鳥篭の夢

第一章/02



「・・・・・は・・・・はぁ・・・」

まるで熱の塊みたいな砂漠を抜けて、更に走り抜ける。流石に不眠不休はツラかったかな?
でも・・・今休んじゃダメ。休んだら疲弊してるから寝ちゃう。もし今眠ってしまったら・・・・・。

「・・・ど、して・・今まで気付かなかった・・だろう?・・・・はぁっ・・!!」

異変に気付いたのは本当に最近。
最初は気付かなくて、普通に休みながら移動してて・・・・気付いた時には遅かった。
違和感はあったの。力を使ってあの子を作り出した割には身体能力が衰えてなくて、全然余裕に動けたから。
でもそれならスグに半身様に追いつけるって思って・・バカみたいに喜んだ。
・・・・まさかあの子を作る為に使われたのが“記憶”だなんて思いもしなかった。

「・・・はっ・・・・もしかして、きょり・・なのかな?」

多分、分身との距離によって薄れていくんだと思った。都から逆走してるようなものだしなぁ・・・。 ──もう大分忘れてしまってる。
アタシが“何者”だったのかとか、今まで何があったのかとか・・・全部。
如何にか“都に行く事”と“フォウルの名前”はまだ覚えてるけど・・・それも次に眠ったら忘れる。それが怖い。

「はぁっ・・は・・・・・・でも、このダムを越えれば、きっと何とか・・・」

ずっと走り続ければ意外と何とかなるもんだと思う。
目指していた力もかなり近づいて、本当に後少しだって分かる。
これでフォウルの命も何とか全うする事が出来るのかなって少しだけホッと息を吐いた──のが、間違いだった。


───ォォォォ・・・


「・・・何?」

思わず立ち止まって音の方を見た。ヒトとは違った力・・・まさか、嘘でしょ?

「泥竜ノスト・・何でこんなトコに!?」

ちょっと待ってよ!?後少しでアタシの目的に辿り着くんだから・・!!
叫びかけてノストがアタシを見たから口を噤む。
でも何を言いたいのかなんて分かる筈が無い。竜の姿だし、言語が違うし、アタシの片割れみたいに繋がってる訳じゃないし。
そんなの無茶だって・・・ため息を吐いて、それから息を飲む。
ノストの動きが明らかにおかしい。そんな事したらダムが・・・。

「・・ちょっ・・・・待ってよノスト!アタシにだって目的が・・・・っ!!」


言葉も虚しく、アタシの身体はノストの起こした泥水の津波に飲み込まれた。
上下左右の感覚が無い。もしかしたらもう意識も無いのかもしれないけど、それも分かんない。流石にコレは困ったなぁ。
こんな事してる場合じゃないのに・・・こんな事に巻き込まれてる場合じゃ・・・アタシは連れて行かなきゃいけなんだから。

“誰”を?“誰”に?・・・・あ、誰にっていうのは分かる。あの御方の下へ。
“あの御方”・・・アタシが命を賭しても護るべき友人。名前は?名前は・・・・──あれ?

名前・・・もう分かんない。

何で?あんなに大切なヒトなのに。護りたいって・・絶対に護るって思ったのに如何して?
嫌だ!!忘れちゃうのは嫌・・・・!
覚えてる名前はアタシの“”っていう名前、それだけ。
違うの!アタシの事なんて如何だって良い!このままあの御方の事を忘れるのは、嫌・・・っ!!!
あの御方が記憶から無くなるのは・・・これ以上記憶が消えるのは・・・っっ!!


お願い・・・・・・!!



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