鳥篭の夢

幼年期/拾われた子供04



「あのじいさん、何処に隠してんだ?」
「うー・・此処にもないや」

ゴソゴソと室内を物色する音。ソレとは別に私は机の下に散らばった物を片付ける。擦れる様な金属音がした。
さっきリュウが慌ててお皿を割っちゃったんだけど・・これは怒られるんだろうなぁ、やっぱり。
ううん。その前に空き巣に入った事に凄く怒られそう。理由は如何あれ、私もリュウも・・・・はぁ。

、さっきから何してんだ?」
「お皿の片付け。このままにしてたら危ないでしょ?」
「え~・・そんなのより食い物探そうよー」

何故、私はこんな不満を言われてるんだろう・・・。って言うよりもなんでうっかり家に入っちゃったんだろう。
コツコツ音がして、梯子で下へ降りていくリュウの姿を視界の端に捉える。
出会ってからまだそんなに時間経って無いけど、確実にレイ達の影響だろうなぁって実感。
大人しい子だから大丈夫かと思ったけど、やっぱり男の子はお兄ちゃんに憧れるんだろうか・・・?

さて、お皿の破片はこれで全部かな?


───ガツ、ガッ、、

「・・・わっ!もしかして帰ってきた!?」

遠くから響く重量感のある足音。見れば既にレイ達の姿が無い・・・って、置いてけぼりなの!?
ちょっと悪い冗談は本気で止めてよ!!?どどどどどどうしよう?如何したら良いのかな?えっとえっと・・・。

───ガチャ・・・ガチャリ

鍵が開いてる事に戸惑う音。それからゆっくりと扉が開いて、家主が姿を現す。
あぁ、万事休す!!なんて思いながらもババデルの少し驚いた顔が目に飛び込んでくる。そりゃ気持ちは分かりますよ。
ほら、だって家に帰ってきたら悪ガキ達のお姉ちゃん格がいるんだし?まぁ一応私は無害で通ってたけど・・・。
如何しようか考えてたら、深く深くため息が落ちたのが聞こえた。

「・・・・・あのバカ共か?」
「え?」
「お前さんが危険を冒してまで、空き巣に入るとは思えんしな。だが・・・」

ジロリ、睨みつけられる。怖くて羽の一本一本が震えるみたい。逃げなきゃ・・でも逃げれない!
とにかく半分無意識みたいな感じでじりじり後退った。

「とりあえずは・・・・て、もらうぞ」
「へ?・・・ぁ、きゃっ!!?」

逃げるのに必死で何を言ったか聞き取れない。聞き返そうと思ったら、まるでスローモーションみたいな動作の後・・・───

衝撃。

・・・・・・・・だから悪い事は駄目だと思うの。痛い思いだってしたくないしさぁ。
目が覚めたら縛られてて、3人も捕まって同じように縛られてる。皆がいてちょっとだけ安心・・・・・しちゃ駄目だよね。
それにしても、お説教と共にバキバキ拳を鳴らすのは止めて欲しいかも。言ってる事は分かるけど・・・少しだけ怖い。


「働かないものは食うなって教わらなかったか?」
「うるせぃ!ちゃんと仕事してら!!」
「バカ共が・・追い剥ぎやコソドロが仕事のうちに入るか。本当ならこの森から叩きだす所だが・・・・

お前らが・・・心を入れ替えるというなら、仕事をやらん事も無い」

ぇ?

「・・・・・・何させる気だよ」

ゆっくりと紡がれた言葉に私は唖然とする。“仕事”をする?レイやティーポが?
私は料理とかお手伝いするけど、皆はあんまり得意じゃないし・・力仕事はババデル自身が出来る。
それなのに“仕事”っていうのは、つまりどういう意味なんだろう?

「レイ。お前、腕に自信があるんだったな?仕事をやろう」

するりとレイを縛り付けていた縄が解かれた。

「グラウス山、知ってるな?」
「ん?あ、あぁ・・・」
「とにかく行けば分かる。お前はそこに行け、良いな?」
「・・・俺だけか?チビ共とはどうすんだ?」

チラリと私達に心配そうな瞳を向ける。確かにレイだけが山に行くなら私達はどうするのかな?
その考えと僅かな不安を見抜いたみたいに、ババデルは何度も首を横に振った。

「心配するな・・・こいつ等には別の仕事をさせる」
「俺が逃げないように人質のつもりか?」

まるで威嚇するように問うレイに、やっぱり首を横に振った。威嚇すら物ともしない姿。
それから何だかんだ押し問答をしてから漸く山に行く事を了承して、レイは私を見る。

、チビ共を頼んだぞ」
「うん、分かった」

了承すれば、レイは早速山へ行く。・・・・でも、山ってあんまり良い噂聞かなかったような・・?
誰かが話してたのを耳に入れた程度だからちゃんと覚えて無いんだけど・・・なんだっけ?

、お前はメシを作れ」
「あ、うん。家にある材料で作れば良いんだよね?」
「あぁ」

縄を解いてもらって、私は家へ入った。たまに“仕事”だと称して料理をする事があるから調味料の勝手も分かる。
・・・・と、そうだ。ティーポ達の仕事ってキツイのかな?あんまり重労働だと2人ともツライよね。

「あ、ババデル!2人にはあんまりキツイ仕事させないでね?まだ子供だし・・」

ババデルはそれに無言で返す。・・・・・一応、肯定の意味でとって良いのかな?
うーん・・・・でもまぁ、とりあえず与えられた仕事だし、ちゃちゃっと作っちゃいますか!
早く終われば何してるのか見れるし、レイにも2人の事を頼まれたしね。



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