鳥篭の夢

幼年期/踊る英雄達04



「とりあえずは何とかなったな」
「うん。2人も屋敷の中には入れたみたいね」

屋根の上からチラリと覗けば、気付かれなかったのか騒がしいのは屋敷の外だけのように見える。
まぁアレだけ走り回ってから来たんだから、そう簡単に気付かれたりしたら困るんだけど。

「・・・・・で、レイ。カギ縄はまだ見つからないの?」
「・・・・・・・まぁ、な」

レイに視線を向ければ、逆に逸らされて頭を掻いた。何を間違ったのか、登ってる途中でカギ縄を落っことしたらしい。
・・・・うーん。そんな顔してるって事は、やっぱり珍しいミスなんだろうけど。
さっきからずっと探してるんだけど何でか見つからない。・・・・・本当に、何処にやっちゃったんだろう?

翼を広げてザッと見渡したって灯りが無いから何も見えない。
やっぱり私も鳥なんだよね。夜目が利かないから困る。
そのまま屋根の上に降り立つと、足元でぬるりって感触が・・・・

「ひぁっ!」
「───っと、危ね!?」

あああ危なかったぁ!!今、何かで足を滑らせてレイに助けてもらったんだけど・・・流石にちょっと怖かったぁ。
抱き締められてるような状態だから、顔を上げると半ば呆れたようなレイの表情が目に入る。

「何やってんだ?
「ご・・ごめんなさい、ありがとう」
「いや。それより足元気をつけろ」
「うん・・・・ん?」

離れようとして動きが止まる。助けてくれたのは良いんだけど・・・あの、固定されると動けないよ?レイ。
思い切り力を込めて離れようとすると、逆に今度は抱きすくめられた。
だからね?身動き取れなくて困るんだけど。

「・・・レイ?」
「相変わらず細っせーなぁ、は」
「な、何?急に・・・」

飛翼族は種族的にあまり力が強い方じゃない。飛ぶ為に軽くなきゃいけなかったから骨格から違うし筋肉もつきにくい。
そりゃあ虎人は戦闘種族だから私とは真逆だし、体格だって全然違う。
でもそんな風にまじまじ見られるとちょっと恥ずかしい。
力を入れてもビクともしない身体。1つ1つのパーツを見れば、大きさが自分とはまるで違って何だか不思議に思える。

「楽しいか?」
「うん。やっぱり私とは全然サイズ違うよねー」
「そりゃあな」

言って、レイは楽しそうに笑う。お互い手の平を合わせるとその差が良く分かる。昔は背だって同じ位だったのになぁ・・・。
・・・・って、違う!こんな事をしてる場合じゃなくて!!!

「カギ縄探さなくちゃ!」
「ん?あぁ、そうだな」

頷くのに、抱きすくめる腕を退ける気配は無い。春の夜風とレイの体温が気持ち良いなぁ・・なんてちょっとだけ。
確かにリュウとティーポが来るまでに時間はありそうだけど・・・こういう事をしている場合じゃないと思うんだけどな?

「ねぇ、レイ?」
「あ?」
「いい加減、カギ縄探さない?」

ニンマリと笑う顔。多分、私は今不機嫌そうな表情をしてるんだと思う。だからそれを楽しんでる顔。

「良いんじゃねーの?たまには、こんなのもさ」

言いたい事は分かる。最近2人でゆっくりする事なんてあんまり無かったもんね?私もそれは嬉しいけど・・・。
やっぱりリュウとティーポが心配だっていうのもある。子供2人だけで、もしも見つかって捕らえられてたら?
それを言えば、漸くレイは腕を解いてくれた。

「帰ったら家の屋根でゆっくりしよう?・・・勿論、2人きりでね」
「だな」

ふわり柔らかい笑み。滅多に見せてくれないレイのその表情が好きで私も自然と柔らかく微笑み返す。

「私、2人を探してくるね」
「あぁ。頼んだ」
「ん。りょーかい!」

だからその間にレイはカギ縄探ししててね?って言ったら苦笑で返される。頑張ってよね、兄ちゃん?
歩き出す私の後ろから声が飛んでくる。



「ん?」
「気をつけて行って来い」
「うん、ありがとう!」

さて、リュウとティーポは大丈夫かな?なんて思いながら走り出す。怖い思いをして無いと良いけど・・・。
まずは屋根の上を駆け回って降りれそうな場所を探す。どこか降りれそうな場所は・・・っと。

「この下ってテラス・・・?何か聞こえる」

何がいるかはやっぱり良く見えない。でも、何だか聞き覚えのある声がするような・・・・・もしかしてティーポ?
耳を澄ませるけど遠すぎてごにょごにょとしか聞き取れない。でも多分間違って無いと思うんだよね。
うーん・・どうしようか。一か八か行ってみる?

「しか・・無いよね。間違ってたら万事休すだけど・・・」

降りた先がマクニールじゃない事を祈って・・・・・行ってみましょうかっ!!



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