鳥篭の夢

幼年期/東への経路01



さて、この状況をどうすれば打破出来るんだろうか?なんて内心悩む。
まさかメーカースで待ち伏せられてるとは思わなかった。
それにガーランドさんが助けに来て、バリオとサントが合体するとも・・・ホースマンが合体するなんて初めて聞いた。

「あらー・・凄いのねぇ、ホースマンって」
「うん。私もちょっとビックリしたかも・・・」

なんて暢気な会話をしている暇は無いんだけど・・・戦闘準備だけはしつつ様子を窺う。一応サポートした方が良いよね。
ギガートとハサート、パリア、ミカテクト。とにかく片っ端からアシストをかけて、怪我をしたら回復する。
それが出来たからかリュウはドラゴンに変身して攻撃に回っていた。ガーランドさんも勿論一緒。
・・・初めて見るドラゴンの姿。
何時もの泣き虫なリュウとは全然違う、圧倒するような姿。
それに馬・・スタリオンって名乗ってたっけ・・も怯えた姿を見せていた。
モモも合間を縫って攻撃とサポートをして、ニーナは攻撃魔法を使って出来る限り攻撃をする。

「っはぁ!!」
『あ゙あ゙ぁぁぁぁぁあぁあっ!!!?』

ガーランドさんの槍が深々と額に突き刺さる。
劈くような断末魔の悲鳴を上げた後、スタリオンはその場に倒れこんだ。
それは誰が見ても事切れてしまっただろう姿。
ゆっくりと槍を抜き取ると付着した血液を振って払う。


「あ・・あの、ありがとうございました。ガーランドさん」
「構わん。ヤツとはその内別れる気だった。それより・・・」

ゆっくりと、視線が私からリュウへと移動する。

「王女をウインディアへ送ったら、俺と共に天使の塔へ向かおう。リュウ」
「あ!ま、待って下さい!!
リュウは人を探してるんです。レイとティーポっていう・・」

竜族の事しか考えていないだろうガーランドさんに対して、ニーナが慌てて言葉を挟む。それでもゆっくりと首を振った。


「俺には、そいつらが生きているとは思えんが・・・」


無情な言葉。頭にぐわんって響くような音。
リュウは顔を歪めて一気に大声で泣き出して、私はただ抱き締める。
私も出来る事なら泣きたいし、叩いてやりたい。
でも・・・それは姉として正しい行動じゃないって知ってるから、しない。

「そんな・・ガーランドさんっ!!そんな言い方って酷いっ!!」
「あいつ等を見ただろう?平気で殺すような連中だ。
リュウが助かったのは竜族の血を引いているから・・・違うか?」

抗議の声を上げるニーナを諭す言葉。それでも私はゆっくりと首を横に振った。

「私は・・そうは思いません」

「・・・ん?」
「私もあいつ等に殺されかけました。向こうも多分、私の事を殺したと思ってた筈ですよ。
でも私は生きています。竜族ではないただの飛翼族ですけど・・生きてます。それなら、2人だって生きてますよ」
「む・・・そう思うか?」
「はい。多分、あの2人はツメが甘いんじゃないかなって思うんですよ、私」

ニッコリと笑顔を作れば、申し訳なさそうにも如何したものかと悩むようにも見える表情を浮かべた。
それにリュウが涙を拭いてガーランドさんを見る。

「ぼく、ガーランドと天使の塔に行くよ。
でも兄ちゃん達を探すのだって諦めない・・・」
「ふむ・・分かった。とにかく、まずはウインディアへ向かおう。橋の通行証も貰わねばならん」

それにリュウはしっかりと頷いた。

「あー、でもは行かない方が良いわねー」
「うん。ペコロスと一緒に留守番してようかな?」
「ぷぃ?」
「え?姉ちゃん行かないの?」

急に不安そうなリュウの顔。それに思わず笑みが漏れて、思い切り頭を撫でる。

「そんな顔しないの、リュウ。やっぱり黒い翼は印象悪いから仕方ないのよ。
通行証を貰うんだったら尚更イメージは良くないとね」
「でも・・・」
「リュウが“不吉”じゃないって思ってくれれば私はそれで良いんだよ」

わしゃわしゃって思いっきり髪をかき混ぜてくすくす笑う。慌てて髪を直しながらリュウが私を見た。

「分かった。姉ちゃん、気をつけてね」
「リュウも言葉に気をつけてね。敬語は苦手でしょう?」
「う・・・うん」

何度も頷く。今まで使う機会も無かったから得意じゃないのは事実。
まぁ、モモには出来るだけ使ってるみたいだけど・・・。
そのままウインディアの近くまで来て、私とペコロスは城下町から少し離れた森で待機する事にした。

さん!ありがとうございました!!」
「こちらこそ、リュウと一緒にいてくれてありがとう」

深々とお辞儀。それは一体何に対しての礼なのかと思うし、私こそ礼を言うべきだと思う。
ただ、折角会えたのにもう離れてしまうのは淋しいと思ってしまうのだけど・・・。

後ろ姿も見えなくなってから森の中で座り込みペコロスの様子を見る。
害の無い瞳。暫くはボンヤリしていたがやがてうとうとし始める。
そのまま観察していると、ついには“ぐぅ”と寝息を立て始めた。

「なんだか落ち着くね・・君の隣は」

返事は無い。だけど、それが心地良かった。



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