない・・・。
それより、もう忘れたか?私にその様な口の利き方、振る舞いをするな・・・と」
「御意」

それはつまり友達だから主従関係みたいな喋り方はしないでって事だよね?やっぱりフォウルは優しいなぁ。
でも、へらりと笑えば“間抜けな面だ”って言われた。む・・女の子に失礼なんだからっ!!

「オンクー、我が寝所を護れ」
『御意』
「フォウルは如何するの?」
「都へ行く・・予定通りだ」

なるほど、まぁそうだよね。じゃあ・・・

「アタシも一緒に──」
「お前は我が半身の元へ行け。まだ目覚めていない力、そのままにしておくのは少々不安が残る。
何れにせよ我等はあの場所に向かう事にはなるが・・・な」
「えー!でも、それじゃあフォウルが1人になるでしょ?・・・あ、そうだ!」
「?」

不思議そうな顔をするフォウルに一度笑んで、精神を集中させる。フォウルから貰った力を更に少しだけ分割させる。
フォウルが竜を召喚するように、アタシも自分の力を使う事で“分身”を1体だけ作り出せる。その分、力は弱くなるんだけどね。
でもフォウル1人だけを都に向かわせるのはアタシだって不安だもの。何も無いとは言い切れない。
ヒトは・・・醜い生き物だから。アタシが元々ヒトだから、それは良く分かるから。だから純粋なフォウルが心配なの。

全身が淡く光を帯びて、それが一箇所に集中して腕の中に納まる程の小さな獣の形を作る。
イタチのような姿だけど、耳はアタシと同じ兎みたいに長い。色合いは淡雪のようだけど先の方は淡蒼色の被毛。
くりくりとした金色の目がフォウルを覗き込んだ。・・・・うん、意識も繋がってるからこれで大丈夫だね、無事に成功!

「とりあえず、この子連れてって?少しは役に立てると思うし・・こっちなら死んでもアタシの力に戻るだけだしね。
あ、フォウルは確か知ってたよね?アタシの片割れ、一度だけなら色んな形状になれるから身代わりも出来るの」
「ああ」
「じゃあこの子お願いね?」

フォウルは大きくため息をつく。
でも無理やりぐいぐいって押しつけたら諦めたみたいに片割れを肩に乗せてくれた。やった!!
あ・・・ちょっと、オンクーまでため息つかないでくれる?だってオンクーだって心配でしょ?それだったら良いじゃん。
・・・と、それからフォウルは“都へ行く”って先に歩き出した。

「フォウル!」

名前を呼べば無言でちらりと目線だけをアタシに向けた。

「どうぞご無事で」
「ああ」

真剣な言葉には真剣に返してくれる。
見ればオンクーも既に石になって寝所を護ってて・・・さて、アタシも行かなくちゃね。

フォウルの半身。アタシにも流れているのと同じ力。僅かにしか分からない気配をずっと辿って・・・・ずっと東の方?
予想以上に遠いのかもしれないなぁ、如何しよう?アタシは別に何かに変身して飛ぶーとか、そんな芸当出来ないし。
でも、とにかく行かなくちゃ駄目だよね?一応“主の命”なんだし・・・・・・・さて!頑張りますかね??



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