鳥篭の夢

終章/このせかいを



「うーん・・・こんなに歩いたっけなぁ・・・」
「また迷ったのか?」
「何だかずっと迷いっぱなしだよね」
「前はついて行っただけだから・・」

でもアムの沼も抜けたから・・・あ、前に迷ったのはその所為だっけ?まぁ気にしない。
うん。で、あの恐怖の蛇の沼も通り過ぎたんだから後もう少しだったと思うんだけどな。

「んー・・でも、ここら辺は一本道だったような気がするんだけど」

如何だったっけ?って首を捻ったら・・・あ、そんな目で見られても困るんだけどな。

「た・・・多分、こっちで合ってる筈!」

筈!だけど気にしない!!・・・・駄目かな?チラリ、見てみたら深いため息がひとつ。
えー。でもさ、分かんないんだから仕方ないと思わない?ノリと勢いって大切だと思うよ、アタシは。

「ヒトとは不便なものだ。すぐに疲れる・・」
「前が便利すぎたんだから、比べちゃ駄目だよ」

苦笑。あ、でもアタシも久しぶりだからか凄く疲れやすい感じがする。

「アタシも昔は砂漠を1日走ってても平気だったんだけどなぁ。
まぁ空腹感があるからご飯がもっと美味しく食べれるようにはなったけどさ」

“あはは”って笑う声。そんなに面白い事言ったかな?

「でもまさかアタシまでヒトに戻るとは思わなかった」

目の色も元通りで、胸にあった宝石みたいな石も無くなっちゃった。
ヒトの身体。ガーディアンだった頃よりずっと重たいし疲れるし・・でも、それも楽しいから不思議。

「ガーディアンとは元々神の力の一部。その神が消えた今、必要な力の源が無くなったのだ。
ならばお前が本来の存在であるヒトに戻ったとしても別におかしな事ではないだろう」
「そうかな?」

そう言うならそうなのかも。アタシ良く分かんないし。
難しい言葉並べられても混乱しちゃう。

「でもさ、力に頼らずにこうやって歩くのも良いと思うよ。
ゆっくり歩きながら景色を見たり、道に咲く花を見たり、ヒトと触れ合ったり・・君、あんまりそういうのした事ないだろ?」
「・・・・少し位なら、ある」
「でも本当に少しだよね」
「うるさい」
笑って言ったら怒られた。むー・・酷い!アタシ間違ってないんだから!
だって昔アタシと一緒だった時と、ソン村であたし達と長閑な時間を過ごしてた僅かな間でしょ?ほら!
まぁ確かに余計な一言だとは思わなくも無いけど・・・もぉ、そっちも笑わないでよっ!

「あははは・・・・・あ!見えた!」

声につられてそっちを見て・・・ホントだ!見覚えのある風車!!

「アレ、ウインディアのだよね?・・・良かったぁ!こっちで合ってたね!!」
「うん!行こう、皆きっとビックリするよ」

弾む声。やっぱり久しぶりに会うって思ったら何だか嬉しいよね。
えへへ・・・どんな反応するのかな?って考えたらドキドキしてきちゃった。って、あれ?

「如何したの?」
「・・・・驚く者はいても喜ぶ者はおるまい。神々と共に消えた筈の厄介者だろうからな」
「またその話?言ったじゃないか、それじゃ不公平だって。
僕は神の力を捨てただけで君の存在を捨てた訳じゃない。それに・・僕達は元々ひとつの存在だったんだろ?
なら片方だけ消えるのっておかしいじゃないか。2人共残る資格がある筈だよ」

聞きながら思う。アタシだったら如何したんだろう?あたしがもし生きていたら・・・。
最後は人格がハッキリしてた。アタシとは少し違う考え方と、行動と。だから同じように2つになる事を望んだかも。
別々で生きていくのもきっと楽しかった。2人みたいにね。

「だから両方ヒトとして残したと言うのか?」
「でもそのおかげでマミに会えるでしょ?ニーナもマミもきっと喜ぶよ。
それにアタシだって2人とも大好きだから消えないでいてくれて嬉しいし」
「全く・・・私に近い存在だったというのに、お前達の考えている事は分からん」

あはは。良いんじゃないかな?全部分かったら面白くないもん。
確かに分かるのは安心するけど・・・でも、それだけでしょ?分からなくても大丈夫!知っていけばいいんだから。
あ!ほらほら、あっちだって笑ってるよ?

「それが僕なりの答えだったんだよ。
君の声で目覚めて、皆と旅をして、君と会って・・やっと見つけた道」
「・・・・関わってきたヒトの質の違いでこうも変わるものか。改めてヒトとはおかしな存在だな」

それはやっぱり自分と向こうとの記憶を見たからなのかな?アタシには分かんないけど。
どこか面白そうに笑って、それから遠くへと視線を向けた。真剣な瞳。

「神のいないこの世界をヒトがどうするのか──また同じ過ちを繰り返す事になれば・・・」
「大丈夫だよ」

杞憂を晴らすみたいな声。でも、アタシだってそう思う。

「大丈夫、ヒトはちゃんと世界を動かしていける」
「如何してそう言い切れる?」
「この世界が好きだから。
たとえ過ちがあっても、それを乗り越えて正していけるって信じてるから」

何とかなる。大丈夫。アタシもそう信じられる。

「みんなのいる、この世界をね!」

嬉しそうなリュウの顔。フォウルも遠く世界を見つめて・・・・。
ね、信じてみようって思ったんでしょ?だったら大丈夫。心配しなくたって良いんだよ。

「行こう!フォウル、・・・きっと皆が待ってるから!」

皆の笑顔に会えるまで、きっと後少しだから。



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