鳥篭の夢

きおくのかけら/おまけ



ぼーっと日向ぼっこ。ぽかぽかのお日様と風が気持ちいい。
身体を動かすのも大好きだけど、たまには日向ぼっこも良いかも・・・・ん?

「あれ?フォウル、どうしたの?」

気配にそっちを向けば、相変わらず表情の変わらないフォウルがそこにいた。
あ、でも分かるよ?すっごい疑惑の念が篭もってる。え、何で??
アタシ、何か変な事したかな?考えていれば隣に並ぶ。ちょっと珍しいかも。

「忘れた、などという言葉で私を騙せると思ったか?」

静かな言葉。ヒトコトだけ。
何が?って返そうと思って、でもその言葉の意味が分かったから止めた。
多分アタシの記憶の事だよね?それって。

「えー、別に騙したつもりなんてないよ」
「しかしあるのだろう?記憶は」

えぇっと、そんな間髪入れずに返されるとちょっと言葉に詰まる。
アタシ、フォウルみたいにぽんぽん言葉出てこないんだから待って欲しいな。

「・・・あるよ。記憶って程ちゃんとしたものじゃないけどね。
ぼんやりしてるっていうか、形がちゃんとしてないっていうか、みたいな感じのだけど。
でもそんなに分かるものなのかな?
記憶があってもアタシはアタシだって思ってるけど、そんなに違っちゃう?」

ちょっとだけ、ホントにちょっとだけなんだけど不安になる。
ニーナが知ったらきっとションボリしちゃうだろうから。それは嫌だから。
考えてたらフォウルが大きくため息。って、えぇ!?何で!!?

「お前との付き合いがどれだけ長いと思っている。
たとえそれが僅かであろうと思うところは出てくるものだ」
「そっか・・・」

そうだよね。フォウルとの付き合いは何百年だもんね。そっかぁ・・・。

「じゃあ、他の皆には分からないかな?」
「お前が気にしているのはニーナという娘の事だろう?」
「うん。だって大切な友達だから、心配させたくない」
「・・・自ら言い出さねば気付く事はあるまい」
「ほんと?」

じぃっとフォウルを見れば、同じようにフォウルは視線を外さない。
それが暫く続いて、だから本当なんだって分かる。

「私がに虚偽を伝える事に、意味などあるまい」

その言葉が嬉しいって思う。えへへ、やっぱフォウルは優しいな。

「あのね、アタシは大丈夫なんだよ。フォウル」

分かっている、と。フォウルが言葉にしなくたってそれが伝わってくる。
何だかガーディアンと主の時とあんまり変わんないね。
なんて考えたらおかしくなって思わず笑えば、フォウルの怪訝な顔。

「全く。これだからお前という存在は理解に苦しむ」
「む。フォウル酷いっ!!」

これだって日常。大丈夫、やっぱりアタシはアタシなんだってそう思える。
きっとこれから毎日は楽しくなるから。大丈夫、大丈夫なの!
もう怖い気持ちは少しだけだから。それに怖かった記憶も抱いていくって決めたんだし!

「でも、ありがと!心配してくれたの嬉しかった」

えへへ。フォウルが気に掛けてくれるなんて珍しいから。
あ、でも全然放置じゃないってのは知ってるんだよ!
だって傍に置いててくれるって事はつまりそういう事だし。
だけど今みたいに態度に出るっていうのは珍しい。だから余計に嬉しくて・・・。

「やっぱりフォウル大好き!」

言って抱きつこうとすれば、やっぱり避けられた。
む。そこはちゃんとアタシを受け止めるトコだよ?不満全開だろう顔を向ければ溜息がひとつ。
変わらないそれが残念な反面、何だかとても安心できて。何だかほわっと温かい感情。

大丈夫。

きっと、これからこんなほんわりとしたキモチでいっぱいになるから。
フォウルがいて、サイアスがいて、皆もいてくれて。だからアタシは大丈夫なの。



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