幼年期/過ぎた悪戯の結末02
「・・・・ぅ?」
全身が酷く痛い。入ってきた陽の光が眩しくて、手で覆おうとしたら包帯が巻いてあるのが目に入った。・・何?コレ。
そう思ってから一気に意識が現実に引き戻されて思い出す。
ホースマンの兄弟の事、燃やされた家の事。
「あっ!皆・・は・・・・・!?」
飛び起きてから隣に気配を感じて見れば、ぐったりと深く眠りについたリュウの姿。私と同じボロボロの姿。
それでも無事だったんだって、生きてたんだって、そう思ったら一気に安心した。本当に良かった・・・。
寝苦しそうに苦しそうに時折もがく様な姿に、そっと手を翳して集中させる。
「アプリフ」
柔らかな光がリュウを包み込んで、呼吸が常と同じものに戻ったのを確認する。良かった、これできっともう平気。
レイとティーポは何処なんだろう?それに、今いる場所は・・・・此処は、ババデルの家?じわじわと小さな不安。
自分にもアプリフをかけて痛みを軽減させてから、リュウを起こさないようにそっとベッドから抜け出す。
家の扉を開ければ何時もと変わらず薪を割るババデルの姿があった。
「あの・・・ババデル。もしかして助けてくれたの?」
「・・・・ああ」
「・・えと、ありがとうございました。それで・・その・・・・」
言葉が何故か出てこない。“レイとティーポは?”そう訊けば良いだけの言葉がどうしてかノドに引っ掛かる。
と、ババデルが薪割りを止めて、その斧を地面に置いた。ジッと私を見る。
「見つけたのは、森の中で傷だらけだったアイツだけだ。レイとティーポは・・分からん」
「・・・・・そ。ですか・・・」
ノドがカラカラになるみたいだった。
遅かった。伝える事が出来なかった。それが酷くショックだった。
いや、それは本当はずっと理解していたんだけど・・現実を突きつけられた感覚。それが苦しい。
「何時か痛い目に遭うだろうとは言ったが・・・まさか此処までとは・・・・・・。
恐らく、レイとティーポはもう・・」
「ううん。生きてるよ、きっと」
強く拳を握って言葉を遮る。2人が“死んだかもしれない”なんて言葉は聞きたくなかった。
それにババデルが酷く驚いた顔をして私を見たのが分かる。
「私が生きてる。リュウだって生きてる・・・。
だったら、きっとレイもティーポも生きてる」
まるで息を呑むような表情。確かにババデルにはそんな事を言う私が信じられないのかもしれない。
でもレイはワータイガーになれる位なんだからきっと簡単には死んだりしないし、ティーポだって強いもの。
それに・・・誰か1人でも信じなきゃ駄目なんだと思う。
死んだと決め付けたらそれで全てが終わってしまう・・何だか、そんな気がした。
2人の死体を突きつけられない限り、私は2人が絶対に生きてると信じられる。
それは強がりとかそう言うんじゃなくて・・・何て言えば良いのかわからないけど、直感?みたいなもの。
「ねぇ、ババデル。リュウの事を頼んでも良い?」
「・・・・まさか、・・・」
「うん。私は2人を探しに行く。・・・絶対に見つけてみせる」
「・・・・・そう、か」
「でも、リュウはまだ小さいから。私じゃずっと守っていられるか不安だから・・お願い」
ババデルは何も言わなかった。それでも微かに頷いてくれたような・・・・そんな気がして。
だから私は“ありがとう”って言って、そうしてシーダの森を後にした。
これからレイとティーポを探す。何があったって絶対に見つけてみせる。何年かけたって・・・・絶対に。
バリオとサント・・・だっけ?あのホースマンの兄弟の名前。彼らを探したら何か分かるかな?
少しでも、何でも良いから手懸かりを見つけなきゃ。皆を見つけてまた4人でシーダの森で暮らすの。
後は・・・そうだなぁ、少しは鍛えなくちゃね。皆を見つけるまでは・・・私1人なんだから。