幼年期/躍る英雄達01
「ただいまっ!!」
「おかえり、ティーポ」
嬉しそうに林檎を腕一杯に抱えてティーポが扉を蹴り開ける。お行儀悪いよ、ティーポ。
でもそんな顔をしていると、そこまで文句は言えなくなっちゃうんだけどね。
「へへ~。西の森にも行って来たけど・・・動物も木の実も、ほらっ!!」
真っ赤な林檎が机の上に転がる。リュウが“うわぁ”って嬉しそうな声を上げたのがわかった。
林檎大好きだもんね、リュウは。
「これで食い物には困らないね、兄ちゃん!ヌエ、やっつけて良かったね」
「・・・・そうだな」
少しだけ曖昧な表情。やっぱり心のスミッコに引っ掛かってるのはある。だけど・・・うん。
こうやってティーポ達が笑ってくれるなら、今は良いかな。
「ねぇねぇ、全部オレ達のおかげだぞって村の連中に言いふらしに行こうよ!」
「ん~~~・・・。そう言うのは、言い触らさない方がカッコイイんだぜ?」
「そ・・・・・そうなの?」
「私も言い触らさない方がカッコイイと思うな」
「・・・言いに行っちゃ駄目かな?」
途端に不安そうな顔。でも村に行って見た限りでは既にババデルが鵺の事を言ってくれてたみたいだった。
買う物があって行った時、私も何度か訊かれたから“レイに聞いてください”って言っちゃったけど・・・。
私に接する言葉とか態度とかが今までよりもずっと優しくなってたと思う。
「・・・まぁ、どの位評判になってるのか見に行くのは良いかな?」
「ホントっ!!?」
それはつまり、レイも少なからず気にしているって事で・・・。それが何だかおかしくて笑みが漏れた。
「姉ちゃんも行こうよ!」
「ん?んーん、私は家でお留守番してるよ。3人で行ってらっしゃい」
「・・そう?じゃあ行ってきますー!!」
よほど気になるのか、ティーポは一足先に家を出てしまった。思わずレイは肩を竦めて、私もくすくす笑う。
それからずーっと林檎を気にしているリュウにソレを1つプレゼントする。
「わ・・持っていっても良いの?」
「良いよ、オヤツに1個どうぞ」
「やったぁ!ありがとう、姉ちゃん」
満面の笑み。レイが“また甘やかして”って呆れた視線だけを送ってくる。でも喜んでくれたら嬉しいでしょ?
ついつい下の子を甘やかしちゃうのがお姉ちゃんな訳だと思うんだけど・・これは気のせいかな?
・・・・・・・・で。
帰ってきてから3人の様子がおかしい訳ですが。一体何があったのかな?問い詰めても何も言ってくれない。
仕方ないから一番話してくれそうなリュウにも訊いてみたけどそれでも駄目だった。
思ったよりも口が堅いんだね、リュウ。・・・って、それは別に如何でも良いんだけど・・・・・。
「私に隠し事が出来ると思ったら大間違いですよ?皆さん!!」
ビシィッ!と指を突きつけた私に皆の動きが一度止まる。
「ど、どうしたのさ姉ちゃん」
「俺達別に、何も隠してなんか無いさ。なぁ?」
一生懸命リュウが頷く。どうして3人が結束してる時は隠し事をしてるって気付かないのかな?
・・・・後、動揺したレイの尻尾。見てる分には確かに可愛いんだけど・・・いや、口に出したら怒られるけどね。
今はそんな事で喧嘩してる場合じゃなくって・・・・・仕方ない、最終手段。
「えいっ!」
「わ!姉ちゃん!?」
とりあえずリュウを捕獲。
「話してくれないと、リュウを解放しないよ?」
「リュウ~っ!!そんな簡単に捕まるなよ」
「ご・・ごめん、ティーポ」
さて、これから一体何を隠しているのか話してもらいましょうか!!って視線だけレイに向ける。
諦めたようにレイは頭を一度掻いて、チラリと外を見る。・・・・・・・ん?何だろう?
「・・・・よし、も一緒に行くか」
「へ?」
「そっか!そうすれば早かったんじゃん!!兄ちゃんすげぇー!」
ティーポが輝かしいまでの尊敬の眼差しを向ける。・・・・あれ?また私、何かに巻き込まれるの?
腕の中にいるリュウに視線を落とすと、ニッコリと笑いかけられて思わず笑い返した。可愛いなぁ・・・じゃなくて!
・・・・・・・・あれ?それで結局今は何が起こってるの?